先生、毎日の診療、本当にお疲れ様です。
こんにちは、株式会社120パーセント代表、
ニッチな自由診療でも「先生のその治療が受けたい!」患者が集まる歯科医院構築、
クリニックの経営アドバイザーで歯科医師の 近 義武 です。
「今日は新しい患者が来てくれるかな…」
ユニットの傍らで、そう心待ちにする時間、ありますよね。
月間のレセプト枚数を数えても、目標にはあと一歩届かない…
スタッフはなかなか定着しないし、ドタキャンする患者もいる…
自由診療だって、もっと提供できるはずなのに…
患者には自由診療の価値が伝わらないし、かえって振り回される…
こんな悩みを抱えていませんか?
「ウチは、どんな患者さんでも大歓迎です!」
「お口の悩みなら、何でもご相談ください!」
先生のクリニックのホームページや看板にも、
もしかしたら、そんな言葉が書かれているかもしれません。
一見すると、とても親切で、
地域に開かれた素晴らしい姿勢に見えますよね。
でももし、その「誰でも歓迎」が、患者を遠ざけているとしたら…?
私自身が歯科医師として臨床に立ちながら、
これまで200を超える歯科医院の経営改善をお手伝いして、
改めて気付かされたことがあります。
その中の最重要ポイントの1つとして、
多くの先生方が自分からハマりこみに行っている
”非常に危険な落とし穴”があるんです。
それが、まさにこの
「どんな患者も引き受けます」というスタンス。
考えてみてください。
定期的なメンテナンスに通い、
予防歯科や質の高い治療に関心がある患者。
一方で、「痛い時だけ」「安く早く」を最優先する患者。
この、全く価値観の違う両者が、先生のクリニックに
同じように満足して通い続けてくれるでしょうか?
答えは、残念ながら「ノー」です。
両者を追いかけると、結局、
どちらの心にも響かなくなってしまう。
だから、あなたの診療室には
静かな時間が流れているのかもしれません。
なぜ、良かれと思って広げた間口が、
逆に患者を遠ざけてしまうのか?
今回の記事では、そのメカニズムを解き明かし、
先生のクリニックが本来の輝きを取り戻すための
ヒントをお伝えしたいと思います。
ターゲット不明確が生むメッセージの希薄化
さて、前の章で「どんな患者も歓迎」という姿勢が
逆効果になるかもしれない、という話をしましたね。
では、なぜそれがうまくいかないのか?
その理由を具体的に、もう少し深く掘り下げてみましょう。
まずは、ちょっと想像してみてください。
あなたが情熱を込めて学び、提供したいと願っている
質の高い、丁寧な歯科医療、それを心から求める患者のこと。
一方で、残念ながら、
「歯医者は痛くなってから行くところ」
「とにかく安く、早く済ませたい」
そう考えている患者も、世の中には確実に存在します。
この、まったく異なる価値観を持つ両者が、
あなたのクリニックに同じように満足するということは、
現実的にあり得るのでしょうか?
例えば、健康や予防に対する意識が高い患者は、
治療内容について詳しい説明を求めますし、
時間をかけたカウンセリングや、
長期的な視点での提案を期待しています。
先生やスタッフとのコミュニケーション、
信頼関係を非常に大切にする方も多くおいでです。
費用についても、
その価値を理解すれば、きちんと投資してくれます。
しかし、「痛いときだけ」の患者は、
正直、そういうのは求めていないことが多い。
「手っ取り早く痛みを取ってほしい」
「細かい説明はいいから、早く安く」
これが本音だったりします。
治療が終われば、次のトラブルまで顔を見せない…
なんてことも普通でしょう?
