あなたの歯科医院はどちらですか?
先日、ある患者の言葉が印象に残りました。
「先生、実は今日来るのに、朝から緊張してたんです」
その方は40代の男性で、
半年ぶりの検診での来院でした。
虫歯があるかもしれない…
治療が必要かもしれない…
そう考えると、どうしても身構えてしまう。
彼の表情には、明らかな緊張が見て取れました。
一方で、同じ日に来院された別の患者は
待合室でリラックスした様子で
スマホをのんびりと眺めていました。
「いつもありがとうございます」
そう言ってお帰りになるその方は、
3ヶ月ごとのメンテナンスを
もう5年以上続けている常連の患者です。
同じ歯科医院なのに、
患者によって受け止め方がまったく違う。
これは多くの歯科医院で
日常的に起きている光景ではないでしょうか。
考えてみてください。
あなたの歯科医院は、
患者にとって「日常」でしょうか。
それとも「非日常」でしょうか。
長年にわたって定期的に通院している患者にとっては、
歯科医院への通院は日常の一部と言えるでしょう。
「矯正の調整日だな」
そんな感覚で、美容院に行くように、
フィットネスジムに行くように、
自然に足を運んでくれていることでしょう。
このこととは対照的に、初診の患者にとっては
歯科医院に関連する出来事のすべてが”非日常”です。
スタッフは親切か…
痛い治療をされないか…
高額な自由診療を勧められないか…
不安と緊張で、診察室のドアをノックする手が
ちょっと震えているかもしれません。
さらに言えば、
治療内容によっても「非日常度」は変わります。
定期的なクリーニングやメンテナンスは、
患者の中で比較的「日常化」しやすい診療です。
矯正治療も、通院が長期間にわたり、
なおかつ、毎回の治療に大きな変化が少ないことから、
ある時点から、通院・診療が日常の一部になっていきます。
同じ自由診療でも、インプラント治療となると話は別です。
多くの患者にとって、インプラントは
人生で一度か二度程度の大きな決断を伴うイベントです。
費用も高額、治療自体も大掛かりな感じ、
そして何より「手術」という言葉が
非日常性を強く印象づけます。
根管治療や抜歯、審美治療なども同様に、
患者にとっては特別なイベントであり、
日常的な感覚で受けられるものではありません。
つまり、あなたの歯科医院は
患者によって、治療内容によって、
「日常」にも「非日常」にもなるのです。
そしてこの”日常”と”非日常”違いが、
患者の来院頻度、自由診療の成約率、
リピート率、そして最終的には
経営指標の数値に大きく影響しています。
だからと言って、どうすればいいのでしょうか。
”日常”と”非日常”が存在すると言われても
対処の方法が早々思い浮かびませんよね。
結論を言って仕舞えば、その答えは、
「日常化促進施策」と「非日常に向けた対応」という
2つの戦略を使い分けることにあります。
「日常」になれば”かかりつけ”になる
患者があなたの歯科医院を「かかりつけ」と
認識するか、どうか、の分かれ目は、
通院自体が日常化しているかどうかです。
考えてみてください。
メンテナンスで3ヶ月に一度通う患者は、
年間4回あなたの歯科医院を訪れます。
矯正治療中の患者なら、
月に一度の調整で年間12回です。
これだけの頻度で通院すれば、
あなたの歯科医院も、その通院も、
遅かれ早かれ患者の生活の一部になります。
受付スタッフの顔を覚え、院内の雰囲気に慣れ、
あなたの治療スタイルを理解し、
「ここは自分の歯を任せられる場所だ」
という安心感が育っていきます。
しかし、痛みが出たときだけ来院する患者は違います。
年に一度来るかどうか…
場合によっては数年ぶりの来院になるでしょう。
その患者にとって、あなたの歯科医院は
「緊急避難所」であって「日常的な場所」ではありません。
治療が終わったと思えば、アポをとっても勝手に去り、
次に痛みが出たときには別の医院に行くかもしれない…
つまり、通院や歯科医院そのものが、
日常化していない患者は流動的なのです。
では、どうすれば患者にとって日常化するのか。
答えは実はとてもシンプルです。
定期的に来院する理由を作ることです。
メンテナンスの重要性を伝え、
予防の価値を理解してもらい、
特に最初は短めの期間でアポイントを取る。
リコール率を上げる仕組みを整え、
リマインドを徹底して来院を促す。
来院時には「次回は〇月ですね」と
当たり前のように次のアポイントを確定させる。
これができている歯科医院では、
患者の8割以上がメンテナンス患者になり、
安定した経営基盤が築かれています。
逆に、これができていない歯科医院では、
いつまでも新患に依存し、患者数に振り回され、
変動の大きい不安定な経営が続きます。
メンテナンスや矯正治療が
日常化しやすいのは、継続性があるからです。
一度システムに乗せてしまえば、
患者は自動的に通い続けます。
そしてその過程で、あなたへの信頼が深まり、
他の治療が必要になったときにも
迷わずあなたに相談するようになるのです。
”非日常”でも選ばれるには…?
