「基本が大事」はもう聞き飽きた?
「歯科医院経営の基本は、
挨拶・笑顔・掃除・電話対応・対面対応ですよ」
この言葉に、
正直うんざりしている先生もいるかもしれません。
毎日、真剣に患者と向き合い、
休日を返上して最新の臨床技術を学ぶ先生にとって、
「そんな当たり前のこと」と言いたくなる気持ちもよくわかります。
「技術さえしっかりしていれば、
患者は自然とついてくる」
そう信じて、
ひたすらに腕を磨いてきた自負があるかもしれません。
ですが、なぜこれほどまでに
「基本」の重要性が説かれるのでしょうか?
それは、先生の技術を軽んじているからではありません。
むしろ逆です。
多少の差はありますが、
『挨拶、笑顔、掃除、電話対応、対面対応が経営の基本』
という話は、多くのビジネスの現場で語られます。
これらは単なる精神論ではなく、
先生が磨き上げた素晴らしい治療技術を、
本当にそれを必要としている患者に届けるための、
最も重要な「戦略」です。
もし先生が、
「自分の技術はもっと評価されてもいいはずだ」
と感じているのなら、ぜひ記事を読み進めてください。
この記事では、なぜ今、「基本」が重視されるのか、
その本質的な理由を解き明かしていきます。
なぜ「基本」が技術を上回る時代になったのか
先生の”価値”と患者が感じる”価値”のズレ
その最大の理由は、
先生が提供していると信じている“価値”と、
患者が実際に感じている“価値”の間に、
大きな「ズレ」が生じているからです。
多くの先生は、こう考えています。
これは歯科医師として当然の考え方です。
しかし重要なのは、その先生が考える「質の高さ」を
患者自身が正確に判断できるのか?という視点です。
先生が最先端の術式で完璧な根管治療を行っても、
残念ながら、その技術的な素晴らしさを
患者が理解することはほぼ不可能です。
患者にとっては、
スタッフが優しく声をかけてくれたか、
治療が痛くなかったか、といったことの方が、
よほどリアルな“評価基準”なのです。
患者はそもそも「歯が痛い」「腫れた」などの
問題や悩み、不安や恐怖を抱えています。
彼らがまず求めているのは、
その不安を取り除いてくれる「安心感」です。
・院内に入っても挨拶がなかったら?
・待合室の隅にホコリが溜まっていたら?
その時点で患者は、
「この歯科医院は自分のことを大切にしてくれない」
と感じ、心を閉ざしてしまいます。
つまり、患者は治療技術を評価する前に、
挨拶、笑顔、清潔さといった「基本」を通して、
その歯科医院が「自分を大切にしてくれる場所かどうか」
を値踏みしているのです。
この段階で不合格の烙印を押されてしまえば、
先生が誇る最高の治療技術は、
披露するチャンスすら与えられません。
これこそが、「技術」よりも「基本」が先に来ることの
本質的な理由なのです。
全ての目標達成の根幹とは?
先生が目指す、「月商500万円」「自費率30%」
といった、様々な歯科医院経営上の目標。
「圧倒的に多数の患者に尊敬される歯科医師」
「地域住民に『義歯なら〇〇歯科』と認識してもらう」
というような、なりたい自分の姿や、医院像。
どのような目標であれ、歯科医院経営において、
それらを達成するための共通項はたった一つ。
『患者の支持』です。
どんなに素晴らしい理念や志を掲げても、
そこに患者が介在しなければ、
すべては絵に描いた餅で終わってしまいます。
別の見方から言うなら、歯科医院の売上は、
「患者数」×「診療単価」×「来院頻度」で決まります。
これら全てが、患者の支持なくしては成り立ちません。
・先生を信頼してくれるから「自由診療」を受け入れてくれる
・ファンになってくれるから「リコール」に応じてくれる
つまり、先生が目指すすべてのゴールは、
この『患者の支持』という土台の上にしか
成り立たないのです。
ここで「基本」の話に戻ります。
挨拶や笑顔の欠如は、患者に
「自分は大切にされていない」という不信感を与え、
患者の支持を根底から破壊します。
不信感を抱いた患者が、
高額な自由診療や定期検診に応じるでしょうか?
答えは「ノー」です。
「基本」をおろそかにすることは、
穴の開いたバケツに水を汲むようなもの。
どんなに応用的な施策も効果はありません。
だからこそ、全ての目標達成の基盤となる
『患者の支持』を確固たるものにするために、
まず「基本」を徹底することが、
成功への最も確実な道筋なのです。
今日から実践できる「基本」の再定義
では、具体的に何をすればいいのか?
そう難しく考えることはありません。
「基本」を以下のように再定義しましょう。
この瞬間から意識できることばかりです。
1. 挨拶:存在承認と歓迎の意思表示
「〇〇さん、こんにちは!」と名前を添えて挨拶する。
これだけで患者は「自分のことを覚えてくれている」と感じ、
特別な存在として扱われたと感じます。
これは、患者の承認欲求を満たす強力な行為です。
2. 笑顔:安心と安全のシグナル
歯科医院という緊張空間で、先生やスタッフの笑顔は、
「ここは安全な場所ですよ、安心ですよ」
という何より雄弁なメッセージです。
技術的な説明の前に、
まず笑顔で患者の心を解きほぐすことが
信頼構築の第一歩です。
3. 掃除:エキスパートの矜持の可視化
徹底的に磨かれた院内は、
「私たちは、あなたの目には見えない口の中も、
これと同じレベルで丁寧な仕事をします」
という無言の宣言です。
清潔さは、歯科医院の品質を患者が唯一、
目で見て判断できる指標なのです。
4. 電話対応:歯科医院の第一印象形成
多くの患者にとって、
電話は歯科医院との最初の接点です。
声のトーンや言葉遣い一つで、
歯科医院全体の印象が決まります。
相手の不安に寄り添い、丁寧に応対することで、
来院前からファン作りは始まっています。
ただし、へりくだって、患者の全ての要求を
受け入れねばならないということではありません。
受け入れるかどうかの線引きについては
全スタッフが同じ判断を行えるよう
あらかじめ先生が決定して、
確実に共有しておく必要があります。
5. 対面対応:患者を「主役」にする配慮
「これから〇〇をしますね」といった声かけや、
タオルを目元にかけるといった些細な心配りが、
患者を不安から救います。
患者を「歯科診療の主役」として扱う意識が、
絶大な安心感と満足感を生むのです。
これらには、特別なスキルや高額な投資は不要です。
意識を「技術」から「患者」へ切り替えるだけで、
今日からでも実践できます。
求めている患者に届けるために
「基本」の重要性とは、
先生が研鑽を積んで身につけた素晴らしい治療技術を、
それを受けるにふさわしい患者へ届けることです。
挨拶、笑顔、掃除といった「基本」の徹底は、
先生の歯科医院と患者との間に信頼という名の
強固な架け橋を架ける『必須のタスク』です。
時代は変わりました。
「技術さえ良ければ患者が来る」という認識は
30〜40年前の過去のものであり、もはや幻想です。
まずは、あなたの歯科医院の「基本」を
見直すことから始めてみてください。
それが、先生の技術と情熱を
本当に必要としている患者へ届けるための、
最も確実な第一歩となるのですから。









