体力には限界があるが”脳力”には?
体力には限界があることは、誰もが知っています。
では、あなたの脳にも同じように限界があることを、
日々の診療の中で意識しているでしょうか?
夕方の患者には言葉が雑になってしまった…
朝イチで立てた治療計画は明快だったのに、
午後になると判断に迷いが生じる…
スタッフへの指示も、
診療開始直後と終了間際では精度が違う…
こうした経験はありませんか?
これは気合いや集中力の問題ではありません。
脳科学の知見は明確です。
脳には体力と同じように
明確な”上限”、”限界”があるのです。
睡眠や休息で”脳力”はチャージされ、
さまざまな判断や思考、タスクの処理を
繰り返すたびに消耗、枯渇していくのです。
体力に個人差があるように、
脳力にも大小の差はあります。
しかし限りがあるという点では全員同じ。
どれだけ優秀な先生でも、その脳力は
診療している日の夕方には確実に目減りしています。
そして脳力を使い切れば思考の質が低下します。
診療の精度が落ち、ミスが増え、
患者対応が雑になるのです。
これは脳の生理的なメカニズムから起こることです。
問題は、多くの院長がこの事実を
なんとなくでも知りながら、軽視していることです。
体力的な疲労には敏感なのに、
脳の疲労は「気合」で乗り越えようとする…
「集中力が足りない」
「もっと頑張らなければ」と自分を責める…
体力を温存する工夫はしても、
脳の消耗を管理する発想がない…
つまりは
「脳力の使い方」を設計していない!
このことが問題なのです。
あなたの歯科医院では、
この”脳力”をどのように使っているでしょうか?
朝から晩まで、同じ強度で脳を酷使していませんか?
脳の使い方を最適化するだけで、
診療の質も、経営判断の精度も、
驚くほど変わります。
本記事では、脳の限界を理解し、
その上で”脳力”を効率的に使うための
具体的な方法をお伝えします。
多くの歯科医院がまだ取り組んでいないこの手法は、
歯科医院の業務効率と判断の質を同時に高めることで
あなたの診療と経営を根本から変える可能性があります。
多くの歯科医院の現状
診療現場に潜む”脳力”の無駄遣い
先生の歯科医院の1日を 振り返ってみてください。
あなたの歯科医院の現場で”脳力”は
どのように使用されているのでしょうか?
多くの院長先生が気づいていない、
典型的な場面を見てみましょう。
初診カウンセリング
午前中のあなたは患者の話を丁寧に聞き、
症状の原因を分かりやすく説明し、
複数の治療選択肢を論理的に提示できます。
患者の表情を読み取り、
不安に寄り添った言葉も選べる。
しかし午後4時を過ぎると、どうでしょう?
同じ説明をしているはずなのに、言葉が機械的になる…
患者の細かな反応を見逃し、
「何か質問はありますか?」
という問いかけも省略してしまう…
これは”脳力”の枯渇が原因です。
自由診療の説明
午前中なら
患者の生括環境に合わせた提案ができるのに、
夕方になると「この治療がお勧めです」
という一方的な説明になってしまう…
客観的に確認してみてください。
自由診療の成約率が、午前と午後で
有意に差がありませんか?
その原因の全てが
”脳力”の枯渇であるとは言いませんが、
少なく要因の1つとなっているのは間違いありません。
さまざまな判断の先送り
さらに深刻なのがこれです。
「あのスタッフの勤務態度について話し合うべきだ」
午前中は明確に思いついた課題を、
「後で考えよう」と先送りにしてしまう…
全く無自覚で行われことが多いので
気づかないまま、放置されることも多いのですが、
脳が疲れると、人は判断を避けるようになります。
その結果、重要な経営判断が常に後回しになり、
問題が大きくなってから対処する羽目になったりします。
あなたの歯科医院でも、
こうした”脳力の無駄遣い”が起きていませんか?
どこに”脳力”を使うべきか
ここで考えてほしいのは、
先生が「最も脳力を使うべき仕事」は何か?
