こんな簡単なことなのに…
歯科医院の院長を務める先生方は、例外なく優秀です。
学生時代から研鑽を習慣化し、歯科医師国家試験を突破し、
日々の臨床でも幅広い症例に対応されています。
ところが、その「優秀さ」こそが、
歯科医院経営の足を引っ張っている
としたら、どう感じますか?
優秀な人にありがちなことなのですが、
自分がすぐにできたことは、
他人にもすぐできると思い込んでしまいがちです。
たとえば、新人スタッフに頼んだ器具の準備や受付対応。
もたついている様子を見ると、つい
「こんな簡単なこと、なぜできないんだ」と感じてしまう。
そして気づけば、自分で手を出してしまっている…
この「つい手を出してしまう」という行動こそが、
いつまでもスタッフが育たない最大の原因なのです。
先生も経験があるのではないでしょうか?
何度教えても同じミスをする…
指示したことが期待通りに進まない…
そのたびに苛立ち、結局自分でやってしまう。
この悪循環から抜け出さない限り、
先生は永遠に「振り回される院長」のままです。
本記事では、スタッフが育たない
本当の原因と、その解決策をお伝えします。
前提が間違っている
まず、厳しい現実をお伝えします。
先生の歯科医院のスタッフは、
先生の5~6割ほどの質と量しか仕事ができません。
8割ではありません。5~6割です。
「いやいや、うちのスタッフはもう少しできるはず」
そう思いたい気持ちはわかります。
しかし、その期待値こそが先生を苦しめているのです。
ここで一度、冷静に考えてみてください。
基本性能が高い人材が、
職業として歯科スタッフを目指すでしょうか?
責任も知識も求められ、決して楽とは言えない医療現場。
本当に優秀な人材であれば、進路は選び放題です。
同じ医療の道を志すなら、医師や歯科医師を目指すはずです。
経済的事情で医療職を諦めた優秀な人材が、
たまたま先生の歯科医院の求人に応じてくれる…
そんな宝くじには、そうそう当たりません。
つまり、先生の歯科医院のスタッフは、
先生ほど優秀でない前提で雇用する。
この現実をまず受け入れることが、
すべての出発点になります。
これを認めないまま
「なぜできないんだ」と苛立ち続けても、
スタッフは育ちませんし、先生も疲弊するだけです。
無い物ねだりをやめ、現実を見据える。
それが「振り回される院長」から脱却する最初の一歩です。
経験値は「任せた回数」でしか積めない
スタッフが先生ほど優秀でないと認めたうえで、
次に重要になるのが経験値です。
優秀な人なら一度の説明で理解できることも、
そうでない人にはなかなか身につきません。
経験を積ませる以外に、成長させる方法はないのです。
そしてもう一つ重要なことがあります。
人は「なんとかしてやり遂げなくては」という
切迫感がなければ、できるはずのこともできません。
先生がすぐに助け舟を出すと、
スタッフはどう感じるでしょうか?
「どうせ院長がやってくれる」
無意識のうちに、そう思うようになります。
つまり、スタッフがスキルを身につけようとする思いは、
結局のところ先生自身に妨害されているのです。
もちろん、目の前に患者がいる以上、限度はあります。
治療の安全性に関わる場面で手を出すのは当然です。
しかし、それ以外の業務でも反射的に手を出していないか、
そのバランスを見直さなければ、
いつまでも「使えないスタッフ」に悩まされ続けます。
歯科スタッフは女性比率が高く、ライフイベントによる
入れ替わり周期がどうしても短くなりがちです。
だからこそ、早く任せて、早く成長してもらう。
これができなければ、
歯科医院のレベル維持すら困難になります。
スタッフの管理コスト
ここまで読んで、こう感じた先生もいるはずです。
「スタッフ管理・教育のコストは、想像以上に大きい」と。
実は、このコストを大きく下げる発想があります。
言われてみれば単純なことなのですが、
それは「お金のかけ方」を変えることです。
具体的には、人件費の設計を見直すのです。
求人段階で「相場+α」を選ぶ理由
先生は今、スタッフ募集の
給与額をどう決めていますか?
求人誌を見て、近隣の歯科医院と同じくらいに…
そう設定していないでしょうか?
ここに大きな落とし穴があります。
他院とハッキリ差をつけて、高めに設定する。
たったこれだけで、応募者の質が変わります。
なぜなら、優秀な人材ほど自分の市場価値を理解しており、
給与水準で就職先を選別しているからです。
そして、ここが重要なポイントです。
優秀な人材は、教育コストが圧倒的に低い。
一度説明すれば理解し、自分で考えて動ける。
結果として、トータルでは「安い買い物」になることが多いのです。
試用期間後の「積み増し」が流出を防ぐ
採用後、試用期間で「この人は優秀だ」と確信できたら、
給与をさらに積み増す判断も有効です。
優秀なスタッフに長く勤めてもらえる価値は、
有形・無形を問わず計り知れません。
患者からの信頼、院内の雰囲気、新人教育の質。
すべてが底上げされます。
「優秀な人材をできるだけ安く使いたい」
これは非現実的な妄想です。
相応の賃金を払い、しっかり働いてもらう。
これが現実的な解です。
ただし、高い給与を提示すれば
優秀な人材が必ず手に入るわけではありません。
冷静な見極めも同時に必要です。
また、優秀な人材ほど、給与面以外のことにも
しっかりとした価値観を持っているものです。
そんな求職者には(当然ではありますが)
「先生の歯科医院で働くべき理由」
「入職したならどんな未来、成長が期待できるか」
「どんなことを大切に、どんな軸を核とした医院か」
などの『あなたの信念や価値観』を伝えることも重要です。
まず今日、求人票を見直してみませんか
ここまでお伝えしてきた内容を、整理します。
スタッフが育たない原因は、
スタッフの能力不足ではありません。
先生の「期待値」と「人件費の発想」にこそ、
根本原因があるのです。
整理すると、ポイントは3つです。
- 期待値の修正:スタッフは先生の5~6割しかできない前提で雇用する
- 任せる勇気:すぐに助け舟を出さず、経験を積ませる場面を意図的に作る
- 人件費の発想転換:相場より高く設定し、優秀な人材を引き寄せる
この3つを意識するだけで、歯科医院の景色は変わります。
とはいえ、いきなりすべてを変える必要はありません。
まず今日、一つだけ動いてみてください。
それは、次回の求人募集の給与額を、
近隣相場より明確に上げて設定することです。
求人誌や求人サイトを開き、
近隣歯科医院の給与水準を確認する。
そして、そこに
月額1万円でも2万円でも上乗せした金額を、
先生の歯科医院の募集要項に記載してみてください。
たったこれだけで、応募者の質は変わり始めます。
「振り回される院長」を卒業する第一歩は、
スタッフを変えることではなく、
先生自身の意思決定を変えることから始まるのです。
※コンサルティング実績に基づく一般的見解です。
成果は実行状況・環境により異なります。









