その経営判断、実は医院を壊している?
毎朝、診療が始まる前に
ふと考えることはありませんか。
「今日は何人来てくれるだろうか…」
「今月の売上、大丈夫だろうか…」
真面目に、誠実に診療を続けている。
技術だって、近隣の歯科医師には負けない自信がある。
それでも、数字がなかなかついてこない。
そんな焦りの中で、多くの院長先生が
「何かしなければ」と行動を起こします。
ホームページをリニューアルする。
スタッフに「もっと自費を勧めて」と言う。
新しい診療機器を導入する。
来院した患者に、より高単価な治療を勧める。
どれも、経営を良くしようとする
善意の行動です。
ところが実際には、これらの行動の多くが
スタッフのモチベーションを下げ、
患者の信頼を損ない、
中長期的に医院経営を悪化させています。
私はこれまで200以上の歯科医院の
経営改善に携わってきました。
その現場で繰り返し目にしてきた、
「やってはいけない5つの経営行動」があります。
善意から出た行動が、なぜ逆効果になるのか。
そして、何をどう変えればいいのか。
順を追って、お伝えしていきます。
善意の行動が逆効果?5選
NG① 少ない新患で売上を上げようとする
新患が少ない。
だから、来院した患者により多くの治療を。
その発想自体は、間違いではありません。
問題は「無理をする」ことです。
患者が今日求めているのは、
主訴の解決です。
その場で本人が望んでいない治療を
次々と提案されれば、どう感じるでしょうか。
売りたいだけなんじゃないか?」
その瞬間、信頼は静かに崩れ始めます。
再来院率が下がり、口コミも生まれない。
新患が増えないどころか、既存患者まで失う。
これが「無理な単価アップ」の末路です。
NG② スタッフに「売上UP」ばかり言う
院長が焦るほど、スタッフへの言葉が
売上・数字・自由診療の話に偏っていきます。
しかしスタッフのほとんどは、
「患者の役に立ちたい」という動機で働いています。
「売上を上げろ」という言葉は、
その動機と真正面からぶつかります。
やがてスタッフは、
「ここで働き続けていいのだろうか」と感じ始める…
スタッフの離職、採用コスト、
新人教育による診療品質の低下…
売上を求めた結果が、
より大きなコストと不安定さを生み出します。
NG③ 増患はHP、広告、設備投資頼み
もちろん、ホームページや広告、設備投資は重要です。
ただ、それだけに頼るのは危険です。
ですがそれよりも
既存の患者を見てください。
定期的にリコールに来てくれている患者。
治療が終わったまま、来院が途絶えている患者。
紹介を一度もお願いしたことがない患者。
新患を外から呼び込む前に、
「今いる患者との関係を深める」という視点が
抜け落ちていることがほとんどです。
新患を外から呼び込むコストと比べて、
既存患者のリコール改善は、
はるかに低コストで高い効果が期待できます。
投資対効果の観点でも、
院内資産の活用が先です。
※効果は医院の状況により異なります。
NG④ 自由診療は売り込み有き
「勧めなければ、自由診療は成約しない」
そう思っていませんか?
実は、押し売り感のある提案ほど
成約率を下げます。
患者が自由診療を選ぶ瞬間は、
「売り込まれた時」ではありません。
「この先生なら信頼できる」と感じた時です。
信頼の土台は、日々の丁寧な説明や、
治療の根拠をわかりやすく伝えることです。
そして患者自身が「選んでいる」と感じられる
提案の仕方にあります。
売り込みをやめた瞬間に、
自由診療の成約率が上がった医院を
私は何度も見てきました。
NG⑤ 感覚で対策を打ち続ける
「なんとなく患者が減った気がする」
「最近、自費が取れていない感じがする」
この「感じ」をベースに対策を打つことの
危険性を、先生はご存知でしょうか。
感覚は、都合よく現実を歪めます。
新患数、リコール率、自由診療の成約率、
診療台の稼働率。
これらの数値を月次で把握していない歯科医院では、
問題が深刻になって初めて気づくことになります。
「気づいた時にはもう手遅れ」
廃業した医院の院長先生が口を揃えて言う言葉です。
数値で現状を把握することは、
難しいことでも、特別なことでもありません。
経営の「診断」なくして、「治療」はできません。
では、何を変えればいいのか
「やってはいけないことはわかった。
では、何をすればいいのか」
その答えは、実はシンプルです。
「患者とスタッフのモチベーションが上がる方向」
に経営の軸を置き直すことです。
単価より「関係性」を先に育てる
新患が少ないなら、
まず既存患者との関係を深めることを優先してください。
定期検診の案内を丁寧に行う。
治療説明の時間を少し増やす。
患者が「また来たい」と思える体験を積み重ねる。
これだけで、リコール率と紹介患者数は
着実に改善していきます。
新患獲得の広告費をかける前に、
今いる患者を大切にする仕組みを
整えることが先決です。
スタッフには「数字」より「意味」を
売上目標をそのまま伝えるのではなく、
「なぜその数字が必要なのか」を
伝えてください。
「この医院を続けていくために、みんなの力が必要だ」
「患者に質の高い治療を届けるために、
経営を安定させなければならない」
この文脈があるだけで、
スタッフの受け取り方はまったく変わります。
数字はゴールではなく、
「良い医療を届け続けるための手段」
として共有することが重要です。
自由診療は「選んでもらう設計」に
押し売りをやめた代わりに必要なのは、
患者が自然に選びたくなる説明の設計です。
治療の選択肢を提示する際には
患者の価値観を確認しておくことが
絶対的な前提となります。
その上で、その価値観をもとに
「あなたが望む生活を送りたいなら
次のような条件を満たす必要があります」
と条件を整理します。
ここまでの前振りをしてから、条件に合致する治療を
選択肢として提示しましょう。たとえば、
「これらの条件を満たす治療はABCと3つあって
治療 Aは… 治療 B は… 治療 C は…」
と、違いとベネフィットを明確に伝えるのです。
このほんの少しの手間で。
患者の理解度と納得感は大きく変わります。
「先生に勧められたから」ではなく、
「自分で選んだ」と感じてもらうこと。
それが、自由診療の成約率を
持続的に高める唯一の方法です。
月に一度、数字を「診断」する
感覚経営から抜け出す第一歩は、
月次の数値確認を習慣にすることです。
難しく考える必要はありません。
まずは以下の4つだけを毎月確認してください。
- 新患数(先月比・前年同月比)
- リコール率(定期検診への再来院率)
- 自由診療の成約率
- ユニットの稼働率
この4つを把握しているだけで、
「何となく調子が悪い」が
「どこに問題があるのか」に変わります。
経営の問題も、
診断なくして治療はできないのです。
今日から1つだけ変える
ここまでお伝えしてきた5つのNG行動。
1つでも、心当たりがありませんでしたか?
「全部やっていた」という先生も、
どうか自分を責めないでください。
これらはすべて、医院を良くしたいという
真剣さから生まれた行動です。
方向が少しずれていただけです。
方向を変えるのに、
大きな決断は必要ありません。
今月の「新患数・リコール率・自由診療成約率・
ユニット稼働率」を紙に書き出してください。
正確な数字でなくても構いません。
まずは「だいたいいくつか」を
把握することから始めてみましょう。
経営の改善は、大きな投資や
劇的な変革から始まるのではありません。
「現状を正確に知ること」
ここから始まります。
その小さな一歩が、
スタッフが働きやすい医院へ、
患者が信頼して通い続ける医院へ、
そして先生自身が経営に自信を持てる医院へと
つながっていきます。









