なぜあの店には人が集まるのか
先日、久しぶりに立ち寄った
とある喫茶店でのことです。
その店は、私が学生時代から
30年以上も続いている小さな喫茅店で、
正直、外観は古びています。
看板も色褪せているし、
店内のソファも年季が入っている…
その喫茶店の周辺には、この数年で
スターバックスやドトールといった
チェーン店が次々とオープンしました。
新しくて、綺麗で、Wi-Fiも使えて便利です。
誰もが「もう、あの古い喫茶店は
潰れるだろうな」と思ったはずです。
恥ずかしながら私もそう思いました。
ところが、です。
その日、店に入ってみると
意外なことに、ほぼ満席だったのです。
しかも、お客さんの多くが常連らしい様子でした。
マスターは70歳を過ぎているはずですが、
一人ひとりの客の顔を見て
「いつものでいいですか?」と声をかけています。
ある客には
「お嬢さん、就職決まったそうですね」
と話しかけ、
別の客には
「この前お話しされていた本、
私も読んでみましたよ」と、
カウンターの下から文庫本を取り出して
見せていました。
コーヒーを淹れる手つきも丁寧で、
一杯一杯、心を込めている様子が伝わります。
そして何より、マスターの表情が穏やかで、
この空間にいる人たち全員を
大切に想っていることが
ひしひしと伝わってくるのです。
私はその時、
ああ、だからこの店は続いているんだな、
と腑に落ちました。
SNSもやっていない…
広告も出していない…
でも、この店には
マスターの「想い入れ」が満ちていて、
それが客を引き寄せているのです。
帰り際、常連らしき年配の女性が
「また来週ね」とマスターに声をかけて
店を出ていきました。
マスターは「お待ちしています」と
深々と頭を下げていました。
その姿を見て、
私の胸にじんわりとした何かが広がりました。
それは歯科医院でも同じこと
実は、これは歯科医院の差別化でも
全く同じなのです。
多くの院長先生が、
患者に選んでもらえる歯科医院を作ろうと、
こんなことを考えます。
「最新のCTを導入しようか」
「最新技術のセミナーに行こうか」
もちろん、これらの取り組みは
素晴らしいことです。
否定するつもりは全くありません。
でも、正直に言いますね。
それだけでは、
決定的な差別化にはなりません。
なぜなら、診療時間の延長も、
最新機器の導入も、新しい技術の習得も、
他の歯科医院でもできることだからです。
いや、むしろ資金力のある医療法人なら
もっと大規模にできるでしょう。
表面だけを変えようとしても、
中身が何も変わっていなければ、
患者には伝わらないのです。
先ほどの喫茶店を思い出してください。
チェーン店の方が設備は新しいし、
メニューも豊富です。
でも、客が求めていたのは
そこではなかったのです。
あなたの歯科医院も同じです。
患者が本当に求めているのは、
最新機器でも、長い診療時間でもありません。
では、何なのか。
独自の”色”を生み出すもの
歯科医院の差別化とは、
あなた独自の「色」を出すことです。
では、どうやったら
独自の色が出るのか。
それは、あなたの中にある
”患者に対する想い”を
強く持つことから始まります。
「想い」です。
その想いが強ければ強いほど、
あなたの歯科医院には
独自の色が出てきます。
なぜなら…
”想い”はすべての行動・言動に表れるからです。
ちょっとした行動、
ふとした瞬間に口から出る言葉、
患者への接し方、院内に掲示する文字、
診療室の雰囲気…
すべてに”想い”は関係してきます。
あの喫茶店のマスターが
客の話を覚えていて、本まで読んでいたこと。
一杯一杯のコーヒーを丁寧に淹れていたこと。
それらは全て、
「この店に来てくれる人を大切にしたい」
という想いが表れた行動です。
テクニックではないのです。
先生の歯科医院でも同じです。
患者への想いが強ければ、
それは自然と言葉に表れ、
表情に表れ、診療の細部に表れます。
そして患者は、
それを敏感に感じ取っているのです。
患者が本当に求めているもの
差別化するためのテクニックは
たくさん存在しています。
テクニックも確かに大事です。
でも、テクニックだけを求めていては
いつまでたっても差別化はできません。
患者が本当に通いたいのは、
テクニックが優れた歯科医院ではなく、
院長先生の想いがひしひしと
伝わってくる歯科医院なのです。
常に温かく迎えてくれる。
私のことを想ってくれている。
先生の言葉に共感できる。
治療だけでなく、
心が動かされるような情報を教えてくれる。
誠実な人柄が、言葉の端々から染み出してくる。
そんな歯科医院に通いたいのです。
考えてみてください。
先生自身が患者だったら、
どちらの歯科医院に通いたいですか?
最新機器は揃っているけれど
事務的で冷たい対応の歯科医院か、
設備は普通だけれど、
先生の温かい想いが伝わってくる歯科医院か。
答えは明白ですよね。
それが最高の差別化です。
想いは、偽れません。
取り繕うこともできません。
だからこそ、
他の歯科医院には真似できない
唯一無二の差別化になるのです。
今日からできること
では、今日から何を始めればいいのか。
まずは、あなた自身の想いを
明確にすることから始めてください。
「私は、どんな患者に
どんな価値を提供したいのか」
「患者にどうなってほしいのか」
「私の歯科医院は
患者の人生にどう関わりたいのか」
こうした問いに、
じっくりと向き合ってみてください。
答えはすぐには出ないかもしれません。
でも、考え続けることが大切です。
想いが明確になれば、
それは自然と行動に表れます。
患者への声のかけ方が変わります。
スタッフへの指示が変わります。
院内掲示物の文章が変わります。
そして、患者はそれを感じ取ります。
「ああ、この先生は
本当に私のことを考えてくれているんだ」と。
最新機器を買う前に、診療時間を延ばす前に、
まずは、あなたの想いを強く明確にしてください。
それが、他のどの歯科医院にも
真似できない差別化の第一歩です。









