Last Updated on 2020.11.20 by 近 義武
現在、歯科医院を開設している院長の約70%は
年収1千万円以下といわれています。
(年収であって年商ではありませんよ)
歯科開業医の年収1千万円は、経営的には
決して余裕のある数字ではありません。
借入金の返済や運転資金の確保などを考えれば
楽ではない医院経営をしていることになります。
当然ながら「少しでも収入を増やす」工夫をすることになります。
その工夫の1つと言われているのがクレジットカードや交通系ICカード、
電子決済サービス(PayPay等)などの取扱いの導入です。
患者からすれば、歯科医療費の支払いは
「高額なもの」の代名詞の1つになっています。
最新の先端技術を駆使した歯科治療は
一件あたり数十万円〜数百万円と高額になることも増えています。
診療機会の損失を減少させるためにキャッシュレス決済の取扱いを
検討・開始する歯科医院も徐々に増えてきています。
2新型コロナウィルスの感染拡大もこの動きに拍車をかけています。
こんにちは、株式会社120パーセント代表、
集患、自費率向上、予防歯科の確立をブランディングで実現する、
ブランド歯科医院構築・経営コンサルタント、
歯科医師の 近 義武 です。
今回は、歯科医院経営からの視点で
クレジットカード導入について検討をしてみましょう。
保険診療自己負担金のキャッシュレス決済
患者が歯科保険診療の自己負担金を窓口で支払う際については
現金以外で行う方法としてごく一部の歯科医院においては
以前から、クレジットカード決済を導入されていました。
導入していた歯科医院がごくわずかだった理由は
・保険診療は少額の支払いが多く、手数料がバカにならない
・ポイント分が、禁止されている「値引き」に相当?
・窓口事務が煩雑化してスタッフの負担が増大
などで、これらを理由に導入をためらう院長が多かったからです。
自由診療の割合がある程度以上の歯科医院が
独自にカード会社と加盟店契約をして
「自由診療の支払いに限って」
クレジットカード決済の取扱いをしている…
こんな状況が長らく続いていたのです。
保険診療に関してのクレジットカード決済は
歯科医院ではほとんど行われていなかったともいえます。
ところが、2004年に国立病院の独立行政法人化に伴い、
会計法上の「暗黙の制約」がなくなりました。
その制約とは「国の機関の収納は原則として現金に限る」
というものです。
このことを契機に全国の国立病院・赤十字病院・労災病院で
クレジットカード決済が事実上解禁された形になったのです。
その結果、公立、民間の他の病院・医院もこれに追随する形で
保険診療の窓口負担分にクレジットカード決済の導入が進みました。
現在では様々な形態のキャッシュレス決済が、
多くの歯科医院でも導入されています。
キャッシュレス決済に対する規制はもはや存在しません。
自由診療も、保険診療も、決済方式も、どれを選んで
どのように運用するかも、あなたの裁量次第となっています。
経営上のメリット・デメリットとあなたの診療スタイルを
十分検討の上、導入の可否を決めてください。
キャッシュレス決済を導入するメリット
キャッシュレス決済にはポイント還元などの形で
患者側にメリットが存在しています。
これにより治療の成約のハードルが下がる効果が期待できます。
歯科医院側のメリットとしては、診療料金の回収を
決済サービス会社が行なってくれることが最も大きいといえます。
患者側のメリット
・高額な現金を持ち歩く必要がない
・カードなら盗難に遇っても被害が少ない
・支払い方法を選択可能(分割払い等)
・決済会社からのポイントが得られる
・利用明細書に記録が残る
・現金を銀行で用意するにも引出し制限がある
歯科医院側のメリット
・現金管理(釣銭トラブル等)が軽減される
・未収金・未装着による損害が減少する
・高額診療を勧めやすくなる
・スマホでの決済が可能なシステムもある
・料金の回収は決済サービス会社が行なってくれる
キャッシュレス決済を導入するデメリット
カード会社等に支払う手数料がすぐ思いつきますよね。
しかし、デメリットはそれだけではありません。
・加盟店手数料が発生する
・決済端末が有料になる場合がある