ここで問題なのが、
「ウチのクリニックは、どちらのニーズにも応えますよ!」
というメッセージを発信してしまうことなのです。
健康意識の高い、良い患者候補から見れば、
「ここは私の求めるレベルの治療を提供するのだろうか…?」
「急患が優先されて、予約時間はしっかり確保されるのかな?」
そんな漠然とした不安を感じさせてしまうこともあるはずです。
先生が持つ専門性やこだわりが、伝わりにくくなってしまうのです。
逆に、早くて安い処置を求める患者からすれば、
「なんか、いろいろ勧められそうで嫌だな…」
「予防とか言われても、今はいいんだけど…」
「もっと気軽に行ける歯医者はないだろうか?」
と、無意識のうちにあなたのクリニックを避けてしまうかもしれません。
つまり「誰でも」に向けたメッセージというのは、
誰の心にも深く刺さらない、輪郭のぼやけた、
当たり障りのないものになってしまう危険性が高いのです。
まるで、高級な専門食材の使用をアピールしながら、
「学食のカレーも出します!」って
言っているようなものですよ。
これでは、本当に美味しい食事を求めているお客さんも、
手軽にササっとカレーを食べたいお客さんも、
どっちも戸惑ってしまいますよね。
あなたのクリニックが持つ、本来の魅力や強みが、
こんな”八方美人な姿勢”によって埋もれてしまうとしたら、
それは非常にもったいないことだとは思いませんか?
理想の患者を引き寄せる「価値観」の明確化
この「八方美人」な状態から抜け出して、先生のクリニックが
本当に輝くための具体的なステップに入っていきましょう。
どうすれば、あなたのクリニックを
心から必要としている患者に選ばれるようにするのか?
答えは、実はとてもシンプル。
「あなたのクリニックが、どんな患者を最も幸せにできるのか?」
これを、とことん明確にするのです。
つまり、「ターゲットを絞る」ということですね。
でも、ここで絶対に勘違いしてほしくないのは、
これは「来る患者を選ぶ」とか、「気に入らない患者を断る」とか、
そういう表面的な話じゃないってことです。
もっと深く、本質的な作業が必要になります。
その本質とは何か?
それは、先生ご自身の「歯科医師としての価値観」、
そして、クリニックとして提供したい「医療の中核」を、
徹底的に掘り下げて、明確にすることなのです。
ちょっと立ち止まって、考えてみてください。
- 先生は、どんな歯科医療を提供することに情熱を感じますか?
- どんな患者と、どんな風に関わっていきたいですか?
- 数年後、地域の中で、あなたのクリニックはどんな存在でありたいですか?
この問いに対して、うやむやにして逃げ出さず、最後まで本音で向き合うこと。
これが、全てのスタートラインになります。
そして、その明確になった「価値観」に基づいて、
今度は「理想の患者像」を具体的に思い描いてみるのです。
例えば、
「予防の大切さを理解し、定期検診を自分の意思で継続する人」とか
「質の高い治療のためなら、納得して自費診療も選択する人」とか
「私たちの提案に耳を傾け、一緒にゴールを目指す前向きな人」とか
そんな風に、具体的にイメージするんです。
「でもそんなことしたら、今の少ない患者がもっと減るんじゃ…?」
そう心配になる先生の気持ち、痛いほど分かります。
開業して間もない頃は特に、誰だってそう思います。
しかし、これは「切り捨てる」ではなく「選ぶ」のです。
闇雲に網を投げて、雑多な魚を獲る漁じゃなく、
狙いを定めた一本釣りに切り替えるイメージです。
あなたのクリニックが持つ独自の価値(=釣り餌)に、
本当に魅力を感じる魚(=理想の患者)だけを引き寄せるのです。
そうすると、どうなるか?
