私はコンサルタントという立場で
多くの院長先生と話しますので、
『あぁ、この先生もだなぁ…」と思うことがよくあります。
不思議と言えばとても不思議なのですが、
なぜ集患となると、途端に その視点を失うのでしょう?』
この現象は決して他人事の問題ではありません。
もしかするとあなたも同族かもしれませんし、
多くの歯科医院が同じ壁にぶつかっているのです。
実に多くの歯科医院で見られる課題の一つです。
なぜこのようなことが起こるのか?
その理由は単純です。
治療では「患者の痛みや不安」という
具体的な問題に向き合っています。
しかし集患となると、途端に「自分の医院」
「自分の技術」が中心になってしまうのです。
あなたの歯科医院のホームページや
チラシを見直してみてください。
こういったフレーズが並んでいませんか?
これらは確かに大切なことですが、
患者が本当に知りたいのは別のことかもしれません。
見た目を改善したい患者
長期的な口腔健康を望む患者
彼らがあなたの歯科医院に何を求めているか、
本当の意味で考えたことはありますか?
患者目線に立った集患戦略の本質
実は治療も集患も本質は同じです。
どちらも「相手の立場に立って、何ができるか」
という問いから始まります。
あなたは治療において、患者の状態を
細かく観察し、最適な治療方法を選びます。
痛みに敏感な患者には麻酔の工夫を。
不安が強い患者には丁寧な説明を。
つまり、患者の状態や気持ちに合わせた対応を
ごく自然にしているわけです。
これこそが本当の「患者目線」です。
集患も全く同じ考え方で成功させることができます。
マーケティングの世界では
「ペルソナ設定」と呼ばれる手法があります。
これは架空の理想的な患者像を
具体的に描き出す方法です。
例えば、「43歳女性、二人の子どもの母親、
歯の見た目に悩んでいる」といった具合です。
こうした具体的な患者像を思い浮かべると、
自然と「この人が何を求めているか」が見えてきます。
先日、あるクライアントの歯科医院で
大きな変化が起きました。
それまで「最新の審美治療」を前面に押し出していた
ホームページを全面的に見直したのです。
代わりに「笑顔に自信が持てる理由」という
切り口に変更しました。
すると驚くべきことに、問い合わせが
3倍に増えたのです。
なぜでしょうか?
それは、患者が欲しいのは
「審美治療」という手段ではなく
「自信を持って笑える」という結果・変化だからです。
このように、患者目線に立つということは
「患者が本当に得たい結果・変化」を理解することなのです。
患者が本当に求めていることを知る方法
では、患者が本当に求めていることを
どうやって知ればよいのでしょうか。
最も効果的な方法は、
「なぜ?」を5回繰り返すことです。
例えば、患者が
「インプラントについて知りたい」
と言ったとします。
なぜインプラントに興味があるのか?
「食事がしづらいから」
なぜ食事がしづらいのか?
「入れ歯が合わないから」
なぜ入れ歯の不具合を気にするのか?
「食事会で恥ずかしい思いをしたから」
なぜそれが恥ずかしいと感じるのか?
「周囲の目が気になるから」
なぜ周囲の目が気になるのか?
「自分に自信が持てないから」
こうして掘り下げていくと、
真のニーズが見えてきます。
この患者が求めているのは単なる「インプラント」ではなく
「自信を持って社交の場を楽しめること」なのです。
患者の言葉の奥にある本当の願いを聴き取る力が、
集患成功の鍵となります。
患者目線で改善すべき3つのポイント
患者目線で歯科医院を見直すとき、
特に重要な3つのポイントがあります。
1. 初回接触時の印象
患者があなたの歯科医院を知るきっかけは
ホームページやクチコミであることが多いでしょう。
ここで重要なのは「専門性の高さ」よりも
「不安を取り除く情報」です。
「費用はいくらくらいか」
「どれくらい時間がかかるか」
あなたからの情報発信の内容で
こうした情報が明確に患者に伝わってるでしょうか?
2. 予約・来院時の体験
電話での応対、待合室の雰囲気、スタッフの対応..
これらすべてが「患者体験」の一部です。
あなたは優れた治療を提供できるかもしれませんが、
患者は「総合的な体験」で医院を評価します。
予約から会計までの流れを、
実際に患者になったつもりで体験してみてください。
不安や疑問が生じる場面はありませんか?
3. フォローアップの質
治療後のケアや定期検診の案内は、
単なるリコール以上の意味を持ちます。
患者は「自分のことを覚えてくれている」という
安心感を求めています。
一人ひとりの患者の状況に合わせた
コミュニケーションができていますか?
これら3つのポイントを患者目線で見直すことで、
自然と次の一手が見えてくるはずです。
明日から実践できる患者目線の集患アプローチ
ここまで患者目線の重要性について
お話ししてきました。
では、明日から具体的に何をすれば
良いのでしょうか。
以下に、すぐに実践できる5つの
アクションプランをご紹介します。
1. 自院の「価値」を患者言葉で書き出す
専門用語や技術的な表現ではなく、
患者が得られる「結果」や「感情」で表現します。
例えば「最新のCAD/CAMシステム導入」ではなく
「わずか1回の来院で美しい歯を手に入れられる」
という表現です。
これを院内の全スタッフで共有してください。
2. 患者の声を集める仕組みを作る
アンケートだけでなく、日常的な会話から
患者の本音を引き出す習慣をつけましょう。
「今日の治療はいかがでしたか?」だけでなく
「何か不安なことはありますか?」と
一歩踏み込んだ質問をしてみてください。
これらの声を毎週のミーティングで
共有する時間を設けましょう。
3. ホームページの見直し
あなたの歯科医院のホームページを開き、
以下の質問に答えてみてください。
・患者の悩みが具体的に書かれているか?
・解決策と期待できる結果が明確か?
・初診の流れがわかりやすく説明されているか?
・費用の目安が示されているか?
これらが不十分であれば、すぐに改善する価値があります。
4. 予約システムの患者目線チェック
客観的に評価してみましょう。
電話以外の予約方法はあるか?
診療時間外の問い合わせに対応できるか?
急患への対応ルールは明確か?
これらを改善するだけで、患者の
ストレスを大きく減らすことができます。
5. スタッフとの価値観共有
最も重要なのは、スタッフ全員が
「患者目線」の価値観を共有することです。
受付、歯科衛生士、歯科助手、すべての
スタッフが同じ方向を向いているでしょうか?
週に一度、15分でも良いので
「患者から見た私たちの歯科医院」について
話し合う時間を設けてみてください。
このように、患者目線で考えることは
特別な技術ではありません。
むしろ、あなたがすでに治療において
実践している考え方をそのまま集患にも
適用するだけのことです。
「患者の立場に立ち、何ができるか?」
この問いを常に持ち続けることで、
あなたの歯科医院は自然と患者から
選ばれる存在になっていきます。
集患やマーケティングに悩むとき、
複雑なテクニックや高額な広告に頼る前に
立ち返るべきはこの原点なのです。
明日から、診療の合間に少しずつ
これらのアクションプランを実践してみてください。
きっと新たな気づきが得られるはずです。
そして何より、患者目線で考えることが
自然と習慣になれば、集患だけでなく
医院全体の雰囲気も変わっていくでしょう。
患者に選ばれる歯科医院とは、
結局のところ「患者のことを本当に
理解している医院」なのです。