先生、毎日の診療、本当にお疲れ様です。
こんにちは、株式会社120パーセント代表、
ニッチな自由診療でも「先生のその治療が受けたい!」患者が集まる歯科医院構築、
クリニックの経営アドバイザーで歯科医師の 近 義武 です。
あなたはふと我に返ったとき、
こんな思いが頭をよぎることはありませんか?
近隣の歯科医院よりも丁寧な治療をしている自負がある…
なのに、なぜか新患の数は伸び悩んでいる…
自由診療も、患者のための提案なのに、価値が伝わらない…
実はここには、真面目な歯科医師ほど陥りがちな”盲点”が存在します。
この記事ではその「盲点」を明らかにし、あなたの歯科医療が、
もっと多くの患者に届き、そして自然と「紹介の輪」が広がるための
具体的なヒントをお伝えします。
かくいう私も、かつては経営の壁にぶつかり、
試行錯誤を繰り返した一人の歯科医師です。
だからこそ、先生方が抱える悩みや課題を、
机上の空論ではなく、実体験として理解しています。
さあ、患者から真に選ばれる歯科医院へと進化するための、
最初のステップを一緒に踏み出しましょう。
口コミが生まれない「2つの壁」
さて、先生の素晴らしい歯科医療が、
なぜ思うように口コミや紹介に繋がらないのか。
その「盲点」について、もう少し深掘りしてみましょう。
実は患者が感動し、思わず誰かに伝えたくなるには、
単に「正しい治療」や「そつがない対応」だけでは、
もう一歩、いや半歩が足りない時代になっているのです。
では、その「半歩」とは一体何なのでしょうか?
たくさんの院長先生から相談を受けて気づいた「半歩」…
口コミが生まれない歯科医院には、
共通して”2つの見えない壁”が存在するということです。
一つは、患者が来院前に抱く「期待値のコントロール」という壁。
もう一つは、診療やサービスを通じて患者が得るべき、
「心を動かす感動」という壁です。
「なんだ、そんな当たり前のことか」と思われたでしょう。
しかし、この一見単純な2つの要素のバランスを、
多くの歯科医院が意識せずに崩してしまっているのです。
この「期待値」と「感動」が口コミ戦略において、
どんな意味を持つのか、どうすればバランスを取れるのか。
より具体的に、そして分かりやすく解説していきましょう。
第一の壁
無意識に上げている「期待値のハードル」
さて、一つ目の壁、「期待値のコントロール」についてです。
先生はご自身の歯科医院のホームページやパンフレット、
あるいは院内の掲示物などを、あえて患者の目線で
じっくりと見直したことはありますか?
「驚くほど痛くない、夢のような△△治療!」
「まるで高級ホテルのような、くつろぎのデンタル空間!」
もちろん、誇張した表現ですが、
先生の歯科医院が持つ素晴らしい強みを患者に伝えたい、
という気持ち滲み出ていることはお分かりかと思います。
しかし、こうした魅力的な言葉たちが時として、
患者の「期待のハードル」を知らず知らずのうちに、
ググッと引き上げてしまっている可能性があるのです。
たとえば、先生の歯科医院が最新鋭のセラミック治療システムを導入し、
「たった1日で、驚くほど自然で美しい白い歯が手に入ります!」
と大々的にアピールしたとしましょう。
それを見た患者は、「すごい!まるで魔法みたいだ!」
「私の歯もきっと完璧に、パッとキレイになるんだ!」
と、非常に高い期待を胸に来院される可能性が高まります。
しかし、実際の治療では、
歯の色彩や形状、咬合、発音など、考慮すべき点は多岐にわたります。
全てのケースで、患者が思い描いた通りの「完璧な結果」が、
文字通り「たった1日」で実現するとは限りませんよね?
