「忙しいのに、なんとなく苦しい」
朝イチから夕方まで、チェアに向かい続ける。
気づけば昼食も大急ぎでとっている。
それでも月末の数字を見ると、
「あれ、また思ったより少なかった」
経営が良くなっている実感が持てない。
この「なんとなく苦しい」という感覚、
先生のクリニックにも心当たりはありませんか?
実は、この感覚の正体は
「モヤモヤの言語化ができていない」ことにあります。
「医院を良くしたい」という思いは誰もが持っている。
でも、「何を、どのくらい、どうやって良くするのか」が
曖昧なまま、日々の診療に追われているケースがほとんどです。
モヤモヤしたまま、
「なんとなく忙しい」を続けても、経営は変わりません。
必要なのは、モヤモヤを
「言葉」にし、「数字」にし、「行動」に変えるプロセスです。
私はこれまで200以上の歯科医院の経営改善に携わってきました。
経営が思うように動いていない歯科医院に共通しているのは、
技術や努力の不足ではなく、
「問題の所在が曖昧なまま動いている」という点です。
この記事では、経営改善を確実に前進させるための
思考の順序とプロセスをステップごとにお伝えします。
「何から手をつければいいかわからない」
という先生にこそ、読んでいただきたい内容です。
何を良くしたいのか
「医院を良くしたい」
この言葉、実はとても曖昧です。
「良くする」の中身が
人によってまったく違うからです。
実際のところたとえば、
が今一番気になっていることは何でしょうか?
「良くしたい」の中身は?
・毎月の手取りを増やしたい?
・資金繰りのプレッシャーから解放されたい?
・スタッフ問題に振り回されるのをやめたい?
・自由診療の成約率を上げたい?
・もっと時間の余裕が欲しい?
どれも「医院を良くする」という言葉に含まれていますが、
それぞれ対策がまったく異なります。
全部を同時に解決しようとすると、
エネルギーが分散して何一つ前進しない、
という状態に陥ります。
「一番」を決める
まず取り組むべきは、
「今、自分が一番何を解決したいのか」を
たった1つにまで絞ることです。
これが経営改善の本当のスタートライン。
複数の悩みがあるのは当然ですが、
優先順位をつけない限り、何も動きません。
「なんとなく苦しい」を
「〇〇が足りていないから苦しい」に変える…
この言語化の作業こそが、改善の第一歩です。
「目標」を「数字」に変換
例えば先生が、
「月商をもっと増やしたい」と決めたとします。
では、今より月いくら増えれば
「良くなった」と言えますか?
「なんとなく増えた」では、
改善の成否が判断できません。
目標は必ず数字に落とし込む必要があります。
仮決めでも構いません。
例えば「月商をあと50万円増やす」でOK。
決めた瞬間から、やるべきことが見えてきます。
数字を生み出す「道筋」を描く
目標の数字が決まったら、
次はその数字を生み出すプロセスを逆算します。
歯科医院の売上を構成する要素は、シンプルに3つです。
売上(月商)=(対象月の)患者数×診療1回の平均単価×平均来院回数
売上(月商)をあと50万円増やすなら、
・新規患者を月10名増やすのか
・自由診療の成約率を現状の2割から3割に上げるのか
・リコール率を高めて既存患者の来院回数を上げるのか
どのルートで目標に近づくかを
事前に決めておくことが重要です。
ルートが決まると、
「今月何をすべきか」が自然と絞られます。
「感覚」ではなく「数字」
先生は診療においては、検査結果をもとに
治療方針を決めているはずです。
経営も同じです。
感覚や雰囲気ではなく、
数字を根拠に判断する習慣が
経営改善を加速させます。
ボトルネックを見つけて改善
目標と道筋が決まったら、次にやることは
「どこが詰まっているのか」を特定することです。
これをボトルネックの特定と呼びます。
たとえば、自由診療の成約率を上げたいとします。
では、なぜ今の成約率が低いのか?
