先生、毎日の診療、本当にお疲れ様です。
こんにちは、株式会社120パーセント代表、
ニッチな自由診療でも「先生のその治療が受けたい!」患者が集まる歯科医院構築、
クリニックの経営アドバイザーで歯科医師の 近 義武 です。
あれは確か、自分のクリニックを開業して間もない頃のことでした。
ちょっとした契約関係の問題が生じて、
法律的な判断が必要になった際の話です。
当時の私は、「これは素人判断では危険だ」と思い、
専門家に相談することにしました。
クリニックの徒歩圏内にあった
司法書士事務所を訪ねたときのことを、
今でもはっきりと覚えています。
立派な事務所で、壁には資格証書が額縁に入って飾られ、
書庫には法律関連の分厚い書籍や
バインダーがが重々しく並んでいました。
「街の法律家」と書かれた看板に、
なんとなく安心感を覚えたものです。
相談に乗ってくれた先生は自信満々に、
「それはこういうケースですね」
と即答してくれました。
その回答は、論理的で説得力があり、
私の不安を一掃してくれるような内容でした。
「さすが専門家だな」と心から感心し、
その助言に従って対応を進めました。
ところが、数週間後のことです。
別の件で弁護士に相談する機会があり、
ついでに例の件についても確認してもらったところ、
司法書士の回答が間違いだったことが判明したんです。
その瞬間の驚きと言ったら、
今思い出しても背筋がゾクッとします。
「専門家が堂々と間違えるなんて」という衝撃と、
「危うく大きな問題になるところだった」
という恐怖が同時に襲ってきました。
幸い、まだ取り返しのつく段階だったので
大事には至りませんでしたが、
もしそのまま進めていたらどうなっていたか…
その司法書士は、決して悪意があったわけではありません。
むしろ、真摯に対応してくれていたし、
自分なりに一生懸命答えてくれていたんです。
でも結果的に、その分野については
『十分な知識を持っていなかった』
ということなのでしょう。
「街の法律家」という看板と立派な事務所の雰囲気に、
私は完全に騙されていました。
いや、騙されたというより、
勝手に信頼してしまっていたのです。
この体験から学んだのは、専門家だからといって
すべての分野に精通しているわけではないということ。
そして、相談相手選びの重要性でした。
決断をするときに誰かに相談するのは
本当に大事なことです。
でも、「誰に相談するか」はそれ以上に重要だと、
私は身をもって知ったのです。
あの時の私のように、「専門家なら大丈夫」
という先入観を持ってしまうと、
落とし穴にはまってしまう可能性があるのです。
歯科医院経営でも同じ
こういうことって、歯科医院経営でも
まったく同じですよね。
先生も、経営で困ったときや決断を迫られたときに、
誰かに相談されることがあるのではないでしょうか。
税理士に経営相談をしたり、
経営コンサルタントにアドバイスを求めたり、
同業の先生に話を聞いたり…
しかし、その相談相手は本当に適切なのでしょうか?
たとえば、税理士に「患者数を増やしたい」
と相談したとします。
税理士は経理・数字のプロですから、
「広告費を増やせば患者数は増える」という一般論を
もっともらしく話すかもしれません。
でも実際には、歯科医院の集患は
そんな単純な話ではありませんよね。
地域性、診療内容、患者層、競合状況など、
歯科医院特有の要素を理解していない相談相手では、
的外れなアドバイスになってしまいます。
経営コンサルタントでも同じです。
一般的な経営理論は知っていても、
歯科医院の現場を知らない人が
「接遇を向上させましょう」と言ったところで、
患者との関係性は単純な接客とは違います。
相談相手が、医療の特殊性を理解していなければ
間違った方向に進んでしまう可能性があります。
同業の先生への相談も要注意です。
「ウチはこれで成功した」という体験談は貴重ですが、
立地や患者層が違えば同じ方法が通用するとは限りません。
むしろ、成功体験に固執して
環境の違いを見落としてしまうリスクもあります。
私が司法書士に騙されたように、知らず知らずのうちに
不適切な相談相手からのアドバイスに従って、
歯科医院経営を危険な方向に導いてしまう可能性があるのです。
信頼できる相談相手を見極める3つのポイント
では、どうすれば信頼できる相談相手を
見極めることができるのでしょうか。
私の経験から、3つのポイントをお伝えします。
1つ目:歯科医院の現場を理解しているか
相談相手が一般的に使われる「歯科医院の経営関連用語」
「チェアタイム」「リコール率」「自費率」などの用語を
自然に使えるかどうか。
患者の心理や、スタッフの働き方について
具体的な話ができるかどうか。
これらは、本当に歯科医院の現場を
理解している人でなければ語れない内容です。
2つ目:成功事例も失敗事例も有していて、
それぞれ矛盾なく分析・解説できる
本当に信頼できる相談相手は、
「こういう取り組みで成功した歯科医院がある」だけでなく、
「こういう方法で失敗した歯科医院」についても
具体的に話すことができます。
しかも、なぜ成功したのか、なぜ失敗したのかを
論理的に分析して説明できる人です。
成功事例しか語らない人は危険です。
3つ目:リスクについても言及するか
良いことばかり言う相談相手は要注意です。
「この方法にはこんなリスクもあります」
「先生の歯科医院の場合、この点に注意が必要です」
デメリットやリスクについても、正直に
話してくれる相談相手こそ、信頼できる人物と言えるでしょう。
この3つのポイントを満たさない相談相手は、
そもそも実力不足だったり、人間として信頼に足らなかったり、
自己評価が高すぎたりしている可能性が高くなります。
私が出会った司法書士のように、
もっともらしいことを言いながら的外れなアドバイスを
してくるかもしれないということです。
あなたの大切な歯科医院の経営に関わることですから、
相談相手選びは慎重に行いましょう。
まとめ
まずは相談相手の「歯科医院経営」への理解度を確認しましょう。
相談することは大切です。でも、誰に相談するかは
それ以上に重要だということを忘れないでください。
まずは今日から、相談相手に対して
「歯科医院の経営についてどのような経験をお持ちですか?」
と質問してみましょう。
その回答で、本当に信頼できる相談相手かどうかが
ある程度は見えてくるはずです。
私のような”冷や汗”はかかないに超したことはありません。
先生にはそんな経験をする必要はないのです。
適切な相談相手を見つけて、安心して経営判断や施策を
進めていただければと思います。