先日、ある院長先生と話をしていた時のことです。
その先生は真摯に歯科医療に向き合い、
20年以上研鑽・臨床経験を積んできたベテランドクターでした。
「良い治療を続けていれば、患者は増えると思っていたのに…」
そう嘆く姿には、多くの院長先生が
共感されるのではないでしょうか。
しかし、厳しいようですが、
「真摯に歯科医療を続けていれば患者に伝わり口コミで患者は増える」
というのは完全な思い込みです。
なぜなら、治療の良し悪しを
過不足なく専門的に評価できる患者はほぼ存在しないからです。
あなたが何十時間もかけて学んだ最新の治療テクニック…
患者の目には、隣の歯科医院との違いが見えていません。
臨床技術は大切ですが、それだけでは
患者獲得の決定打にはならないのです。
これは「プロの価値観」と「素人の価値観」の
根本的なずれが原因です。
先生方の多くは「良い治療」に価値を見出しますが、
患者は「安心感」「通いやすさ」「説明の分かりやすさ」などに
価値を感じているのです。
つまり、治療技術の向上だけでなく、患者心理を理解した
戦略的なアプローチが絶対的に必要なのです。
患者心理を理解し来院決断へ導くシナリオ
あなたの歯科医院に来院する患者は、
実は非常に長い心理的な道のりを経てやってきています。
これを「患者心理の階段」と私は呼んでいます。
「歯科医院なんて、痛くなったらどこでも同じだろう」
多くの患者はこのようなスタート地点から始まります。
ここで重要なのは、患者は歯科についての「ど素人」だ!
という事実を真剣に真っ直ぐ受け止めることです。
彼らはCTやセラミック、インプラントの詳細を
理解していません。
むしろ「痛くないか」「費用はいくらかかるか」
「何回通えばいいのか」といった不安でいっぱいなのです。
この心理を理解せずに、
いきなり専門的な治療の話をしても響きません。
では、どうすれば患者は
あなたの歯科医院を選ぶのでしょうか?
それには、半歩ずつ来院の決断に気持ちが傾いていくよう
”導くシナリオ”を入念に準備することが鍵になります。
たとえば、ホームページでは「ど素人」でも理解できる
「他の歯科医院との違い・選ぶ理由」を示し、
患者の不安や疑問にダイレクトに応える内容にする。
「他院にはないあなたとあなたの歯科医院独自の強み」
「初診時の流れ」「費用の目安」など情報が、
患者の背中をポンと押してくれます。
また、電話対応では患者の言葉にならない不安を
汲み取る応対ができているか?
初来院患者が迷わず手続きできる環境が
受付の準備、スタッフの心構えが整っているか?
こうした一つひとつの小さなステップが、
患者をあなたの歯科医院へと導くシナリオの要素なのです。
実は、患者獲得に成功している歯科医院は、
この「患者心理の階段」を一段一段上らせる仕組みを
しっかり構築しています。
あなたの歯科医院では、患者の心理に寄り添った
来院までのシナリオをどれだけ考えていますか?
来院後の患者をゴールへ導くシナリオ
患者が実際に来院したら、もう安心…と思っていませんか?
実は、ここからが本当の勝負の始まりなのです。
来院してからは、また別のシナリオ準備が必要になります。
まず考えるべきは、
あなたの歯科医院が患者に対してどんなゴールを設定するかです。
「予防歯科の価値を理解してもらう」
「セラミック治療を受け入れてもらう」
など、ゴール設定は歯科医院によって異なります。
あなたの歯科医院はどんなゴールを
患者に設定していますか?
ゴールが明確になったら、そこに向かって
患者を導くシナリオを組み立てます。
例えば、予防歯科を重視する歯科医院であれば、
初診時から口腔内写真を見せながら現状を丁寧に説明し、
「このままだとどうなるか」「予防することでどう変わるか」を
視覚的に伝えるステップを用意しておくのです。
重要なのは、
患者にこれまでとは異なる価値観を持ってもらうことです。
「安い材料より長持ちする材料」
「見た目も機能も両立できる」
こうした新たな価値観を
患者が受け入れるまでには時間がかかります。
だから、初診から2回目、3回目と
段階的に伝えていくシナリオが必要なのです。
さらに、このシナリオは
院長だけが実践するものではありません。
受付、歯科衛生士、アシスタント、全スタッフが
同じ方向を向いて患者を導く必要があります。
「先生は技術が素晴らしいのに、スタッフの対応がバラバラ…」
こんな状態では、どんなに優れた治療技術も活かせません。
院長であるあなたが中心となってシナリオを組み立て、
スタッフに教え込み、全員で実践する。
これが患者を望むゴールへと導くための鍵なのです。
患者獲得と定着のためのアクションプラン
ここまでお読みいただいて、あなたは腹落ちしたでしょうか。
真摯な歯科医療だけでは不十分だということを。
患者を獲得し、定着させるには2つのシナリオが必要です。
もう1つは来院後の患者を望むゴールへ導く「価値観変容シナリオ」
今日からできるアクションとして、まずは患者目線で
自院のホームページやSNSを見直してみてください。
「ど素人」の患者が理解できる言葉で書かれていますか?
次に、スタッフミーティングで
「私たちの歯科医院が患者に望むゴールは何か」を
話し合ってみてください。
そして、そのゴールに向けて患者を導くための
言葉や対応の仕方を具体的に決めていきましょう。
そこまでやらなくては、患者は来院してくれませんし、
来院後にあなたがかかりつけ歯科医師として
ずっと付き合っていける患者にはなってくれないのです。
技術だけに頼らず、
患者心理を理解したシナリオ作りに取り組んでみてください。
きっと、あなたの歯科医院の未来は大きく変わるはずです。