忙しいのに報われない
世の中には、ある人には簡単そうに見えるのに、
別の人にはとても重たい仕事があります。
数字を見て改善点を探すことが
面白い人もいれば、
それだけで強い疲労を感じる人もいます。
逆に、人の気持ちを受け止め、
関係を整えることが自然にできる人もいれば、
最も消耗する仕事だと感じる人もいます。
ここで重要なのは、
優秀かどうかではない
という点です。
あなたが努力して身につけたことでも、
主戦場にするべきではない仕事がある。
一方で、あなたにとっては苦にならないのに、
他者には真似しにくい仕事もあります。
歯科医院経営でも同じです。
臨床の実力はある…
真面目に学んでいる…
それでも新規患者は安定せず、
自由診療の成約率も思うほど伸びない…
スタッフの定着に悩み、
ドタキャンにも振り回される…
毎日忙しいのに、資金的な余裕は増えにくい…
そんな状態に陥る歯科医院は少なくありません。
実はその背景には、
何を頑張るかの選び方のミスマッチがあります。
経営は、苦手を全部克服する競技ではありません。
自分にとっては低負荷で続けられ、
他者には高負荷で真似しにくい領域を見つけ、
そこを歯科医院の核に据える勝負なのです。
私は、開業後の経営難の克服と
200以上の歯科医院の経営支援の中で、
この視点が分岐点になる場面を数多く見てきました。
※成果は実行状況や環境により異なります。
この記事では、どこをあなたの主戦場にすべきか。
その見極め方と、今日からできる一歩を整理してお伝えします。
なぜ努力しても経営が軽くならないのか
多くの歯科医院院長が苦しくなるのは、
努力が足りないからではありません。
真面目な先生ほど、
必要だと言われたことを広く抱え込みます。
自費も伸ばしたい…
採用も改善したい…
教育も仕組み化したい…
数字も見なければならない…
その結果、全部に手を出して、
全部が重たくなるのです。
なぜなら、経営においては
「やればできること」と
「自分が続けるべきこと」は違うからです。
分析が苦手な院長が、
毎月の数値管理や導線設計を
気合いだけで回そうとすると、
判断が遅れ、継続も不安定になります。
人の育成が強い負担となっているのに、
全スタッフの感情調整まで院長が背負えば、
診療後には精神的エネルギーが尽きます。
臨床でも同じです。
本心では予防の仕組みづくりももっと取り組みたいのに、
別の勝ち方を追うと、学びも、投資も、ストレスも重くなります。
つまり、経営が軽くならない根本原因は、
あなたにとって負担の大きい領域を主戦場にしていることに
あるのかもしれないのです。
・自費の弱さは説明力の問題に見える。
・スタッフ離職は人間関係の問題に見える。
しかし根底には、
価値観の切替不足があるのではないか?
ということです。
あなたの歯科医院は何で勝つ歯科医院なのか?
どの仕事なら継続して深く掘れるのか?
その設計が曖昧なままでは、
努力が利益や余裕に変わりにくいのです。
見極めるべき、3つの主戦場
では、あなたの歯科医院は
どこを核にするべきなのでしょうか?
大部分の院長先生の主戦場の候補は
ざっくり大きく分けるなら”3つだけ”です。
・組織と管理
・特定領域の臨床
まずはこの3つで整理すると、
自分の強みが見えやすくなります。
1. 数字や戦略が主戦場の院長
競合歯科医院や地域性を見ながら、
自院の打ち出し方を考えるのが苦にならない。
数値を見て改善策を組み立てるのが自然。
そんな先生は経営者脳が強いタイプです。
2. 組織と管理が主戦場の院長
スタッフの個性を見抜き、
面談や教育、役割設計を通じて、
チームを整えることにやりがいを感じる。
そんな先生は管理型です。
3. 特定領域の臨床が主戦場の院長
ある治療分野を深く掘ることに没頭でき、
学び続けること自体が楽しい。
そんな先生は臨床特化型です。
対象患者を絞るほど強みが生きやすくなります。
問題は、どの型が優れているかではありません。
自分の型と違う勝ち方を追いかけることが
問題となるのです。
このズレが、疲弊と伸び悩みを生みます。
あなたの歯科医院の核
では、”核”をどう見極めればよいのでしょうか。
判断基準はシンプルです。
見るべきは、
自分にはそれほど苦にならず続けられるか?
他者には重たい仕事に見えるか?です。
たとえば、次の3点で考えてみてください。
・診療後でも比較的疲れずに考えられる仕事は何か
・他の歯科医師なら嫌がりそう、続けにくそうな仕事は何か
重要なのは、「できること」ではなく、
低負荷で反復できる仕事・行為を探すことです。
あなたが当たり前にやっていることで、
周囲が「それは大変だ」と感じるものは
何ではないでしょうか?
核が見えたら〇〇を変える
核が見えたら、次にやることは明確です。
時間、お金、意識の配分を変えることです。
経営が得意な院長なら、
数値管理、対象患者の絞り込み、訴求ポイント、
自由診療への導線整備や情報発信の設計等に
より多くのリソースを投下するべきです。
管理が得意な院長なら、採用、教育、
面談、権限委譲、評価基準の整備等に
集中した方が歯科医院は安定します。
臨床が得意な院長なら、
何でも広くやるより、
強みが伝わる診療領域を明確にし、
説明、導線、予約設計を磨く方が合理的です。
一方で、核ではない仕事は、
自分で抱え込まないことです。
仕組み化する、委譲する、外注する、
場合によっては、他医院に患者ごと紹介してしまう…
この発想がなければ、
得意があっても経営は軽くなりません。
つまり、増収増益の最短コースは、
全部を上手にやることではなく、
勝てる場所に配分を寄せることなのです。
得意を経営の中心に
歯科医院経営で重要なのは、
苦手を全部克服することではありません。
ここまでお話ししてきたように、
同じ「歯科医院の院長」であっても、
どこに楽しさや得意を感じるかによって、
目指すべき「ビジネスの核」は180度変わります。
自分にとっては息をするようにできるけれど、
他の先生にとっては高山を登るような苦行…
この条件が重なる領域を見つけることこそが、
競争のない独壇場を作る唯一の鍵です。
さて、先生の胸に手を当てて考えてみてください。
条件が重なる領域、競争のない独壇場は
「数字や戦略(経営)」でしょうか?
「人と向き合うこと(管理)」でしょうか?
それとも「特定の治療技術(臨床)」でしょうか?
先生が日々の歯科医院の業務のなかで、
どの領域に触れている時が一番楽しくて、
ストレスを感じないでしょうか?
まずは明日からの様々な仕事の中で、
自分が何をしている時に
一番時間が経つのが早く感じるか?
これを意識してメモを取ることから始めてみてください。
思い込みや因習から抜け出し、
先生自身の本当の強みに気づいた時、
持続可能な増収増益への扉が開くはずです。
そうして、あなたにとっては苦にならず、
他者には負担が大きい仕事を見つけ、
そこを歯科医院の核に据えましょう。
ここが定まると、努力が分散せず、
増収増益にもつながりやすくなります。
さぁ、まずは1週間、メモを取ってみましょう。
その中から、あなたには苦にならないのに
他の先生方には気が進まない仕事を探し出すのです。
それがあなたの歯科医院経営における
主戦場を見つける最初の一歩です。









