優秀な人材が欲しい

「優秀な人材が来ない」歯科医院の院長が見落とす評価の盲点

スマホの電池が80%あっても、
多くの人は「まだ十分ある」とは見ません。
先に気になるのは、減っていくことです。

 

人は本能的に、不足に目が向きます。
足りないもの、遅いもの、できていないもの。
そこに意識が引っ張られやすいのです。

 

これは歯科医院のスタッフ評価でも、
まったく同じなのです。
先生も思い当たる節があるかもしれません。

 

「給料を払っているのだから、もっと動いてほしい」
「教えたことはすぐできて当然だ」

 

そう感じること自体は、
経営者として不自然ではありません。
しかし実は、そこに定着しない歯科医院
”しくじり”が隠れていることがあります。

 

なぜなら、スタッフは能力だけでなく、
自分がどう見られているかにも敏感だからです。

 

注意や指導の内容以上に、

「私は不足として見られているのか」
「貢献を見てもらえているのか」

を、院長の日々の言葉や表情から感じ取っています。

 

私は歯科医師として現場に立ちながら、
200以上の歯科医院の経営改善に関わってきました。

 

その中で何度も見てきたのは、
スタッフの問題に見えることの多くが、
実は院長の評価の癖から始まっている
という事実です。

 

今回のテーマは、
スタッフが辞める歯科医院と、
長く育つ歯科医院の違いです。

 

先生が見るべきなのは、
不足分だけではありません。
まずは充足分を見ることです。

 

そこが変わると、
指導の言葉も、空気も、定着率も変わります。
この機会に一緒に考えてみてください。

離職は院長の期待設計ミス?

スタッフが続かない歯科医院では、
表面上はいつも同じ問題が起きます。
採用しても定着しない。育つ前に辞める。

 

少し注意すると空気が悪くなる。
任せたい仕事ほど、任せにくい。

 

すると院長はさらに不満をためます。
そして多くの場合、結論はこうです。

 

「最近は良い人材がいない」
「うちの歯科医院に合う人が来ない」

 

しかし実は、問題の芯は別にあります。
それは期待の置き方です。

 

言い方を変えれば、
『院長の頭の中にある基準が、
スタッフに一方的に求められている』

ということです。

 

先生は臨床経験を積み、
診療の優先順位も、院内の段取りも、
無意識に判断できるはずです。

 

ですが新人や勤続の浅いスタッフは、
先生と同じ景色はまだ見えていません。

 

ここを飛ばしてしまうと、
院長の中では「なぜ分からないのか」になり、
スタッフ側では「何を求められているか分からない」
というズレが生まれます。

 

このズレが怖いのです。
なぜなら、表面的には能力不足の問題に見えて、
実際は期待設計のミスだからです。

 

たとえば歯科医院では、院長の無意識の中に
次のような期待の置き方が起きやすいものです。

 

  • 一度教えたことは、次から当然できるはずだと思う
  • 忙しい時間帯でも、空気を読んで先回りしてほしいと望む
  • 自分の基準では及第点でも、口に出すのは不足だけになる
  • 成長途中なのに、即戦力として評価してしまう

 

これらに共通するのは、
能力の評価と人格の評価が、
現場で混ざりやすくなっていることです。

 

すると指導のつもりの言葉が、
スタッフには否定として届きます。

 

院長は教育しているつもりでも、相手には
「どうせ自分は足りない」
「見てもらえていない」
と伝わってしまう。

 

これではスタッフは定着しにくいのです。

 

ここで重要なのは、
注意や指導をやめることではありません。
それは違います。

 

歯科医院経営では、
ルールも品質も安全性も必要です。
指導は必須です。

 

ただし、指導の前提が
「不足している人を是正する」だけだと、
人間関係的には細っていきます。

 

こうなると先生が先に変えるべきなのは、
指導の量ではなく、
相手を見る視点である可能性が高いと言えます。

“見えない貢献”の評価

スタッフ評価というと、
多くの院長は能力を先に見ます。

 

処置準備、受付対応、アシストの正確性、
自費の説明力、仕事量…どれも大切です。

 

ただ、それだけで人を見てしまうと、
歯科医院経営では大事なものを落とします。
それが見えない貢献です。

 

たとえば、少し早く来て
院内の流れを整える…

 

忙しい時間帯に声をかけ、
他のスタッフの負担を軽くする…

 

緊張しやすい新人に配慮して、
院内の空気を柔らかくする…

 

こうした働きは売上表には出ません。
しかし実は、診療効率、ミスの予防、
スタッフ定着
に深く関わっています。

 

つまり、直接的な生産性だけでなく、
間接的に歯科医院へ利益をもたらす行動も、
評価対象に入れるべきなのです。

 

ここを見落とすと、
院長の言葉は不足の指摘ばかりになります。
すると本人の貢献実感が育ちません。

 

逆に、見えない貢献を見つけて
具体的に言葉にできる院長は、
評価基準を伝えられます。

 

ここで重要なのは、
甘やかすことではありません。

 

感謝と評価を示した上で、
足りない点を指導することです。

 

期待ばかり大きい言葉と、
感謝を土台にした言葉は違います。

 

先生の歯科医院では、
数字に出る働きだけを見ていますか?
それとも、空気や連携まで見ていますか?

感謝が伝わる指導スタイル

では、どう変えればいいのか?
難しいことではありません。
まずは指導の前提を変えることです。

 

不足を探してから話すのではなく、
その人がすでに出している価値を確認してから、
改善点を伝えるのです。

 

順番が変わるだけで、
同じ内容でも届き方は大きく変わります。
今日から実践するなら、次の3つで十分です。

 

1. 毎日1回、具体的な貢献を言語化する

「助かったよ」だけでは弱いです。
「朝の準備が早かったので診療が滑らかだった」のように、
行動と結果を結んで伝えてください。

 

2. 注意の前に、評価している点を先に伝える

たとえば
「声かけはとても良い。その上で、器具の戻し方だけ直そう」
と伝える。
これだけで、否定ではなく成長支援として届きやすくなります。

 

3. 月に1回、“数字に出ない貢献”を確認する

連携、空気づくり、新人支援、準備力…
これを院長が見ていると伝わるだけで、
歯科医院の空気は変わります。

 

ここで重要なのは、
褒める技術ではありません。
評価の視点を切り替えることです。

 

長く勤めてくれれば、多くの人材は
その歯科医院にフィットしていきます。

 

最初から完成形を求めすぎると、
育つ前に関係が切れます。
それは経営として、非常にもったいないのです。

スタッフの充足分を書き出す

スタッフが辞める歯科医院と、
長く育つ歯科医院の違いは、
指導の有無ではありません。

 

違いは、何を見て、
どんな前提で言葉をかけているか
です。
不足だけを見れば、人間関係は細ります。

 

充足分を見つけて、
感謝を土台に指導すれば、
同じ注意でも届き方が変わります。

 

スタッフもまた、
先生という上司を評価しています。

 

どうせ働くなら、自分を適正に見てくれて、
感謝してくれる歯科医院で働きたい。
そう思うのは自然ではないでしょうか。

 

まずは今週1週間、各スタッフについて
歯科医院に対して提供している充足分を、
1日1つ書き出してください。

 

そこが、定着率改善のドミノ倒しの1枚目です。

 


 

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歯科医師
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株式会社120パーセント
代表取締役  近  義武

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