「視線の痛さ」に耐えて得られるもの
先日、ある音楽番組を見ていて、
ふと考えさせられることがありました。
デビューしたばかりの新人アーティストが、
初めての生放送出演で緊張のあまり声を震わせていたのです。
カメラが真正面から彼を捉え、
スタジオの観客全員の視線が一点に注がれる。
その瞬間、彼の表情が一瞬こわばったのが見えました。
司会者が「緊張してる?」と尋ねると、
彼は苦笑いしながらこう答えたんです。
「視線が、痛いです」
この一言が、妙に心に残りました。
視線が痛い…
数百人、数千人、あるいは数万人の視線を一身に受けるのは、
想像以上の苦痛を伴うものなんだと。
でも同時に、こうも思いました。
あの新人アーティストが、
半年後、1年後にまた同じ番組に出たとき、
きっと彼は堂々としているだろう、と。
なぜなら彼は今、
その「視線の痛さ」に耐えてみせたからです。
実は、これは歯科医院経営にも
そのまま当てはまる話なのです。
多くの先生が誤解していることがあります。
それは、
生まれつき魅力的な人だから患者がファンになる
という思い込みです。でも実際は、逆です。
惹きつける魅力があるから注目されるのではなく、
注目されるから魅力的に映るようになる。
芸能人が何万人もの視線を浴びて、
次第に存在感を増し、
輝きを放つようになるのと同じです。
注目される。視線を集める。
それは「視線が痛い」と表現されるように、
本来は苦痛を伴うものです。
でもその痛みに耐えるからこそ、
メンタルが強化され、存在感が増し、
最終的に人を惹きつける力が育っていく。
つまり、患者をファンにする力というのは、
生まれ持った才能ではなく、
「注目されることへの耐性」
を育てた結果として手に入るものなのです。
先生は今、どう感じていますか?
患者から尊敬されたい、ファンになってほしいと思いながら、
どこか躊躇している自分がいませんか?
それは当然のことです。
変化を拒むのは、人間の生存本能に近いものですから。
でも、諦める必要はありません。この記事では、
注目されることへの苦手意識を乗り越え、
患者を惹きつける力を育てる
小さな一歩についてお伝えします。
「注目される力」が患者をファンに変える
すべてのではなく、特定の患者を惹きつければいい
歯科医院経営において、
先生が目指すべきは「万人受け」ではありません。
特定の患者を強く惹きつけること。
それだけで十分です。
たとえば、
予防歯科に力を入れている先生なら、
「健康意識の高い患者」に注目されればいい。
審美治療を得意とする先生なら、
「見た目の美しさを大切にする患者」に
注目されればいいのです。
全員に好かれようとすると、
結局、誰の記憶にも残らない…
でも、特定の層に強烈な印象を与えれば、
その人たちはファンになり、
自然と口コミで広げてくれます。
問題は、「注目される」ということ自体に、
多くの先生が抵抗を感じていることです。
「目立つのは苦手」
「患者に変に思われたくない」
「いつも通りでいいんじゃないか」
そう思ってしまうのは無理のないこと。
これは、決して先生が臆病なわけではありません。
「注目されるのはしんどい」
人間の脳には、
現状を維持しようとする強力なシステムが備わっています。
それがホメオスタシス、恒常性です。
体温が一定に保たれるように、
メンタル面でも「いつもの自分」を保とうとする。
変化を拒絶するのは、生存本能に近いものです。
だから、「患者をファン化したい」と思いながらも、
「注目されるのはしんどい」と感じるのは、
ごく自然なこと。
新しい取り組みを始めようとすると、
「今のままでいいんじゃないか」
「失敗したらどうしよう」
という声が心の中から湧いてくる…
それは、先生の脳が
「変化=危険」と判断しているからです。
でも、ここで諦める必要はありません。
ホメオスタシスの壁は、
慎重で小さな一歩で乗り越えられます。