コレを特定する作業となります。
ボトルネックは「一番細い管」
水を流すホースを思い浮かべてください。
どこか一か所が細くなっていると、
他がどれだけ太くても水の量は増えません。
経営も同じです。
プロセスの中で一番細くなっている箇所が
全体のパフォーマンスを決めています。
自由診療の成約率で言えば、
・そもそも説明の機会を作れていないのか
・説明はしているが患者に価値が伝わっていないのか
・価値は伝わっているが費用がネックになっているのか
どこが細くなっているかによって、
打つ手がまったく変わります。
闇雲に「もっと丁寧に説明しよう」と努力しても、
ボトルネックが別の場所にあれば成果は出ません。
改善策は「テスト」から
ボトルネックが見つかったら、
いきなり大がかりな施策に走らないこと。
まず小さくテストすることが鉄則です。
説明ツールを一枚作って反応を見る、
トリートメントコーディネーターに一部を任せてみる、
といった小さな実験から始めることで、
リスクを抑えながら改善の手応えを確認できます。
”検証・評価・継続”で改善を習慣化
テストをしたら、必ず
数字で評価することが次のステップです。
「なんとなく手応えがあった」では不十分。
成約率が何%から何%に変わったか、などを
きちんと確認してください。
評価の後に「判断」をする
数字で評価したら、次の4択から判断します。
・改良:方向性は合っているが、やり方を少し変えてみる
・縮小:効果は限定的だが、コストを下げて続ける価値はある
・停止:効果がなく、リソースの無駄と判断したらすぐやめる
ここで重要なのは、「やめる勇気」を持つことです。
効果のない施策をずるずる続けることは、
時間・お金・スタッフを無駄に消耗させるだけです。
一つが解消したら、次のボトルネックへ
一つのボトルネックを解消したら、
計善改善がめでたく終了!とはなかなかなりません。
経営改善に「完成」はないからです。
次に細くなってしまっている箇所を特定して、
同じサイクルを回す。そしてまた次へ…
この繰り返しが、経営を着実に前進させます。
「外から見る目」の重要性
ここで一つ、正直にお伝えしたいことがあります。
このプロセスを自分一人で回し続けることは、
非常に難しいというのが現実です。
なぜなら、毎日診療の中にいる先生には
自院の問題が「当たり前の風景」に
見えてしまうからです。
ボトルネックの特定も、改善策の評価も、
内側にいる人間には見えにくいものがあります。
多くの歯科医院を見てきた経験から言えば、
外部の視点を取り入れることで、
改善のスピードは大きく変わります。
※成果は実行状況や各歯科医院の環境により異なります。
「モヤモヤ」を「行動」に変える
ここまでお伝えしてきたプロセスを、改めて整理します。
① 「何を良くしたいか」を一つに絞って言語化する
② それを実現する数字を決める
③ 数字を生み出すプロセスを逆算して道筋を描く
④ 一番詰まっているボトルネックを特定する
⑤ 小さくテストして、数字で評価する
⑥ 継続・改良・縮小・停止を判断する
⑦ 次のボトルネックへ
このサイクルを回すことが、経営改善の本質です。
特別な才能も、大きな投資も必要ありません。
「順番通りに考える習慣」があれば、経営は動き始めます。
先生のクリニックが今停滞しているとしたら、
それは技術の問題でも、努力の問題でもないはずです。
「どこに問題があるかを正しく見つけられていない」
ただ、それだけのことである可能性が相当
高いと言えます。
今日できる、最初の一歩
難しく考える必要はありません。
今日の診療が終わったあと、
5分だけ時間をとってください。
紙に一行、書いてみましょう。
「私が今一番解決したいのは、〇〇だ」
この一行が書けた瞬間、先生のモヤモヤは
「行動できる問題」に変わります。
経営改善の歯車は、
この小さな言語化から回り始めるのです。