では、インプラントや審美治療のような
非日常的な治療ではどうでしょうか。
患者にとって人生で数回しかない大きな決断です。
費用も数十万円、場合によっては3ケタ万円を超えます。
治療期間が長期化したり、リスクの説明も必要だったりと
これまで患者が受けてきた診療とは一線を画しています。
このような治療で選ばれるには、
患者があなたを「知っている」「信頼している」
という前提が不可欠です。
あなたの治療を最初から熱望しているような
一部の患者を除けば、患者初診で来た患者に、
いきなりインプラントを提案しても
成約率は極めて低いでしょう。
「他の歯科医院でも相談してみようかな」
そう思われるのが当然です。
しかし、何年も通っている患者なら話は別です。
「これまでの治療も丁寧だったから、
きっとインプラントも大丈夫だろう」
そう思ってもらえれば、
高額な自費診療でも成約率は跳ね上がります。
つまり、非日常的な治療で選ばれるためには
事前に関係性を築いておく必要があるのです。
そのために必要なのが、
「知ってもらう」「試してもらう」
という2つのステップです。
まず、知ってもらう。
・どんな治療を得意としているのか?
・どんな設備があり、どんな実績があるのか?
・どんなポリシーを持って診療に臨んでいるのか?
・自分(患者本人)の悩みや問題を解消できるのか?
ホームページ、SNS、地域広告、
クチコミ、患者紹介、院長営業、スタッフ紹介…
あらゆる手段を使って認知を広げることです。
これが”マーケティング”です。
次に、試してもらう。
相談や検査、カウンセリング、簡単な治療など
低いハードルを用意して患者に来院してもらい、
あなたの技術、対応、医院の雰囲気を
実際に体験してもらいましょう。
その体験が好印象を患者に与えられたなら、
患者は本格的な治療を希望し、リピーターとなり、
やがて「かかりつけ」になって、
大きな治療が必要になったときにも
あなたを選んでくれます。
知ってもらい、試してもらい、
信頼してもらう。
この流れを作れるかどうかが、
非日常的な治療での成約率を左右するのです。
改善を重ねて、来院前のマーケティングの段階で
患者の信頼まで一定割合で獲得できるようになれば
初診時から非日常的な治療でも成約が可能になります。
マーケティング!マネジメント!
ここまでの話を整理しましょう。
患者にとって歯科医院は、
「日常」にも「非日常」にもなります。
日常化すれば、かかりつけになる。
非日常でも選ばれるには、
知ってもらい、試してもらう必要がある。
そのために必要なのが、
マーケティングとマネジメントです。
マーケティングとは、
患者にあなたの存在を知ってもらい、
来院のきっかけを作る仕組みです。
ホームページの充実、リコールシステムの構築、
患者満足度の向上による紹介促進。
これらすべてがマーケティング活動です。
そしてマネジメントとは、
来院した患者に高いレベルのサービスを提供し、
リピートや自由診療の成約につなげる
仕組みと体制を整え信頼を獲得することです。
スタッフ教育、カウンセリングの質の向上、
患者データの管理と活用…
特に患者とリアルに接して信頼を獲得するための
具体的な言動とその準備の全てが
マネジメントの領域なのです。
マーケティングで患者を呼び
マネジメントで患者を育てる
この両輪が揃って初めて、
安定した経営が実現します。
あなたの歯科医院は「どちら」なのか
では、今日から何を始めればいいのか。
まずは、あなたの歯科医院が
患者にとって「日常」なのか「非日常」なのか、
現状を見極めることから始めてください。
具体的には、
直近3ヶ月の患者データを見返してみましょう。
定期的に通院している患者は何人いますか?
リコール率は何パーセントですか?
初診から2回目以降の来院につながった患者の割合は?
数字を出すだけで、あなたの歯科医院が
「日常化への仕組みが稼働している医院」なのか
「非日常のまま終わっている医院」なのかが見えてきます。
もし日常化まで進んでいく患者が少ないなら、
まずはメンテナンスの提案と
リコールの仕組みを強化しましょう。
逆に、日常化はできているのに
自由診療の成約率が低いなら、
信頼関係を自由診療の成約に活かせてない証拠です。
カウンセリング力・真の悩みの掘り下げ力を磨き、
患者にピッタリの治療の提案と
治療後の成果のビビッドな描写を行う必要があります。
現状を正しく認識すれば、
次に打つべき手が見えてきます。
患者にとって「日常」になるのか、
「非日常」でも選ばれる存在になるのか。
その戦略を明確にして、
マーケティングとマネジメントを回していく…
それが、安定経営への最短ルートです。









