先生、毎日の診療、本当にお疲れ様です。
こんにちは、株式会社120パーセント代表、
ニッチな自由診療でも「先生のその治療が受けたい!」患者が集まる歯科医院構築、
クリニックの経営アドバイザーで歯科医師の 近 義武 です。
患者の「本当の幸せ」を考えたことはありますか?
先日、電車の中で考えさせられる光景を目にしました。
小学生の男の子が母親に
「ゲームを買って欲しい」と何度もねだっていたのです。
母親は困った顔をしながら
「今度のテストで良い点を取ったらね」と答えていました。
男の子は不満そうでしたが、
その時の母親の表情に私は深く考えさせられたのです。
もしもその母親が
「わかった、買ってあげる」と即座に答えていたら?
男の子は一時的には喜ぶでしょう。
でも、それが本当に子どもの幸せにつながるでしょうか。
歯科医院での患者との関係も、実はこれと全く同じです。
あなたは日々、患者から様々な要望を受けているはずです。
「できるだけ安く済ませたい」
「時間をかけたくない」
こうした患者の希望に対して、
あなたはどのように応えていますか?
患者が望むことをそのまま叶えることは
本当に患者のためになるのでしょうか?
私は200以上の歯科医院の経営改善をお手伝いしてきましたが、
成功している歯科医院には、ある共通点があります。
それは「患者の本当の幸せ」を考えて
行動しているということです。
患者の決定権を尊重することは大切です。
しかし、専門家である歯科医師として
果たすべき役割があることも事実。
今日は、この微妙で重要なバランスについて
一緒に考えてみましょう。
「患者が決める」だけでは不十分な理由
「患者の気持ちを最優先に」
この考え方は確かに大切です。
でも、ちょっと待ってください。
患者が下す判断が必ずしも最善とは限らない…
のではないでしょうか?
たとえば、こんなケースを想像してみてください。
「歯を抜くのは絶対に嫌だ。薬だけで何とかしてほしい」
と強く希望しています。
あなたはその要望にそのまま応えますか?
専門家として見れば、その歯を残すことで
隣接する健全歯まで危険にさらす可能性が高い…
患者の希望を叶えることが、かえって患者を不幸にしてしまう
典型的な例です。
また、別のケースでは「とにかく安い治療を」
と希望する患者に対して、保険診療だけを提案したとします。
数年後、その治療の予後があまり良くなく、
結果的により高額な再治療が必要になったら?
患者は言うでしょう。
「なぜもっと良い治療法を教えてくれなかったのか」と。
患者は医療の専門家ではありません。
限られた情報の中で判断を下そうとしている患者に対して、
私たちが持つ専門知識と経験を提供しないことの方が
よほど無責任だと思いませんか?
「患者が決めたことだから」という理由で、
専門家としての責任を放棄してはいけないのです。
専門家として「導く」ことの真の意味
では、私たち歯科医師は患者に対して
どのようなスタンスを取るべきでしょうか?
答えは明確です。
患者が最適な判断を下せるよう導くことこそが
私たちの役割なのです。
具体例でお話ししましょう。
右下5番、6番のみが欠損の60代の患者に対して、
ブリッジ、部分床義歯、インプラントを
治療選択肢としてあなたが提示するとします。
「一番安い部分床義歯でお願いします」と
患者が言った時、あなたはどうしますか?
多くの歯科医師が「患者がそう希望するなら」
と部分床義歯治療を進めてしまいます。
でも、ちょっと待ってください。
本当にそれで良いのでしょうか?
もしもあなたが専門家として
「この患者にはインプラントが最も適している」
と判断したなら、その理由を丁寧に説明すべきでしょう。
しっかり噛めるのでお食事も今まで通り楽しめます。
メンテナンスを続ければ、長期使用が期待できます。
実は最も経済的な選択肢かもしれませんよ」
このような説明をした上で、
最終的な判断は患者に委ねる…
これが真の意味での「患者中心の医療」ではないでしょうか。
重要なのは、患者に選択肢を丸投げすることではなく、
十分な情報提供をした上で、患者が納得して
選択できる環境を作ることなのです。
「先生がそこまで説明してくれるなら
インプラントを検討してみます」
こう言ってくれる患者は決して少なくありません。
逆に、十分な説明なしに患者の最初の希望だけに従って
後々トラブルになる可能性も高いのです。
あなたの専門知識は患者の人生を左右する貴重な財産です。
その財産を患者のために惜しみなく提供することこそが、
真のプロフェッショナルと言えるでしょう。
あなたの歯科医院で今日から実践できること
冒頭でお話しした電車の中の母子のエピソードを
もう一度思い出してください。
あの母親が素晴らしかったのは、
子どもの要求をただ聞くのではなく、
子どもの将来を考えて判断していたことです。
歯科医師であるあなたも全く同じ立場にいます。
患者の「今の希望」だけでなく、「将来の幸せ」を
考えて行動することができる唯一の存在なのです。
では、明日からの診療で
具体的に何を変えれば良いでしょうか?
まずは、説明の仕方を変えてみましょう。
「どちらがご希望ですか?」ではなく、
「私が〇〇さんの立場でしたら、この治療を選びます。
その理由は…」から始めてください。
次に、時間をかけることを恐れないでください。
十分な説明は決して時間の無駄ではありません。
患者が納得して治療を受けることで、
結果的にトラブルは減り、満足度は大幅に向上します。
そして最も大切なこと。
あなたの専門知識にもっと自信を持ってください。
長年の経験と学習で培った知識は、患者にとって
何よりも価値のある財産なのです。
その財産を出し惜しみすることは、
患者に対する不誠実とも言えるでしょう。
でも、その前に十分な情報を提供する。
この順番を間違えないことが、あなたの歯科医院を
真に患者から信頼される歯科医院に変えていきます。
今日から始めてみませんか?
患者の反応が変わったことを実感できるはずです。