予約キャンセル対策に疲弊していませんか?
先日、あるベテラン歯科医院長から愚痴られました。
空き時間を持て余したまま1日が終わりました。
リコールハガキ、前日確認電話、当日朝のメール送信…
全部やっているのに効果が薄い。もう疲れました…」
このような悩み、多くの院長先生が
抱えているのではないでしょうか。
予約のキャンセル、特に無断キャンセルは
歯科医院経営において大きなストレス源です。
収入の損失だけでなく、時間の無駄、
スタッフのモチベーション低下にもつながります。
そして多くの院長先生は
「どうすればキャンセルを減らせるか」
という対策に頭を悩ませていることでしょう。
しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。
予約を何度もキャンセルする患者、
無断でキャンセルする患者は、
基本的に何を考え、感じているのでしょうか?
結論を言うなら、
「キャンセルを気にも止めていない」
つまり彼らにとって、あなたの歯科医院、スタッフ、
あなた自身、そしてあなたの治療は、
優先順位がめちゃくちゃ低いということです。
私は歯科医師として自らの医院経営で苦労した経験、
どん底の経営状況から復活させた経験、
そして200以上の歯科医院の経営改善を手伝った経験があります。
その中でつくづく身に染みているのは、
キャンセル対策に奔走するよりも、
もっと経営改善に寄与度が大きい施策が存在している事実です。
予約キャンセル問題の本質
多くの院長先生は、
予約キャンセル対策として様々な施策を試みます。
リマインドメール、予約前日の確認電話、
キャンセル料の設定、次回の診療の重要性を説明…
しかし、こうした対策を講じても、
一向にキャンセル率が下がらない歯科医院が
圧倒的に多いのはなぜでしょうか?
それは、問題の表面だけを見て
本質を見逃しているからです。
歯科治療やあなたとの関係性の優先順位を
他の事項より十分にの高いものと認識している患者は、
よほどの理由がない限り予約をキャンセルしません。
例えば、好きな歌手のライブチケットを手に入れた患者は、
その日の歯科医院の予約を簡単にキャンセルするでしょう。
しかし、あなたやスタッフをとても尊敬している患者は
予約をキャンセルすることはまずありません。
この違いは何でしょうか?
それは「優先順位」です。
患者の行動パターンを分析すると、
3回以上キャンセルした患者の約80%は
その後も同じ行動を繰り返すというデータもあります。
これは患者の価値観や行動パターンが
簡単には変わらないことを示しています。
効果の薄い対策に時間を費やさない
キャンセル料を設定したとしても、
「次回から気をつけます」と言いながら、
またキャンセルする患者は少なくありません。
何度リマインドしても、優先順位が低いままなら
やはり後回しにされてしまうのです。
対策に時間と労力を費やせば費やすほど、
院長やスタッフのストレスも増していきます。
そして最も問題なのは、これらの対策が
根本的な解決にほとんどならないということです。
優先順位が低い患者を無理に来院させても、治療意欲は低く、
説明しても理解しようとする姿勢も弱いことが多いのです。
結果として、スタッフの対応時間だけが増え、
治療効率は下がり、スタッフのストレスも増大します。
限られた時間とリソースは、
より効果的な方向に使うべきなのです。
真に効果的な患者管理戦略
キャンセル対策から視点を変えて、
どこに時間とエネルギーを注ぐべきか。
それは大きく分けて二つあります。
一つは、あなたの歯科医院に対する
優先順位が高い患者を集めること。
もう一つは、現在きちんと予約通りに来院している患者に、
さらにファンになってもらうことです。
優先順位の高い患者には、以下のような特徴があります。
・予防意識が強い
・医師の説明をしっかり聞く
・予約時間を守る
・治療計画に同意し最後まで完了する
こうした患者を増やすためには、
あなたの歯科医院の診療理念やこだわりを
明確に発信することが重要です。
例えば、予防歯科に特化しているなら、その情報を
ウェブサイトやSNSで定期的に発信する。
または、丁寧なカウンセリングを重視していることを
クリニックの特徴として打ち出す。
このように、診療理念やこだわりをうまく伝えられれば、
あなたの歯科医院の価値観に共感する患者が自然と集まってきます。
良質な患者をファン化する施策も効果的です。
予約をきちんと守る患者、
治療に積極的に取り組む患者に対しては、
特別な配慮や感謝の気持ちを示しましょう。
例えば、定期検診を欠かさず続けている患者には、
口腔ケア用製品を無償提供してモニターになってもらったり、
有形・無形でのえこひいきをしたりなどの特典を提供する。
または、予約時間をきっちりと守ってくれる患者には、
待ち時間ゼロの特別予約枠を用意するなどの工夫が効果的です。
さらに、良質な患者からの紹介を
増やす仕組みも重要です。
患者によるSNSでの口コミ投稿を促進したり、
紹介カードを活用したりすることで、
似た価値観を持つ新しい患者を獲得できます。
これらの施策は、キャンセル対策よりもはるかに効果的で、
あなたやスタッフにストレスが生じることもありません。
患者の質を上げて診療ストレスを減らす
これまでお伝えしてきたように、
予約キャンセル対策に振り回されるよりも、
根本的な解決策を実践することが重要です。
キャンセルする患者は、
「あなたの歯科医院や治療の優先順位が低い」
という事実をまずは受け入れましょう。
そして限られた時間とエネルギーを、
より価値を生み出す方向に向けることが大切です。
明日から実践できるアクションステップをご提案します。
1. 自院の診療理念や特徴を明確化し、
ウェブサイトやSNSで発信する
2. 予約を守る良質な患者に感謝の意を示し、
特典を検討する
3. 紹介プログラムを強化し、
良い患者から良い患者を紹介してもらう仕組みを作る
4. 予約管理システムを見直し、
良質な患者に優先的な予約枠を提供する
これらの施策は、単なるキャンセル対策よりも
歯科医院全体の質を向上させ、
長期的に大きな効果をもたらします。
そして何よりも、院長先生自身の診療ストレスを軽減し、
本来の歯科医療に集中できる環境を作ります。
患者の質が上がれば、
自然とキャンセル率も下がっていくのです。