あなたの価値観に共感する患者が自然と集まり始めるんですよ。
結果として、
- 診療の質が向上し、やりがいが増す
- スタッフのストレスや無駄な労力が減る
- 理不尽な要求やドタキャンが激減する
- 自由診療の成約率が自然と上がる
- 安定した医院経営が実現する
これは、私がこれまで見てきた
多くの成功事例が証明しています。
断言できます。
先生のクリニックが真に輝く道は、
この「価値観の明確化」と「理想の患者選び」から始まるのです。
理想の患者層を明確にする実践法
患者層を明確にするには、
自院の強みと院長先生の診療哲学を
真正面から見つめ直すことから始めましょう。
以下のステップで進めていくと 効果的です。
Step 1: 現状の患者分析
まず、過去6ヶ月間の来院患者を
年齢、性別、治療内容、来院頻度で分類してみてください。
特に再来率の高い患者グループに注目しましょう。
彼らがなぜ、あなたの医院を選んでいるのか、
アンケートやカウンセリング時の会話から情報収集します。
Step 2: 自院の強みを言語化する
「あなたの歯科医院ならではの価値」は何でしょうか?
「痛みの少ない治療」「詳しい説明」「予防重視」「最新設備」など、
患者にとって価値ある要素を具体的に書き出します。
この際、一般的な言葉ではなく
「静脈内鎮静法による無痛治療」「歯科用CTによる精密診断」など
具体的な表現にまでしておくことが重要です。
Step 3: 理想の患者像を描く
上記の分析から、自院に最適な 患者像を具体的に描きます。
例えば「35歳くらいの共働き家庭の夫で、予防に関心が高く、
長期的な口腔健康管理を望んでいる商社勤めの会社員」のように、
できるだけ具体的に設定します。
35歳の患者だけ、商社勤めの患者だけしか診療しない訳ではありません。
あなたの歯科医院やあなたの診療を気に入りそうな
典型的な患者を設定するだけですので、グッと絞り込みましょう。
Step 4: 患者層に合わせた訴求点を設定
理想の患者層が何を重視するか、価値を認めるのかを考え、
それにマッチする訴求点、アピールポイントを設定します。
予防重視の患者には「定期管理による将来のリスク低減」を、
審美に関心のある患者には「自然で美しい仕上がり」を
その実現性や再現性とともに強調するといった具合です。
Step 5: コミュニケーション戦略の一貫化
ウェブサイト、院内掲示物、スタッフの対応・会話まで、
すべてのコミュニケーションを理想の患者層の好みに
マッチさせ、さらに一貫性を持たせます。
例えば「予防重視」を掲げるなら、
待合室には予防の効果・効能・メリットを示す資料を置き、
初診時のカウンセリングでも予防の重要性をきっかけに
話を始めるなど、連携した一貫性を持たせるのです。
この「価値観の明確化」と「理想の患者選び」を進めると、
言葉上は「患者を選ぶ」ようになっていますが、
実際には「選ばれる医院になる」 プロセスを踏襲することになります。
患者層の絞り込みから始める経営改革
「すべての患者に対応する」という姿勢を改め、
特定の患者層にフォーカスすることは、
実は「患者を減らす」のではなく「適切な患者を増やす」戦略です。
明確な患者像を打ち出した歯科医院は
該当する患者層からの支持を集めることになり、
結果的に好意的な口コミや紹介などにも効果が波及します。
私が経営改善の手伝いをした歯科医院でも、
「予防歯科専門」「全てを患者の良い歯並びのために」
「痛みゼロの治療に力一杯こだわる」など、
明確な特色を打ち出した医院ほど安定した経営基盤を築けています。
患者層を絞り込む際に注意すべきは、
「自分がやりたい診療」と「患者ニーズ」の バランスです。
この両者が合致する領域こそ、
あなたの医院の最適なポジショニングとなります。
まずは今日の診療後に、あなたの歯科医院のホームページや
チラシの文言を改めて見直してみませんか?
”どんな症状でも対応します、どなたでもお気軽に”という言葉を、
「〇〇な治療にこだわっています」「こんな方にピッタリの歯科医院」
という具体的なメッセージに変えてみるだけでも、
患者からの反応は変わってくるはずです。
是非ともトライしてみてください。