保険診療の実患者数

「レセプト枚数を増やす」に隠された3つの意義

Last Updated on 2024.7.23 by 近 義武

全国に約6万8千ある歯科医療機関の
およそ8割は保険診療を中心とした体制です。

 

そうなっていれば当然ですが、
月々のレセプト枚数=実患者数は最も気になることの1つですよね。

 

レセコンをほとんどの歯科医院が導入した現在、
経営指標となる様々な数値が簡単にチェックできるようになりました。

 

しかし、常態的にウォッチされている院長はまだまだ少数派です。
それでも、『先生の医院のレセプト枚数は?』とお聞きすると
たいていの院長が即答できます。

 

今回はそれほど関心が高い
「レセプト枚数・実患者数」について話をしていきます。

 

こんにちは、株式会社120パーセント代表、
集患、自費率向上、予防歯科の確立をブランディングで実現する、
ブランド歯科医院構築・経営コンサルタント、
歯科医師の 近  義武 です。

 

ところで、「レセプト枚数を増やすことにどんな意義があるのか?」
あなたがこう聞かれたらなんと答えますか。

「そんなの、売上とか利益を増やすためだろう…?」

こう答える方が多いのではないでしょうか。
実患者数を増やそうとすることが当たり前すぎて
考えたことがない方もおいでかもしれません。

 

確かに「レセプト枚数=実患者数」を増やす意義は
最終的には『売上を増やす』ことになります。

 

その証拠に歯科医院の売上げ方程式にも
患者数という項目が登場します。

 

しかし、「売上を増やす」ことに隠れていますが、
『実患者数=レセプト枚数を増やす』ことには
そのほかにも重要な意義が3つあります。

レセプト枚数を増やす本当の意義 その1
 〜アポイントを埋める〜

 

現在ではほぼ全ての歯科医院が予約制の体制をとっています。
そして我々歯科医師は基本的に、仕事=診療をしなければ
収入を得ることができません。

 

となれば、
『アポイントが埋まる=仕事がある』ということになります。

 

例えば、月20日の診療日数、1日30人のアポ枠が
存在する歯科医院があったとします。

 

患者1人で1枠のアポイントを埋めるなら
全てのアポイントを埋めるには30人×20日=600アポイント、
1ヶ月間に、のべで600のアポイントが必要になります。

 

患者に週1のペースを基本に通院させると、
患者1人あたりの平均来院回数は
1ヶ月間で2〜2.5回くらいになります。

 

すると、実患者数=レセプト枚数は
300〜240枚(人)は必要ということになります。

 

レセプト枚数=実患者数を増やすことで
アポイントが楽に埋まり、診療の機会を確保する…

 

これが歯科医院経営者として
あなたの感覚的に最もしっくりくるであろう、
「レセプト枚数=実患者数」を増やす意義です。

 

ここで、勘のいい方はお気づきかと思いますが、
レセプト枚数を増やさなくても
アポイントは埋めることは可能です。

 

具体的には、アポイントの枠を減らしたり、
患者1人の平均来院回数を上げることで埋められます。
しかし、これらの施策はあまり気が進まないですよね。

 

これには「レセプト枚数を増やす」ことに
別の意義が存在していることを意味しています。

レセプト枚数を増やす本当の意義 その2
 〜レセプト1枚の平均点数を下げる〜

 

あなたもご存知のように
レセプト1枚あたりの平均点数が高いと指導の対象になりますよね。

 

患者のために短期間で集中的に治療をする…
本来なら褒められるべきことのはずなのに
実際には注意や罰則が待っています。

 

理不尽ですし、納得はいきませんが
保険診療を完全放棄できない以上、飲み込むほかありません。
その指導対象の可否の判断基準となるのが
レセプト1枚あたりの平均点数です。

 

レセプトの平均点数を下げるという目標に対して
「レセプト枚数を増やす」ことが有利に働きます。

 

レセプト1枚あたりの平均点数の算出方法はこう表せます。

レセ平均点数=対象月の総保険診療点数÷レセ枚数

 

分母となるレセプト枚数の増加は
レセプト平均点数を小さくする方向に働きます。

 

また、この式を変形させると以下のようになります。

レセ平均点数 × レセ枚数=対象月の総保険診療点数

 

この式から、レセプト平均点数が低いままで
総保険診療点数を大きくしたいなら、
レセプト枚数を増やすべきだということがわかります。

 

