メンテナンス患者が突然来なくなる
スポーツジムの会員になった人のうち、
1年後も定期的に通っているのは
全体の4%以下だという調査があります。
入会時のあの熱意は、どこへ消えてしまうのでしょうか?
「健康のために通う」という動機は、実は驚くほど脆い…
痛くもなく、支障もなく、日常生活に困っていない状態で、
わざわざ時間とお金を使って通い続けることは、
人間の習慣としてかなり難易度が高い行動なのです。
これは、歯科医院のメンテナンス患者にも
そのままあてはまります。
先生の歯科医院では、
メンテナンスへ移行した患者が、
3回目、4回目あたりからぱたりと来なくなる、
という事象が頻発してはいませんか?
リコールハガキを送り、事前に電話もした…
担当の歯科衛生士が丁寧にカウンセリングもした…
それでも脱落する患者は、後を絶たない…
「もっと仕組みを強化すれば改善できる」
そう考えて、さらに手間をかける。
でも、状況はなかなか変わらない。
この記事では、なぜ仕組みを整えても
脱落が止まらないのか?
その本質的な原因と、
今日から実践できる対策をお伝えします。
私はこれまで200以上の歯科医院の経営改善に携わり、
メンテナンス継続率の改善も実現してきました。
その経験から断言できることがあります。
「移行」より「継続」の方が、はるかに難しい。
そして、多くの歯科医院が
解決策を間違えた場所で探し続けています。
なぜ脱落が止まらないのか
メンテナンス患者のリコール管理に、
先生の歯科医院はどれだけの手間をかけていますか?
多くの歯科医院が実践しているのは、
次のような取り組みです。
・次回アポイントをその場で確定させる
・来院前日に電話やSMSでリマインドする
・ハガキに担当衛生士のパーソナルなひとことを添える
これだけやっても、脱落する患者は減らない。
先生もそう感じているのではないでしょうか。
いったいなぜでしょうか?
答えは、これらの仕組みはすべて
「外側からの働きかけ」だからです。
患者の内側、つまり
「自分からまた行きたい」
という気持ちには、一切触れていないのです。
リマインドの電話をすれば来院する患者は、
電話がなければ来ない患者です。
手書きのハガキに心を動かされる患者は、
感動が薄れれば来なくなる患者です。
つまりこれらの施策は、
「来たいと思っていない患者を、
どうにかして引っ張ってくる」
ための手段に過ぎません。
効果がないとは言いません。
短期的には来院につながることもあります。
しかし、それは本質的な解決ではない。
患者の内側に「通いたい理由」が育っていなければ、
どれだけ外から働きかけても、
脱落のタイミングが少し後ろにずれるだけです。
では、その「通いたい理由」は
どうすれば育つのでしょうか?
そのヒントが、次にお伝えする
「メンテナンスレベル」という考え方にあります。
「メンテナンスレベル」で見直す
ここで少し、視点を変えてみてください。
メンテナンスに移行した患者を、
「レベル1〜10」というスケールで見てみます。
レベル10の患者とは、こういう状態です。
- メンテナンスの歯科医学的な意義を、自分なりに理解している
- 「自分にとって価値がある」と心から感じている
- 通院そのものが、苦ではなく楽しみになっている
- 担当の歯科衛生士やドクターへの信頼と好感がある
- そして、これらを「特別なこと」とは思っていない
このレベルに達した患者は、
リマインドなど不要です。
定刻通りに、機嫌よく来院します。
では、メンテナンスに移行したばかりの患者のレベルは?
正直に言えば、レベル1以下です。
痛くない。困っていない。
友人もメンテナンスなど通っていない。
スタッフとはまだ他人同然。
「なぜわざわざ通うのか」が、
自分の中でまだ腑に落ちていない。
この状態の患者に対して、
「メンテナンスの重要性を理解したから移行してくれた」
と考えるのは、根本的な誤解です。
移行の理由は多くの場合、
「先生や衛生士に勧められたから」
「なんとなく断れなかった」
それくらいの動機に過ぎません。
だからこそ、レベルを上げることが最優先です。
レベルは、来院回数を重ねて、患者の内側に形作られる
「通いたい理由」を育てることでしか上がりません。
つまり、まず来てもらわなければ何も始まらないのです。
リマインドや仕組みに頼り続けるのではなく、
「どうすれば患者の内側のレベルを上げられるか」
という問いに切り替える。
これが、メンテナンス継続率を根本から変える
発想の転換です。
メンテ初期にすべき優先事項
レベル1以下の患者に、
メンテナンスの意義を説いても届きません。
必要なのは、
「また来たい」と思わせる理由を作ることです。
ではその理由をどうやって作るか?
その理由は、以下の2つの側面から考えましょう。
① ちょっとした「お得感」を用意する
メンテ初期の患者には、
歯科医学的な価値はまだ伝わりません。
だからこそ、来院そのものに
小さな報酬を設けることが有効です。
スタンプカード、サンプルのプレゼント、
関連商品のモニター価格での提供など、
「来て良かった」と感じられる
小さなきっかけを用意するのです。
これを「安っぽい」と感じる必要はありません。
習慣が定着するまでの「橋渡し」として、
合理的な手段です。
② 人間関係を、最強のフックにする
お得感よりも、さらに強力なのが人間関係です。
「あの衛生士さんに会いに行く」
「行くと必ず声をかけてもらえる」
そういう感覚が生まれた患者は、
リマインドがなくても来院します。
担当の歯科衛生士だけでなく、
受付、アシスタント、そしてドクターも含めた
歯科医院全員で、メンテ患者に関わることが重要です。
来院したメンテ患者に、
院内にいるスタッフ全員が声をかけに行く。
大袈裟に聞こえるかもしれませんが、
これは決して過剰なことではありません。
メンテナンスの継続率を上げたいなら、
初期の数回で「この歯科医院が好き」という感情を
植えつけることが最優先です。
知識でも、データでも、資料でもなく、
感情が人を動かす。
メンテ初期は、その感情づくりに
全力を注ぐフェーズだと理解してください。
移行より継続
この記事でお伝えしたことを、
3点に整理します。
・リコールの仕組みは「外側からの働きかけ」に過ぎず、
患者の内側にある「通いたい理由」には届かない
・メンテナンスに移行したばかりの患者のレベルは、
ほぼレベル1以下だと認識する
・初期の数回で「この歯科医院が好き」
という感情を育てることが、
継続率を上げる唯一の本質的な手段である
メンテナンスは、移行よりも
継続の方がはるかに難しい
この認識を持つだけでも、
打つべき手が変わってきます。
今日からできる、一番最初の一歩を提案します。
次にメンテ患者が来院したとき、
院内にいる全員で声をかけに行ってください。
たったそれだけです。
仕組みを変える前に、
まず「この歯科医院は居心地がいい」と
患者に感じてもらうことから始める。
先生の歯科医院のメンテ患者は、
今どのレベルにいるでしょうか。
そこから考えてみてください。








