とにかく前へ!で海峡を泳ぐ?
1987年、一人のアメリカ人女性が太平洋に飛び込んだ。
目指したのは、ベーリング海峡の対岸。
約4キロ、水温は2℃に満たない極寒の海だった。
彼女の名はリン・コックス。
当時の常識では「人間が泳いで渡れる海域ではない」とされていた。
それでも彼女は、周到な準備と科学的な体調管理を重ねた上で、
2時間6分で泳ぎ切った。
このエピソードで注目したいのは、
「挑戦した」という事実ではなく、
「挑戦する前に何をしたか」という点です。
「とにかく行動」の嘘?
セミナーや勉強会で、よく聞かれる質問です。
その答えとして、多くの講師がこう言います。
「とにかく行動する人ですよ」 と。
行動しない人は、どれだけ実績があっても、
どれだけ知識を蓄えても、満足できる成果は出せない。
「もっと患者が増えて余裕ができてから」
「気持ちが前向きになったら」
そう言っている間は、「いつか」は永遠に来ない…
確かに、否定はできません。真実を含んでいます。
ですが、こういった言葉を聞かされ続けて、
内心、少し辟易していませんか?
「成功するまで行動を続ければ、必ず成功する」
この手の言葉も同じです。
真実を含んではいるんですが、
額面通りに受け取って突き進んだ結果、
医院の経営をさらに悪化させてしまう先生だって、実在します。
挑戦を続けられるだけの体力が残っているならまだしも、
そうでないところまで堕ちてしまうと、取り返しがつきません。
私自身、この「行動論」にモヤモヤしていました。
ところが、200を超える医院のコンサルを通じて、
「行動」という言葉の本当の意味が見えてきたのです。
「行動するだけ」では成果が出ない?
「行動すれば成果が出る」
この言葉、半分は正しく、半分は危険です。
なぜなら、行動には「勝ち筋のある行動」と
「勝ち筋の薄い行動」が存在するからです。
そして、世の中で語られる成功法則の多くは、
この2つを区別せずに「とにかく動け」と言っているのです。
考えてみてください。
新規患者が欲しいからといって、
高額な広告媒体に手当たり次第出稿する…
自由診療の成約率を上げたいからといって、
学んだトークスクリプトを患者の話も聞かずに展開する…
スタッフが定着しないからといって、
給与や福利厚生だけを次々と変えていく…
これらは「行動」ではあります。
ですが、勝ち筋を見極めずに
動いているだけだということです。
医院の体力が削られる!
ここで重要なのは、歯科医院経営における「行動」は、
ほぼ例外なくあなたの資金・時間・スタッフの労力を
消費するという事実です。
つまり、勝ち筋の薄い行動を選んでしまうと、
成果が出ないだけでなく、
次の挑戦をする余力まで失うことになります。
月商300万円前後の歯科医院で、
広告費に毎月数十万円を投下し続けて
それを回収できなかったら、どうなりますか?
スタッフに無理な業務改革を強いて、
結果として古参の歯科衛生士が
辞めてしまったら、どうなりますか?
「行動した」という事実だけは残りますが、
医院は確実に弱っていくのです。
巷で言われる「とにかく行動」という言葉が危ういのは、
この「行動の質」への視点が
完全に抜け落ちている点にあります。
行動を始めること、
続けることが大事なのは真実です。
ただし、選ぶべきは
「勝ち筋が十分に期待できる行動」
でなければなりません。
ここを外すと、
努力すればするほど苦しくなります。
多少のレベルが上がっても、
院長先生が意図していた状況や
目指していた環境とは
だいぶズレた成果が訪れるだけです。
勝ち筋を見抜く!
では、どうすれば
「勝ち筋のある行動」を選べるのでしょうか?
答えはシンプルです。
「選択肢の量」と「状況を読む精度」、
この2つの軸で決まります。
そもそも、ある行動が勝ち筋になるかどうかは、
医院の立地、患者層、スタッフの構成、診療スタイル、財務状況…
こうした要素によって大きく変わります。
A医院で成功した施策が、B医院で同じように機能するとは限らない。
だからこそ、この2つの軸が決定的に重要なのです。
軸1:選択肢の「量」を増やす
勝ち筋のある行動を選ぶには、そもそも
「行動の選択肢」を多く持っていることが前提です。
選択肢が1つしかなければ、
それが勝ち筋であろうとなかろうと、
先生はそれをやるしかありません。
新規患者を増やす施策、
自由診療の成約率を上げる手法、
リコール率を高める仕組み、
スタッフを定着させる組織づくり…
これらの引き出しが、経営とマーケティングの
知識量・質・深さに比例して増えていくものなのです。
臨床のセミナーには熱心に通う先生も、
経営の学びには手薄になっています。
まぁ、臨床系のセミナーの開催数に比べて
経営系のセミナーの開催数が
圧倒的に少ないのも事実ですが…
結果、技術が高くても、経営の選択肢が乏しいと、
結局「広告を増やす」「値下げする」といった
勝ち筋の薄い選択に流れがちです。
軸2:自院の状況を「読む」精度を上げる
もう1つの軸は、自院の状況を的確に読み解く力です。
これは歯科診療と、ある意味、全く同じです。
たとえば、知覚過敏を訴える患者に対して、
問診・視診・打診・冷温水痛診査・歯髄電気診などを
駆使して鑑別診断をしますよね。
知識が深く、引き出しが多い先生ほど、
適切な検査を選び、正確に病態を見極められます。
経営も同じです。
「患者数が伸びない」という同じ症状でも、
原因は医院ごとに違うのです。
立地の問題なのか、ホームページの問題なのか、
初診時のカウンセリングの問題なのか、
リコール導線の問題なのか…
ここを正確に読めなければ、
どれだけ行動しても見当違いの努力になってしまいます。
この2つの軸が揃ったとき、初めて先生は
ローリスクで期待値の高い施策から着手できます。
そして、上手くいかなければ次の選択肢へと、
冷静に行動を継続できるのです。
これこそが、
「行動し続けることが成功の要」
という言葉の本当の意味です。
「選択肢」を増やすことから
ここまでお伝えしてきた内容を整理します。
「とにかく行動すれば成果が出る」
という言葉は、半分しか正しくありません。
本当に必要なのは「勝ち筋のある行動」を
選び抜いて実施することです。
そして、その勝ち筋を見抜く力は、
「選択肢の量」と「自院の状況を読む精度」
この2つの軸で決まります。
どちらも、経営とマーケティングの知識を
質・量・深さの三方向で蓄えることでしか身につきません。
臨床の腕を磨き続けてきた先生だからこそ、
今度はその同じ熱量を、
経営の学びにもちょっぴり向けてみてください。
そこで、今日から実践できる最初の小さな1歩をご提案します。
先生の歯科医院がいま抱えている課題を1つだけ選び、
それに対する打ち手を、最低3つ紙に書き出してみてください。
「新規患者が増えない」でも構いません。
「自由診療の成約率が上がらない」でも構いません。
3つ書き出せたなら、選択肢が3つあるということ。
1つしか出てこなければ、それが先生の現在地です。
書き出す行為そのものが、
勝ち筋を見抜く目を養う第一歩になります。
迷わず前に進むために、
まずはここから始めてみませんか?
※本記事の成果事例は、実行状況や各医院の環境により異なります。
※掲載内容は医療広告ガイドラインを遵守した範囲で記載しています。