についてです。
自由診療のカウンセリング、 新しい治療メニューの構想、
スタッフの採用面接や評価面談、 医院の経営数値を見ての戦略立案…
これらはすべて複雑な思考と 繊細な判断を必要とする仕事です。
ところが現実はどうでしょう。
カウンセリングが夕方に集中していたり、
経営のことを考えるのは 診療後の
クタクタの時間帯だったりしていませんか。
脳力が残り少ない状態で最も重要な判断をしている。
これでは成約率が上がらないのも、
経営改善が進まないのも当然です。
理想は明快です。
負荷の大きい仕事ほど、 脳力が潤沢な午前中に配置する。
レセプト確認や在庫チェックなど定型的な作業は午後に回す。
たったこれだけの並べ替えで、
同じ先生が、同じ時間を使って、
判断の質を上げることができます。
しかし、業務の並べ替えだけでは
根本的な解決にはなりません。なぜなら、
消耗する脳力の総量は変わっていないからです。
チェックリストが”脳力”を温存する
そこで活用したいのが、 脳力そのものを節約するツール
――チェックリストです。
チェックリストと聞くと、多くの院長先生が
「そんな単純なものが?」と軽視します。
「忘れ物防止のツール」という イメージが強いかもしれません。
もちろんそれも正しい。 しかし本質はもっと深いところにあります。
チェックリストは、 脳が毎回ゼロから考える負担や
記憶と確認の負担を肩代わりしてくれるツールなのです。
たとえば、朝の診療準備。
ユニットの点検、器具の滅菌確認、 薬剤の在庫チェック…
毎日やっていることなのに、 脳は毎回
「次は何だっけ」と 判断のエネルギーを使っています。
これをリスト化して順番に並べるだけで、
「何をするか考えて確認する」という脳の負担が消えます。
たとえば、初診患者への説明。
チェックリストがない状態では、あなたの脳はこう働きます。
「治療費の概算を伝えたか?」
「次回予約の説明をしたか?」
これらを頭の中で思い出しながら、漏れがないか確認しています。
たった3項目でも、脳はかなりのエネルギーを消費します。
さらに厄介なのが、「確認し忘れていないか」という不安です。
説明後も、「あれ、保険適用の範囲について言ったっけ?」
という心配が頭に残り、次の患者への集中力を削ぎます。
チェックリストがあれば、
この脳の負担は消えます。
紙やタブレットに書かれた項目を見て、チェックするだけ。
記憶を探る必要もなく、不安を抱える必要もない。
保険請求でも同様です。
「あの処置、請求コードを間違えていないか?」
「算定要件を満たしているか?」
毎月レセプト業務で感じる不安は、大量の”脳力”を消費しています。
チェックリストがあれば、確認項目を機械的に処理できます。
ミスも減り、精神的な負担も激減します。
つまり、チェックリストは
あなたの”脳力”の一部を外部化するツールなのです。
そして浮いた脳力、肩代わりされた分のエネルギーを、
患者との対話や症状の診断など、より創造的な仕事や
重要な判断に回せるようになるわけです。
結果として、診療・経営全体の質が向上します。
チェックリストは脳の負担を劇的に減らす
科学的根拠のある手法なのです。
チェックリストなんて…
ここまで読んで、こう思った先生もいるかもしれません。
「チェックリストなんて、当たり前すぎる話じゃないか」と。
実際、多くの歯科医院では体力的に楽をする工夫は進んでいます。
チェアの高さを調整し、器具の配置を最適化し、スタッフの動線を見直す。
こうした「身体の負担を減らす改善」は、ごく自然に行われています。
しかし、“脳力”的に楽をする観点での業務改善はどうでしょうか?
ほとんどの歯科医院で、まだ手つかずのままです。
その理由は、「頭を使うのが仕事だ」という思い込みにあります。
「歯科医師なんだから、全部覚えているのが当然」
「チェックリストに頼るのは、プロとして甘えではないか」
こうした考えが、”脳力”の無駄遣いを正当化してしまう。
でも、考えてみてください。
外科医は手術前に必ずチェックリストを使います。
パイロットも離陸前に確認項目を読み上げます。
彼らは能力が低いからそうしているのでしょうか?
違います。限られた”脳力”を、
本当に重要な判断に集中させるためです。
あなたの歯科医院でも、同じ発想が必要です。
記憶と確認に”脳力”を浪費するのではなく、
患者への最適な治療提案、スタッフの育成、経営戦略の立案に
エネルギーを注ぐべきではないでしょうか。
即効性を期待するなら…
歯科医院で即効性が高いのは、 次の3つの領域です。
① 診療開始前・終了後のルーティン
準備と片付けの手順をリスト化する。
スタッフも「次に何をすべきか」を自分で判断しなくて済むので、
先生への確認や質問が減ります。
先生の脳力だけでなくスタッフの脳力も節約できる領域です。
② 自由診療カウンセリングの流れ
説明の順序、確認すべき項目、 提示する資料の種類…
これらをチェックリスト化しておけば、
説明の抜け漏れが防げるだけでなく、
話の組み立てに脳力を使わずに済みます。
その分、患者の表情や反応を
観察する余裕が生まれます。
結果として成約率にも好影響が及びます。
③ 月次の経営チェック
レセプト枚数、自費率、キャンセル率、 リコール率など、
「今月は何を確認しよう」と 毎回考えるのではなく、
決まった項目を決まった順に見る。
これだけで経営の定点観測が習慣化し、
異変の早期発見にもつながります。
共通するポイントは1つ。
「毎回同じ判断をしている仕事」を
リストに置き換えるということです。
判断の回数が減れば、
脳力の消耗は確実に抑えられます。
“脳力”温存の第一歩
ここまで、脳には体力と同じように限界があること、
能力の消耗が著しい仕事ほど午前中、早い時間帯にすること、
そしてチェックリストが脳力の負担を
肩代わりしてくれることをお伝えしました。
診療の質を保ち、経営判断の精度を高めるには、
“脳力”をどう使うかという視点が不可欠です。
記憶や確認に浪費するのではなく、
本当に重要な思考に集中できる環境を作る。
その第一歩が、チェックリストの導入です。
「何から始めればいいか分からない」という先生は、
まず1つだけチェックリストを作ってみてください。
お勧めは、繰り返しミスが起きている業務か、
毎回不安になる業務です。
初診患者への説明で伝え忘れが多いなら、説明項目のリスト。
保険請求で算定漏れが心配なら、確認項目のリスト。
スタッフへの指示が曖昧になりがちなら、業務の手順リスト。
たった5項目でも構いません。
紙に書いて、診療中に確認するだけ。
それだけで、あなたの脳が楽になることを実感できるはずです。
そして、その浮いた”脳力”を
患者との対話や、重要な経営判断に振り向けてください。
診療の質も、経営の成果も、確実に変わります。
脳の疲れという視点で、
まずは1つの業務を見直してみませんか?









