先日、コンビニで”あらためて思い知らされた”光景を目にしました。
レジ前で80歳を超えていそうなおばあちゃんが、
慣れた手つきでスマートフォンを操作して、
QRコード決済でお会計を済ませていたのです。
店員さんも自然に対応していて、もはや珍しい光景ではないのですね。
私の頭の中で、「お年寄りはネット系や機械操作に疎い」
という固定観念が音を立てて崩れました。
実際、総務省の調査によると、
70代のインターネット利用率は78.8%に達しています。
80代でも57.5%の方がネットを活用しているのです。
でも、ちょっと待ってください。
歯科医院の集患戦略を考える時、
あなたはどんな患者層をイメージしていますか?
そんな風に考えて、ホームページの更新を怠ったり、
SNSでの情報発信を諦めたりしていませんか?
実は、これこそが大きな機会損失なのです。
とはいえ、今回私から言いたいことは
「だから、高齢者向けのネット集患にもがんばりましょう」
という単純な話ではないのです。
なぜなら、治療を受ける患者本人と、
その治療を「決める人」は必ずしも同じではないからです。
見えない”決定権者”
90歳のおじいちゃんが歯科医院を選ぶ時、
同居している息子の嫁がネットで歯科医院を検索して、
「ここが良さそうよ」と提案しているかもしれません。
小学生の矯正治療を検討する時、
最終的に決定権を持つのは、スマホを使いこなすお母さんです。
つまり、患者本人ではなく、
「見えない決定権者」にリーチすることが、
現代の集患戦略では極めて重要になっているのです。
見えない決定権者を見つける集患戦略
歯科医院経営で見落としがちなのが、
この「見えない決定権者」の存在です。
例えば、入れ歯で困っている70代の患者が来院したとします。
あなたは丁寧に説明し、インプラント治療を提案しました。
しかし、なかなか治療に踏み切ってもらえない…
「費用が高いから仕方ないか…」と諦めていませんか?
実は、その患者は帰宅後、同居している息子の嫁に
こう相談しているかもしれません。
「先生がインプラントを勧めてきたけど、どうしよう?」
その瞬間、治療の決定権は息子の嫁に移っているのです。
彼女は真夜中にスマホで検索します。
「入れ歯 インプラント どっち」
そして、あなたの歯科医院のホームページもチェックします。
ここで重要なのは、患者本人向けの情報だけでなく、
家族向けの情報も充実させているかどうか、です。
この時「ご家族の方へ」というページを作って、
以下のような内容が掲載されていたらどうでしょう。
・高齢者のインプラント治療の安全性について
・治療期間中の家族のサポート方法
・費用の分割払いや保険適用の詳細
・他の患者家族の体験談
このような記事が存在するだけで、
家族の気持ちはある程度整理がつくのではないでしょうか。
さらに、ブログやSNSでは
「娘さんから相談されたお母様の入れ歯治療について」というような
家族向けの記事が定期的に投稿されていたり、
「バリアフリーのこだわった理由」などの記事が散見されたらどうでしょう。
これらによって、「見えない決定権者の不安」を
多少なりとも和らげ、治療への理解を深めることが期待できます。
結果として、患者は家族の後押しを受けて
治療を決断しやすくなります。
小児矯正での『母親マーケティング』
小児矯正ほど、この「見えない決定権者」戦略が
威力を発揮する分野はありません。
治療を受けるのは子どもですが、
決定権を握っているのは間違いなく保護者、特に母親です。
私がコンサルティングしたある歯科医院では、
小児矯正の成約率が
30%から70%に跳ね上がりました。
何をしたかというと、子ども向けの説明よりも
“母親の感情に響く情報発信”に力を入れたのです。
具体的には、自医院のホームページ内のブログで
こんな投稿を始めました。
・矯正治療で変わったお子さんの笑顔と自信
・ママが知っておきたい小児矯正の3つのメリット
投稿には広告ガイドラインを遵守しつつ、
院長先生自身の小児矯正に関する”思い”を掲載します。
ビフォーアフターの写真を載せるのも悪くないのですが、
細則や要件、解釈などが変わると、その都度
関連記事の全てを見直す必要に迫られます。
その手間やリスク等を十分考慮の上、
結果について自己責任と認識の上で行なってください。
「ママ友からの口コミ」を意識した
コンテンツ作りも有効です。
・幼稚園の送迎時に話題になる歯並びの悩み3選
こうした投稿は、ママ友同士での情報共有を自然に促進します。
結果として、一人の患者獲得が複数の新患獲得につながる
「連鎖反応」を生み出すのです。
重要なのは、子どもの治療説明だけでなく、
”母親の不安や期待に寄り添うメッセージ”を継続発信することです。
財布の紐を握る人物を特定する3つの視点
では、具体的にどうやって
「見えない決定権者」を見つけ出せばいいのでしょうか?
それには3つの視点から考えてみ流ことがお勧めです。
視点1:年齢層別の決定権者パターン
・小児(3-12歳)→ 母親が90%
・中高生(13-18歳)→ 両親の合議
・成人(19-64歳)→ 本人+配偶者
・高齢者(65歳以上)→ 子ども世代
この基本パターンを踏まえて、
メッセージの向け先を調整してください。
視点2:治療費用による決定権の変化
・5万円未満 → 本人判断
・5-30万円 → 家族相談
・30万円以上 → 家族会議
高額治療ほど、複数の決定権者が
関与することを理解しましょう。
視点3:緊急度による影響力の違い
・緊急性が高い → 本人主導
・予防・美容系 → 家族の意見重視
インプラントや矯正などは特に家族の理解が重要です。
これらの視点を踏まえて、患者カルテに
「決定権者情報」の欄を設けることをお勧めします。
「誰と同居しているか」
「治療費について誰に相談するか」
この情報を把握することで、
より効果的な治療提案が可能になるのです。
隠れた決定権者にリーチする集患の新常識
「患者本人だけを見ていても集患は成功しない」
これが現代の歯科医院経営における新しい常識です。
治療を受ける人と、
その治療を決める人が異なるケースが増えている今、
見えない決定権者へのアプローチこそが集患の鍵なのです。
まずは今日から、以下の3つを実践してみてください。
2. 患者に「どなたと治療の相談されますか?」と質問してみる
3. SNS等の投稿に家族向けのメッセージを月2回以上盛り込む
小さな変化かもしれませんが、隠れた決定権者に届くメッセージが、
あなたの歯科医院への信頼と新患獲得につながっていきます。
患者の向こう側にいる人たちのことを意識しましょう。
そこに、新しい集患の可能性が広がっています。