優秀な人を採用したのに院内が荒れる
ある熱心な院長先生のクリニックでの出来事です。
彼は採用面接で、自分と同じようにハキハキと話し、
テキパキ動けそうなスタッフばかりを選んでいました。
ところが数ヶ月後、そのクリニックはどうなったか…
スタッフ同士で業務の主導権を巡る衝突が絶えなくなり、
待合室にまでその空気感が伝わるようになったのです。
患者が気まずそうに下を向いて座る待合室。
結局、せっかく採用したスタッフは次々と辞めてしまい、
院長自身も人間関係の調整に疲れ果ててしまいました。
先生のクリニックでも、同じような失敗や、
「なぜかスタッフが定着しない」というお悩みはありませんか?
実は、多くの院長が採用活動においてある罠に陥っています。
それは、無意識のうちに「院長自身と似た特性を持つ人材」を
優先的に選んでしまうという、採用の偏りです。
私は歯科医師として自らのクリニックの経営難を乗り越え、
現在までに200以上の歯科医院でコンサルティングを行い、
継続的な増収増益をサポートしてきました。
自らも現場に立ち続けるからこそ、痛いほどよくわかります。
真面目な先生がスタッフ問題で心身をすり減らし、
突然の倒産の危機に追い込まれるという悲しい現実を。
だからこそ断言します。
先生に似たスタッフばかりを集めても、
決して強いチームは作れません。
既存のスタッフにはない「異なる特性」を
意図的に入れる必要があるのです。
今回は、医院の成長を加速させるための新しい採用基準と、
これからの時代に必須となるスタッフ育成の「切替スイッチ」について、
今日から実践できる具体策をお伝えします。
歯科医院「強いチーム」の作り方
組織の機能不全を招く「無意識の採用バイアス」
先生は採用面接の際、どのような基準で合否を決めていますか?
「自分と話が合う」「ハキハキしていて気が利きそう」
そんな第一印象で、無意識に選んでしまっていませんか。
実は多くの院長が、自分と似た思考や行動パターンを持つ、
つまり「自分の特性に近い人材」を採用しがちです。
その結果、院内の人材の特性に極端な偏りが出てしまいます。
例えば、全員が患者への説明を仕切りたがるタイプだとどうなるか…
スタッフ間で主導権争いが起き、ギスギスした空気が生まれます。
逆に全員が裏方気質だと、初診患者への積極的なアプローチができず、
自由診療の成約のチャンスを逃し続けることになります。
ここで誤解してほしくないのは、
世間で流行りの「多様性」にただ迎合しろ、ということではありません。
性別や年齢をバラバラにすればいいという単純な話ではないのです。
真の狙いは、現在働いている既存のスタッフにはない、
「異なる特性を持つ人材」を意図的かつ積極的に採用することです。
それが、医院の足りないピースを埋めるドミノ倒しの1枚目となります。
面接の印象に左右されない「資質」の見極め方
では、異なる特性を持つ人材をどうやって見つければよいのでしょうか。
最も大切なのは、求人を出す前、採用面接をする前の準備です。
「当院では今、どういう役割を果たす人材を求めているのか」
これを明確に言語化し、応募者にもしっかりと伝える必要があります。
ここで言う「役割」とは、決して現在の技術力ではありません。
スケーリングが早い、レセコン入力が正確といった「力量」ではなく、
初診患者の不安に寄り添える共感力などの「資質」を指しています。
しかし、一般的な採用面談の短いやり取りや、
よそ行きの受け答えだけで、その人の本質を見抜くのは至難の業です。
面接官である先生も、相手の良いところばかりを見てしまいがちです。
そこで、必要に応じてアンケートや性格診断を導入してみてください。
客観的な指標を用いることで、面接の印象だけではわからない、
その人が本来持っている特性や行動傾向が見えてきます。
現在働いているスタッフにも同じ診断を受けてもらえば、
相性やチーム内でのバランスを客観的に予測することも可能です。
応募者の本質を見抜こうとするその「姿勢」こそが、
採用の失敗を防ぎ、定着するスタッフを獲得する最大の防御策なのです。
”いるだけ”スタッフでは通用しない時代
さて、ここからは採用後の「育成」についてお話ししましょう。
先生のクリニックには、言われた業務だけを淡々とこなし、
時間が来るのを待っているだけのスタッフはいませんか?
「昔はそれでも回っていた」と考えるのは危険な思い込みです。
現在の歯科医院と、そこで働くスタッフに求められる水準は、
過去のそれとは比較にならないほど高くなっています。
高度化する治療技術はもちろんのこと、
患者からの多様なニーズに応えるための幅広い知識量、
そして、ホスピタリティにあふれた臨機応変な行動力…
これらはすべて、従来のレベルとは段違いのものです。
歯科医療従事者としての「心」と「技」を常に磨き続けない限り、
これからの時代、現場では通用しなくなりつつあるのです。
主体性を持たず”ただそこにいるだけ”のスタッフは、
いずれクリニックの中での居場所を完全に失うことでしょう。
彼ら彼女らの存在は、クリニックの成長を止める要因にもなります。
では、どうすれば良いのでしょうか。
答えは、スタッフの「内発的モチベーション」に火をつけることです。
外からの強制ではなく、自ら成長したいという欲求を引き出すのです。
患者からの感謝の言葉や、任された業務をやり遂げた達成感。
そうした感情的価値をスタッフに体験させる仕組みを作り、
自発的行動力と成長の源泉となる環境を整える。
それが、これからの院長に求められる真のスタッフ育成術なのです。
この育成のスイッチを入れることができるのは、先生だけです。
今日から始める”採用基準の切り替え”
ここまで、組織を機能不全に陥らせる無意識の採用の罠と、
これからの時代に求められるスタッフ育成についてお伝えしました。
優秀そうに見える、自分と似たタイプばかりを集めるのは危険です。
本当に強いチームを作るための目標達成の最短コースは、
既存のスタッフにはない「異なる特性」を意図的に採用すること。
そして、採用後は内発的モチベーションを高める環境を整えることです。
この「価値観の切替」ができるかで、医院の未来は大きく変わります。
そこで、先生に今日から実践していただきたい、
小さな最初の一歩となるアクションプランを提案します。
それは、現在のスタッフ全員の特性を紙に書き出すことです。
アンケートや正確診断、適性診断などを導入予定なら、
「試しに」既存スタッフ全員に実施してみるのも良いでしょう。
誰がどんな役割(資質)を得意とし、何が不足しているのか。
客観的に把握することで、次に採用すべき人材の「役割」が見えてきます。
漠然と求人を出す前に、まずはこの作業を実践してみましょう。
この行動が、医院を劇的に変えるきっかけになります。
迷わず前に進むことで、持続可能な成長を手に入れてください。
※本記事の手法の成果は、実行状況や環境により異なります。
※実践の際は医療広告ガイドラインおよび関連法規を遵守してください。









