先生、毎日の診療、本当にお疲れ様です。
こんにちは、株式会社120パーセント代表、
ニッチな自由診療でも「先生のその治療が受けたい!」患者が集まる歯科医院構築、
クリニックの経営アドバイザーで歯科医師の 近 義武 です。
歯科医院の経営と医療の質は一体不可分
「歯科診療の技術」と「経営能力」は別物です。
この現実から目を背けている院長先生が、まだまだ多いのが現実です。
「患者さんのためを思えば、お金のことは極力考えたくない」
こういった考えをお持ちの先生も少なくないでしょう。
しかし、これは危険な思い込みです。
不本意ながらでも、歯科医院経営もビジネスだということを
まず認識する必要があります。
なぜなら、経営基盤が脆弱だと、最終的に
”最も損をする、割りを食うのは患者”だからです。
歯科医師として40年近いの臨床経験と
200医院以上のコンサルティング実績から
確信を持って言えることがあります。
経営的に安定した歯科医院だけが、真に
患者のためになる歯科医療を提供できるのです。
例えば、新しい設備投資ができない歯科医院は
最新のレーザー療法やオゾン療法を組み込んだ
低侵襲治療を提供できません。
スタッフの給与・待遇・福利厚生のレベルが低ければ、
優秀な人材は定着せず、患者対応の質も下がります。
そして何より、資金繰りに追われる院長のストレスは、
診療の質に直結します。(自覚はないでしょうが)
あなたは「患者のため」という錦の御旗を掲げることで
歯科医院経営の「診療に及ぼす影響」を無いものにしていませんか?
実はそれが、結果的には「患者のため」に
なっていないケースが非常に多いのです。
安定した歯科医院経営から始まる患者中心の医療
先生は患者に治療法を提示する際に、
「この治療法と、もう一つ別のの選択肢がありますよ…」
こんな場面で、
本当に患者にとって”最善の選択肢”を提案できていますか?
実は、経営的に追い詰められている院長ほど
高額な治療を勧めがちになります。
これは意図的ではなく、
無意識レベルでの生存本能からの行動といえるでしょう。
財務的余裕がなければ、
純粋に医学的見地からの判断にバイアスが掛かるのです。
これこそが『貧すれば鈍する』というやつなのです。
ある院長は、月末の資金繰りに追われるあまり
不要なセラミック治療を勧めるようになり患者の信頼を失いました。
一方、経営基盤がしっかりしている医院では
次のような「患者第一」の判断が無意識に行われてます。
・治療を急がず、経過観察を選択できる
・高額な自費診療よりも、必要十分な保険診療を勧められる
・設備投資による最新治療の提供
・十分な診療時間の確保
つまり、あなたとあなたの歯科医院の財務的余裕は
「患者のため」の医療判断の”縛り”を少なくし、自由度を高めるのです。
例えば、ある患者が歯冠部の変色を訴えて来院したとき
あなたはどう対応しますか?
X-rayを撮影した結果「ギリ経過観察でも…」と思えても
院長の懐具合が寒ければ「今すぐ治療しましょう」と言いたくなります。
良い悪いではなく、これが人間の心理です。
私が関わったある歯科医院では、
経営改善後に患者満足度が大幅に向上しました。
理由は単純です。
院長の精神的余裕が(患者にとっての)治療の質を高めたのです。
「金回りがよくなってから患者のために使おう」ではなく
「患者のために金回りをよくする」という発想の転換が必要です。
患者、スタッフ、そして院長であるあなた自身を含めて、
全員が幸せになるための唯一の道は
財務的に健全な歯科医院経営なのです。
経営の現実から目を背けるリスク
「患者のためだけを考えて診療している」
このフレーズ、耳触りはいいですが
実は大きな落とし穴があります。
私がコンサルティングした歯科医院の中で
経営破綻寸前だった医院に共通する特徴は
院長が経営の現実から目を背けていたことです。
ある院長は「医療に営利を持ち込みたくない」と
経営指標の数字を見ることさえ拒んでいました。
結果、気づいたときには
470万円の未払い債務が積み上がっていたのです。
経営から目を背けるリスクは
具体的に以下のような形で表れます。
機材の更新ができない
「今の機材でもまだ使える」と我慢し続けた結果
治療効率が下がり、さらに収益が悪化する悪循環に陥ります。
安価な機材、型落ちの機材が絶対ダメと言う積もりはありませんが
先生のストレスが増え、時間や体力が浪費されるなら
”金銭以外のリソース”を使っているだけで「節約」ではありません。
スタッフの離職率が高まる
賞与が出せない、給与が上がらない、待遇が悪い、
居心地が悪い、活気がない、雰囲気が良くない、
院内がギスギス、ギクシャクする…
こんな状況が続くと、優秀なスタッフから去っていきます。
ある医院では3年間で衛生士が8人も入れ替わりました。
診療の質の低下
そしてこれが最も深刻です。
資金繰りに追われる院長は、診療に集中できずミスが増えます。
患者はそれを敏感に感じ取ります。
「先生、最近元気がないね」と言われた経験はありませんか?