・通信費用がかかる
・停電時等は決済ができない
・加盟が難しいブランドがある
・使用限度額が決済サービスがある
・現金化に数日から数週間かかる
・あまり高齢者むけではない
大きな懸案事項1 手数料
キャッシュレス決済サービスの利用手数料は、
患者サービスの一環として歯科医院が負担しています。
保険診療の診療報酬は、いわば公定価格です。
多くの小売業・飲食業で行われているように
手数料相当分を商品価格に転嫁することはできません。
歯科医院でのキャッシュレス決済サービスの取扱いが
事実上解禁されたにもかかわらず、小規模の歯科医院では
手数料による利益の目減りを嫌って導入に二の足を踏んでいます。
自費診療のみとか、保険診療でも〇〇円以上などの
使用制限をつけて採用している歯科医院も多くあります。
手数料自体がゼロになることはありませんが、
複数のブランドを一括で取り扱う「取次・仲介業者」などを使うことで
決済サービス会社に直接申し込むよりも手数料が低くなる場合もあります。
キャッシュレス決済サービスの導入を考えるなら
このような情報の収集も重要になります。
大きな懸案事項2 現金化
窓口でのキャッシュレス決済から
それが現金として使用できるようになるまで
早くて数日、遅ければ1ヶ月ほどの期間が必要です。
その期間中は帳簿上では「売上」が建っていますが
その売上げ金を他の支払いなどには使うことができません。
現金化までの期間は短い方が経営上は有利です。
ただ、懸案の本質はそこではありません。
保険診療の場合、報酬の3割を窓口負担で受取り、
残り7割を約2ヶ月後に銀行振込みで受取ります。
我々はこの決済方法にある意味慣れていますので、
現金化まで数週間はそれほど苦にはならないでしょう。
問題なのは現金の動き(キャッシュフロー)と
帳簿上(会計上)のお金の動きが
これまで以上にわかりづらくなることです。
入金だけ見ても、窓口での現金収入、保険診療の銀行振込分、
決済サービスからの銀行振込分など多岐に渡ります。
一方支出も、現金払い、銀行振込、キャッシュレス決済など
様々な方式で行っています。
要するに、診療その他の会計処理としての事案が発生した時期と
それぞれの入金や出金の時期が入り組んでいるのです。
ただでさえわかりづらかった状況が
キャッシュレス決済サービスを導入することで
さらに混沌とする可能性があります。
実際に、歯科医院を経営していると
トータルでは赤字なのに現金が手元にあったり、
逆に黒字でも現金が枯渇したりすることが起こり得ます。
これが極端に進行すると帳簿上では儲けているはずなのに
支払いに窮して黒字倒産することになります。
歯科医院の黒字倒産は決して珍しいことではありません。
そんな馬鹿げた黒字倒産を回避するためにも
キャッシュレス決済サービスを導入するなら
お金の現状を把握するクセをつける必要があります。
このようなデメリットは小さくなるように、
またメリットを最大限活かせるように
十分な検討とシュミレーション、準備をすることが
キャッシュレス決済サービスの導入成功の鍵と言えます。
考えてみましょう
さて、それでは恒例のシンキングタイムです。
院長先生方に黒字倒産の話を振ると
こんな言葉を返されることがあります。
「それは税理士や会計士に仕事だろう」
「金を払っているのだから彼らが見てくれる」
「本当にヤバかったらけれらが教えてくれます」
あなたも少なからずそう考えていることは知っています。
しかし、残念ですが期待はずれです。
私もこれを知ったときは衝撃的でした。
正直、びっくりしたことを憶えています。
これは、我々が税理士や会計士に期待する仕事と
彼らが守備範囲と考えている仕事が
ズレまくっていることから生じる誤解です。
では、彼ら税理士や会計士は
何が自分たちの仕事だと考えているのでしょうか?
大事なことですからよく考えるべき問題です。
せっかくここまで読んだあなたなら
ぜひとも、考えてみてください!
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(ここは考える時間です)
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それでは答えです。