重要なのは、いきなり大きく変わろうとしないこと。
患者が「ついつい気になってしまう」
小さなインパクトポイントを、
まずは1つだけ設定すれば良いのです。
「注目されることに耐える修練」
診療室でできる仕掛け
では、具体的に何から始めればいいのか。
答えは簡単です。
たった1カ所だけ、
大胆なものを取り入れる。
これだけです。
診療室内で明日から実践できる例を
いくつか挙げてみましょう。
・柄物のマスクを着ける
無地のマスクではなく、ストライプや水玉、
キャラクター柄など冒険的なものをあえて着ける。
患者の目線が自然と先生の顔に向かいます。
・カラフルなキャップを被る
診療用のキャップを明るい色や柄物に変えるだけで
、「あの先生」として記憶に残りやすくなります。
・スクラブに個性を出す
診療着を定番の白や水色ではなく、
ネイビーやワインレッドなどに変えてみる。
差し色を1つ入れるだけでも印象が変わります。
・ピンバッジやネームタグにこだわる
胸元に小さなピンバッジをつける。
患者から「それ、かわいいですね」と
話しかけられるきっかけになります。
ポイントは、
無理のない範囲で、少しだけ目立つこと。
プライベートなら、ヒゲを生やしてみる、
いつもと違う帽子を被ってみる、
それだけでも十分です。
また、セミナーや講演会に参加したとき、
質問コーナーで手を挙げてみる。
数百人の前で発言するという経験は、
「注目されることへの耐性」を
確実に高めてくれます。
最初は心臓がバクバクするかもしれません。
でも、それこそが
視線の痛さに耐える修練なのです。
褒められたら謙遜せず、笑顔で「ありがとう」
もう1つ、絶対に忘れてはいけないことがあります。
それは、褒められたら素直に喜ぶこと。
日本人は謙遜を美徳と考えがちです。患者から、
「先生、そのマスクいいですね」
と言われたとき、
「いえいえ、そんな」「たまたまです」
などと返していませんか?
実はこれ、
相手の好意を拒否しているのと同じなのです。
褒めてくれた患者は、先生に好意を向けている…
その好意を受け取らないということは、
関係を深めるチャンスを自ら手放している。
だから、患者から何か褒められたら、
笑顔で「ありがとうございます、嬉しいです」
と返してください。
治療後にお礼を言われたときも、
「いえいえ」ではなく、「ありがとうございます」
「そう言っていただけると励みになります!」
と素直に喜ぶ。
それだけで、先生の「患者を惹きつける力」は
確実に増していきます。
患者は、自分の言葉を喜んでくれる先生を
もっと応援したくなるものです。
「視線の痛さ」を乗り越えた先には?
患者をファンにする力は、
生まれ持った才能ではありません。
注目されることへの耐性を育てた結果として
手に入るものです。
芸能人が何万人もの視線を浴びて
次第に輝きを増していくように、
先生も、患者からの注目を受け止めることで、
確実に人を惹きつける力が育っていきます。
最初は「視線が痛い」と感じるかもしれません。
でも、その痛みこそが先生のメンタルを強化し、
存在感を高めていく過程そのものなんです。
まずは、小さな一歩から。明日、診療室で
1つだけインパクトポイントを作ってください。
柄物のマスク、カラフルなキャップ、
個性的なピンバッジ…何でも構いません。
そして、患者から何か褒められたら、
謙遜せずに笑顔で「ありがとうございます」と返す。
たったこれだけです。
この小さな変化を繰り返すうちに、先生は気づくはずです。
患者の反応が変わり、会話が弾むようになり、
「先生のファン」と言ってくれる患者が
自然と増えていることに。
すべての患者に好かれる必要はありません。
特定の患者を強く惹きつければ、
それで十分なのです。
視線の痛さを乗り越えた先に、
先生を応援してくれるファン患者が
必ず待っています。
さあ、今日から始めましょう。









