近 義武の歯科医院経営大学

日本の高度成長期、1970年代にはコンビニなどはまだ存在せず、
デパート・百貨店がまだまだ強い時代でした。

文字通りの「百貨店」として、一般商店の商品よりも
グレードも価格も高い商品を、何でも売っていた様に記憶しています。

屋上がミニ遊園地だったり、催事やイベントをしていたりして、
今ほど娯楽が多様化していない時代のレジャーランド的な施設でもありました。

現在ではデパートも統廃合が進み、かつての面影はありません。
名前や建物がそのままでも、中身は全く違います。
もはや「百貨店」ではなく、『専門店の集合体』です。

現在のあなたがリアルに買い物に行くとしたら

①『専門店』
②『百貨店に入っている専門店』
③『百貨店』
④『雑貨店』
⑤『コンビニ』

どれに行きたいと思うでしょうか。

もちろん品揃えやロケーションなどによって結果は変わるでしょう。
それでも③『百貨店』、④『雑貨店』を選ぶ方はほとんどいません。
「何でも揃う」というのは「突出して良いものも無い」と
何となくでも理解しているからです。

逆に、１点でも非常に魅力的な商品があるならば、
店舗の規模に関わりなく『専門店』でも
受け入れられるということでもあるのです。

歯科界でも同様のことが…

このデパート・百貨店で起こったことは、我々歯科の業界でも起きました。
40年ほど前までは歯科医院の数も少なく、連携もとれていなかったために
患者が通院する歯科医院を選択するに際しても、わずかな選択肢しかありませんでした。

そのため、患者にとってありがたい歯科医院とは
誰が来院してもあらゆる症状、治療に対応できる、
『そこにいけば何でも治してくれる』歯科医院でした。
いわば『何でも揃う百貨店方式』の歯科医院です。

ところが現在の歯科医院数は40年前の約２倍となり
患者にとっての選択肢の幅が広がりました。

通院可能な歯科医院も複数あり、
診療日や診療時間も、多様化しましたし、
情報化社会の構築、モバイルデバイスの発達によって、
歯科医院の比較検討が可能になりました。

その結果患者は、通院する歯科医院を
自分の意思で選択するようになってきたのです。

この状況で選択されるのは、
『何でも揃う百貨店方式』の歯科医院ではなく
『自分にぴったりだと思える』歯科医院となりました。

すなわち、患者自身の悩みや問題をしっかりと
解決してくれる歯科医院を探し求めるようになったのです。

言い方を変えれば、選択する歯科医院については、
患者自身の悩みや問題を解決してくれるなら
それ以外のことにはそれほど関心を寄せなくなったのです。

つまり「専門性」「診療方針」など、どこか特色的な歯科医院の方が
『専門店』的に評価が高くなる傾向があるということです。

ここまで聞くと、我々歯科医師としては患者自身の
「歯科診療や健康への関心が高まった」と喜びたい気分ですが、
別の大きな問題も生じさせてしまっています。

”歯科医院経営・業績の二極化”その原因の1つに、
この「患者が歯科医院選択する流れの変容」が
大きく寄与しているのです。

専門特化の歯科医院ならOK?

実際のところ、歯科医院が患者に選ばれる理由の第１位は
”自宅・職場に近い”のままです。

しかし、この理由は「歯科医院の存在そのものに価値がある」
ということを述べているに過ぎません。
どの歯科医院にとっても平等に働く
「患者を引きつける力」が存在するということです。

ですから『百貨店方式』の有利性は消滅してはいないのです。
患者の多くが、「どこの歯科医院でも、ほぼ何でも治せる」
「自分の症状くらいは治してくれる」と思っているからこそです。

ここに『専門店』としての魅力を加えることができれば
いままでとは違った患者層にアプローチすることになり、
結果として「増患」に結びつけることができるのです。

だからといって、慌てて…

この記事の公開は2025年3月31日まで