ほんの少しでも患者のイメージと異なる仕上がりになったり、
思ったよりも調整に時間がかかったりした場合、
患者はどう感じるでしょうか。
「あれ?話が違うぞ…」
「期待していたほどではなかったな…」
そんな風に、内心がっかりしてしまうかもしれません。
これは、なにも特別な治療に限った話ではないのです。
スタッフが患者を励ますつもりで、
「大丈夫ですよ、今回の治療ならすぐに痛みも引いて、
明日には美味しいものが食べられますよ!」
と、声をかけてしまうことも、あり得ないとは言い切れません。
もし、治療後の痛みが予想より少し長引いたり、
食事に気を使う期間が数日続いたりしたら…。
患者は、「あの言葉は何だったんだ?」と、
小さな不信感を覚えてしまうかもしれないのです。
つまり、良かれと思って発した言葉や、魅力的なPRが、
かえって患者の満足度を下げる要因になり得る、ということです。
満足度は、”事前の期待値”と”実際に得られた結果”の差分で決まるからです。
期待値が必要以上に高ければ、質の高い医療を提供しても、
患者の評価は「まあ、こんなものか」となりがちです。
これでは、感動は生まれませんし、ましてや誰かに
紹介しようという気持ちにはならないでしょう。
ここで重要なのは、「期待値を上げ過ぎない」というのは、
「歯科医院の魅力を隠せ」という意味ではない、ということです。
そうではなく「正直に、誠実に伝える」ことが大切です。
その上でほんの少しだけ、患者の期待を上回る”何か”を提供できれば、
それがポジティブな驚きとなり、深い満足感へと繋がるのです。
先生の歯科医院は、無意識のうちに
「期待値のハードル」を上げすぎてはいませんか?
一度、立ち止まって考えてみてください。
第二の壁
「やって当たり前」の罠と「記憶に残る体験」
さて、一つ目の「期待値のハードル」をクリアしても、
それだけでは、口コミには、なかなか至りません。
ここには、もう一つの大きな壁が存在します。
「やって当たり前」の罠と「記憶に残る体験」の欠如です。
あなたはきっと、日頃から患者一人ひとりに対し、
丁寧な言葉遣いを心がけ、分かりやすい説明を徹底し、
そして質の高い歯科医療を提供されていることでしょう。
院内の清掃にも気を配り、患者がリラックスできる
空間づくりにも努めているはずです。
しかし、今の時代の患者にとって、これらはもはや
”特別に素晴らしいサービス”ではなくなってきているのです。
むしろ、「歯科医院なら、それくらいはやって当然」
という認識が広まっていると言っても過言ではありません。
「歯の痛みが取れた」「丁寧な説明でよく理解できた」
「院内が清潔で気持ちよかった」『時間通りの治療だった」
これらは患者にとって、もちろん非常に重要なことです。
しかし、これらは多くの場合「期待通り」の範囲内。
つまり、「不満はない」状態ではあっても、
心が震えるような「感動」には、そうそう繋がらないのです。
人が誰かに強く伝えたくなるのは、その「感動」があった時。
期待をほんの少しでも、心地よく上回る”何か”に触れた時なのです。
治療が上手い、説明が丁寧、院内が清潔、時間通り…
これらは、いわばプロとして「当たり前」の領域。
もちろん、その質を追求し続けることは大前提です。
しかし、口コミや紹介を自然な形で増やしていくためには、
この「当たり前」のレベルをもう一段階、
いや、わずかでも良いから超える必要があるのです。
患者の記憶に、あなたの歯科医院が
「なんだか他とはちょっと違って良かったな」
という、ポジティブな「引っかかり」や「余韻」を残すこと。
これこそが、「記憶に残る体験」の本質なのです。
では、どうすればこの「やって当たり前」の壁を打ち破り、
患者の心に響く「記憶に残る体験」を
提供することができるのでしょうか?
期待を超える歯科医院にするには?
さあ、いよいよ核心に迫りましょう。
どうすれば患者の「期待」を心地よく上回り、
「感動」という忘れられない記憶を刻むことができるのか?
その答えは、決して大掛かりな設備投資や、
高級ホテルのような完璧な接遇マニュアルを
導入することにあるわけではありません。
もちろん、それらが無意味だと言うつもりはありませんが、
もっと手軽に、そして効果的に患者の心を掴む方法があるのです。
実は、患者の心を動かすのは、日常に潜んでいる、
ほんの些細な「一手間」「心配り」だったりするのです。
たとえば、患者が来院したとき、受付が事務的に
「〇〇さん、こんにちは。診察券をお願いします」と言う。
「〇〇さん、こんにちは! 日差しが強い中、ありがとうございます。
待合室で少し涼んでいってくださいね」と笑顔で語りかける。
患者が受ける印象は、少し変わると思いませんか?
