差別化の発見
有名な事例の1つなので、
あなたもどこかで耳にしたことがあるかもしれません。
1980年代、アメリカの宅配ピザ市場は
「おいしさ」「価格」「具材の豊富さ」など
同質的な競争を繰り広げていました。
どのチェーンも同じようなセールスポイントで宣伝し、
価格競争に陥っていたのです。
そんな中、ある宅配ピザチェーンが
大胆な発想の転換を行いました。
そのピザチェーンは「ピザの品質」ではなく
「配達の時間」にフォーカスしたのです。
当時、宅配ピザは注文してから届くまでの時間が不確実で、
顧客の大きな不満となっていました。
ピザチェーンの営業担当者は市場調査を重ね、
「空腹時の30分の待ち時間」が
顧客にとって最大のストレスだと気づいたのです。
そこで「30分以内にお届けできなければピザ代金は無料」
という画期的な保証制度を導入しました。
一見するとリスクの高い戦略ですが、
社内の配達システムを徹底的に見直し、
この約束を実現できる体制を構築したのです。
このメッセージは市場に衝撃を与えました。
「おいしさ」という主観的な価値ではなく
「時間」という明確で測定可能な価値を前面に押し出したからです。
テレビCMでは「30分以内にお届け」という
キャッチフレーズと、デジタルタイマーの
カウントダウンが強烈な印象を残しました。
この差別化戦略により、そのピザチェーンは短期間で
業界2位から堂々の1位へと躍り出たのです。
他社が見落としていた「時間の価値」に着目することで、
市場のルールを書き換えてしまったのです。
歯科医院経営にも同じ発想が必要です
このピザチェーンの事例は
歯科医院経営にも大いに当てはまると思いませんか?
多くの歯科医院が
「痛くない治療」「丁寧な対応」「最新設備」といった
同じようなキャッチフレーズで患者獲得を競っています。
しかし、これらのメッセージは
どの歯科医院も発信しているため差別化になっていないのです。
あなたの歯科医院には、他院には存在しない価値、
他院が気づいていない価値が必ず眠っているはずです。
例えば、私がコンサルティングした歯科医院の
ある院長先生は、診療時間に悩んでいました。
「夜8時まで診療しているが、近くに同じような診療時間の
歯科医院が存在するので差別化にならん」と言うのです。
そこで私は「患者に来院理由を聞いてみては?」と提案しました。
すると意外なことに、患者は「8時までの診療時間」ではなく
「予約時間の正確さ」を高く評価していたのです。
この歯科医院では、予約時間から5分以上ずれることがほとんどなく、
患者の待ち時間ストレスが極めて少なかったのです。
院長先生は「時間を守る歯科医院」として
そのメッセージを前面に打ち出しました。
チラシやホームページには
「予約時間プラスマイナス5分の約束」というキャッチコピーを掲げ、
「お忙しい方の時間を大切にします」と訴求したのです。
その結果、特に平日忙しいビジネスパーソンの患者が増加し、
半年で月の新患数が17人から32人へと増加しました。
これはピザチェーンのケースと同じです。
競合が注目していない価値を見つけ出し、
それを明確に伝えることで差別化に成功したのです。
もう一つ例を挙げましょう。
東京都内のある歯科医院では「痛みに配慮した治療」という
ありきたりなメッセージを発信していました。
しかし、患者アンケートを分析するとここの院長先生は
「治療の選択肢を丁寧に説明してくれるう点で高評価を得ていました。
そこで「3つの治療法から選べる歯科医院」というコンセプトに変更。
「どんな症例でも最低3つの治療オプションとその特徴を説明します」
と宣言したのです。
患者が主体的に治療法を選べるという価値を前面に押し出した結果、
自由診療の受診率が1.7倍に増加したのです。
あなたの歯科医院にも、このような「隠れた価値」があるはずです。
あなたの歯科医院の「隠れた強み」を見つける方法
では、あなたの歯科医院の隠れた強みを見つけるには
どうすればよいでしょうか?
具体的な3つの方法をお伝えします。
1. 患者アンケートの徹底分析
まず、患者アンケートを実施して分析することです。
このとき重要なのは、
という定型的な質問だけではなく、
という比較を促す質問も加えることです。
患者は意外な点に価値を感じていることが多いのです。
2. スタッフミーティングの活用
次に、スタッフミーティングで
「患者から最近受けた感謝や褒め言葉は何か?」を
共有する時間を設けましょう。
受付や歯科衛生士は
院長が気づいていない患者の声を聞いていることがあります。
3. 診療プロセスの可視化
最後に、あなたの診療の全プロセスを書き出して
一つひとつの工程を見直しましょう。
例えば
「治療後の確認電話を必ずする」
など、あなたとあなたの歯科医院が当たり前にしていることが
実は他院では行っていない差別化ポイントかもしれません。
これらの方法で見つけた強みは、
必ず数値やエピソードと共に具体化することが重要です。
「丁寧な説明」ではなく
「一人の患者に平均25分の説明時間を確保」
というように、客観的な表現に変換するのです。
今日から始める差別化戦略
冒頭のピザチェーンも、先ほどご紹介した歯科医院も、
どちらも「当たり前の中に隠れた価値」を
見つけることで成功しました。
あなたの歯科医院も例外ではありません。
まずは今日から、次の3つのステップを実践しましょう。
ステップ1:1週間、患者の言葉を記録する
診療後に「良かった点」を必ず一人ひとりに聞き、
その言葉をそのまま記録します。
特に「他院との違い」について言及した言葉は重要です。
ステップ2:キーワードを抽出する
1週間分の記録から繰り返し出てくるキーワードや
意外な評価点を抽出します。
それがあなたの歯科医院の隠れた強みです。
ステップ3:メッセージを一本化する
見つけた強みを具体的な数字や事実と組み合わせて、
歯科医院の中心メッセージに据えましょう。
ホームページ、院内掲示、スタッフの説明内容まで、
すべてこのメッセージで一貫させることが重要です。
歯科医療の本質は変わりませんが、
その伝え方で患者の反応は大きく変わります。
あなたの歯科医院だけが持つ特別な価値を見つけ出し、
それを効果的に伝えることで、新たな患者層を開拓できるのです。
今日からぜひ、実践してみてください。