それは危険信号かもしれません。
経営不振の医院では、院長自身のストレスレベルが上がり、
診療に集中できなくなるのです。
そして、最終的に何らかのバッドイベントをきっかけに
”突然の閉院”という最悪の結末を迎えることになります。
こうなって、本当に困るのは通院中の患者です。
財務基盤を固める3つのアプローチ
では、具体的にどうすれば歯科医院の
財務基盤を固められるのでしょうか?
投下する金銭低負担が多くなく、
それなりに成果を上げてきた方法を3つお伝えします。
1. 予防歯科の強化
既存患者が定期的に来院する仕組みを
構築することが最優先課題です。
ある医院では、診療後に(次回予定が1年後だったとしても)
次回の予約を必ず取る「次回予約制」を導入しました。
そこにリコール施策を組み合わせることで
リコール率が42%から78%に向上しました。
この歯科医院では月商に換算すると約80万円の増収に相当します。
この増収が単発でなく継続的にもたらされることは
歯科医院経営上、とても有利に働きました。
2. 自費診療の適切な提案&システム化
自費診療を「売り込む」のではなく
「適切に提案する」仕組みを作ります。
患者の抱えている問題を解決できる治療法、
希望を叶える治療法を提案するために
院長、スタッフ全員が一丸となって
「患者の真の困りごと・願いごと聞き出す」意識を徹底します。
そして聞き出した悩みや希望をもとに
複数の治療オプションを資料と一緒に
「必ず3つ」提案することをマニュアル化しましょう。
ある医院ではこれだけのことで、
自費率が10%から22%に向上しました。
3. スタッフ教育と評価制度の確立
経営を支えるのは院長だけではありません。
スタッフの力が不可欠です。
まずは個別に、院長先生の不退転の決意を伝え
一緒に頑張ろうと協力要請をします。
その際に院内の活性化や、先生の目標達成のための
有効なアイデアがあれば、採用する用があることも伝えましょう。
スタッフから出されたアイデアは、大幅に改良してでも
何とか採用してあげると結束力が高まります。
さらに、明確な評価基準に基づく昇給制度を導入し
院長の恣意的決定を極力排除する姿勢を示した医院では
スタッフの定着率が大幅に改善し、患者の満足度も向上しました。
これらのアプローチは一朝一夕に効果が出るものではありません。
しかし、確実に歯科医院の財務基盤を強化する方法として
実績も豊富ですので、試してみる価値は十分だといえます。
経営者マインドが創る理想の歯科医療
歯科医師であると同時に、あなたは経営者でもあります。
この二つの役割は対立するものではなく
むしろ相乗効果を生み出すものです。
経営者マインドを持つことは、
より良い歯科医療を提供するための基盤なのです。
私がコンサルティングした歯科医院の中で
最も患者満足度が高い医院は、
同時に最も経営が安定している医院でした。
これは偶然ではありません。
経営的視点を持ち、数字と向き合う習慣があなたの医院を守り、
患者に最善の医療を提供する自由を与えてくれます。
今日からでも実践できることがあります。
まずは過去3ヶ月の収支を把握し、
3ヶ月先までの資金計画(予測の収入、予定の支出)を立て
その結果をカレンダーに記入してみてください。
これだけでも、あなたの意思決定の質は大きく変わるはずです。
患者のため、スタッフのため、そしてあなた自身のためにも、
歯科医院の経営基盤を強化することを
最優先課題として取り組んでみませんか?
それこそが、真に患者のための
歯科医療を実現する唯一の道なのです。