待合室の環境も、工夫次第で変わります。
いつも同じでは患者は何も感じません。少し寂しいですよね。
季節ごとに院内のちょっとした飾り付けを変えて、
ささやかな季節感を演出する…
小さな工夫の積み重ねが
患者とのコミュニケーションのきっかけにもなり、
歯科医院やスタッフとの心理的距離が縮まります。
診療室内でも治療前、あるいは治療の合間に、
先生やスタッフからかけられる言葉一つで、
患者の緊張は大きく和らぐものです。
「今日の治療は、まず〇〇という処置から行いますね。
少しお口を開けていただく時間が長くなるかもしれませんが、
しんどくなったら遠慮なく手を上げてください」
「今、全体の工程の半分くらいまで進みましたよ。
あと〇〇分ほどで終わる見込みです」
このように、具体的な状況や見通しを伝えるだけでも、
患者は先の見えない不安から解放されるのです。
また、治療器具の受け渡しやバキューム操作など、
何気ない動作一つひとつにも、
患者への配慮を込めることができます。
器具同士がぶつかる金属音を極力立てないようにする。
患者さんの顔に水しぶきが飛ばないように、
バキュームの角度を細やかに調整する。
こうした”気付かれないかもしれない部分での配慮”こそ、
プロフェッショナルとしての真価が問われるところであり、
患者の潜在的な信頼感を高める重要な要素です。
そこには「患者に喜んでもらいたい」
「少しでも安心してもらいたい」という、
スタッフの温かい気持ちが込められています。
こうした取り組みは、患者だけでなく、
スタッフ自身のモチベーションアップにも繋がるのです。
これらの「一手間」は、決して難しいことではありません。
そして、その多くは、ほとんどコストをかけることなく、
今日からでも始めることができるはずです。
ここで最も重要なのは、
「患者は、何をされたら嬉しいだろうか?」
「どうすれば、もっと快適に過ごしていただけるだろうか?」と、
常に患者の立場で考え、想像力を豊かに働かせること。
そして、それをスタッフ全員で共有し、歯科医院の中で
楽しみながら実践していく「風土」を育んでいくことです。
マニュアルに書かれた通りの、無機質な対応は誰にでもできます。
しかし、そこには心からの温かみは生まれにくい…
先生の歯科医院だからこそ提供できる、
血の通った「一手間」こそが、患者の心を掴み、
忘れられない感動体験を生み出すのです。
また来たい、誰かに伝えたい歯科医院へ
「良い治療をしているのに、なぜか患者の紹介が増えない…」
その長年の疑問に対する答えの輪郭が、
少しは見えてきたのではないでしょうか。
患者の心を動かし、
「この歯科医院になら、また来たい!」
「大切な人に、ここの歯科医院を教えてあげたい!」
そう思わせるコツは、決して難しいことではありません。
患者の「期待値」を不用意に上げすぎることなく、
ほんの少しだけ、その期待を超える”感動の一手間”を提供する。
この2つのバランスを、日々の院内ルーティンの中で
意識的・意図的にコントロールしていくこと。
これこそが、口コミが自然と生まれる歯科医院づくりの
基本的な考え方なのです。
そして、その”感動の一手間”は、高価な設備や
特別なイベントである必要はないのです。
受付での気持ちのこもった温かい一言、
待合室でのささやかな気配り、
診療中の不安を和らげる優しい声かけ、
治療後の丁寧なフォロー…
こうした、先生やスタッフ一人ひとりの
「患者を思う心」から生まれる、
ごく当たり前とも思える小さな行動の積み重ねこそが、
患者の記憶に残り、心を動かすのです。
まずは今日の診療からでも、
何か一つ「感動の一手間」を実践してみませんか?
そんなテーマで、一度スタッフの皆さんと
じっくり話し合ってみるのも良いでしょう。
小さな一歩かもしれませんが、その一歩が、
先生の歯科医院を「患者に心から選ばれる歯科医院」へと
変えていく大きな推進力になるのです。
先生の情熱と、その素晴らしい技術。
そして患者の健康を願う、その温かい気持ちがあれば、
必ず道は開けます。