ただし、増やした患者のレセプトがどれもこれも
高点数のものばかりになっていたなら
平均点数は上がってしまうことになります。

 

つまり、レセプト枚数を増やすにしても
「点数が低い」レセプトを増やすことをしないと
レセプト1枚あたりの平均点数を下げられないのです。

 

「レセプト枚数=実患者数」が少ないままで
総保険診療点数を増やす目的で診療をがんばると、
レセプト1枚あたりの平均点数は上ってしまう結果となります。

 

あなたが診療をがんばったなら、それを相殺するような
「レセプト点数が低い」患者を増やすよう
努めるしかありません。

 

この認識を持ってレセプト枚数=実患者数を増やすことで
レセプト1枚あたりの平均点数を下げることができます。

 

ここで『そんな面倒なことをしなくても…』
と考えついたあなたは「鋭い!」です。

 

レセプト点数が高くなってしまいそうな患者を
保険診療から切り離して自費診療に転換してしまう!
という手があります。

 

このことは、レセプト枚数=実患者数を増やす、
3番目の意義にも通じています。

レセプト枚数を増やす本当の意義 その3
 〜自費診療の患者を増やす〜

 

保険診療に束縛があるのは仕方のないことです。
今回考えたように、『あなたが診療をがんばったので
レセプト1枚あたりの平均点数が上ってしまった』
という結果を社会保険制度は良しとしていません。

 

このような理不尽に対しての逃げ道として
自費診療への転換は間違ってはいません。

 

感覚的にはあなたも理解していたと思いますが、
自費転換をレセプトの平均点数を下げるための手段と
明確に認識した上で行なっている院長は多くありません。

 

このことを別にしても、レセプト枚数を増やすことには
「自費診療の患者を増やす」側面が意義として存在します。

 

自費診療を増やしたいというのは
どの歯科医院の院長も願っていることの1つです。

 

しかし、最初から自費診療を望んでいる患者を
十分に集められている歯科医院はごくわずかです。

 

あなたの歯科医院のほとんどの患者も
最初は保険診療を望んで来院しています。

 

つまり、自費診療のほとんどの患者は
保険診療を希望する患者から転換されて
そうなっているということです。

 

どの歯科医院でも、どれくらいの割合で
保険診療の患者から自費診療の患者に転換するかは
おおよそ決まっています。

 

式に表してみるとこうなります。

保険診療の実患者数 × 自費診療への転換の割合
=自費診療の実患者数

 

この式を読み解けば、自費診療の患者を増やすためには
保険診療からの転換割合を増やすか、
保険診療の患者の数を増やすか、
あるいはこの両方を成し遂げるしかないとわかります。

 

つまり、自費診療の供給源としてレセプトを増やせば、
他の診療体制や説明方法などを特に変えなくても
自費診療の実患者数は増えるということです。

 

このように、レセプト枚数を増やすことは
自費診療増にもつながっていると認識する必要があります。

レセプト枚数を増やす本当の意義 まとめ

 

レセプト枚数=実患者数を増やすことの3つの意義は
あなたの腑に落ちたでしょうか。
「売上を増やす」以外の意義として、

1、アポイントを埋める(仕事の確保)
2、レセプト1枚あたりの平均点数を下げる
3、自費診療の患者を増やす

と、3つの意義が隠れています。

 

実患者数を増やすことは歯科医院経営上の要の1つであり、
経営者としての院長の最重要となる仕事の1つです。

 

ただし、コストもそれなりに発生しますので、
費用対効果のチェックや成果の測定は常に行うと同時に
1つの方策に依存せぬように代替となる方策を
模索し続けることが大切になります。

考えてみましょう

 

さて、それでは恒例のシンキングタイムです。

 

今回の話の内容がぴったり当てはまるのは
保険診療を主体としている歯科医院になります。

 

自費診療を主体としている歯科医院でも
患者が流入してくる動線が「保険診療」であるなら
3番目の意義は当てはまるはずです。

 

しかし、最初から自費診療を希望している患者を
集めることができている歯科医院には
今回の話は的外れに感じる部分がおおいでしょう。
1番目の意義が当てはまるかな、というところです。

 

「最初から自費診療を希望している患者を集めて
自費診療を主体とした歯科医院にしたい」と
考えている院長はたくさんいますが、
実現できている院長は一握りにとどまっています。

 

そうなるためには『高い技術が絶対に不可欠』と、
ほとんどの院長がお考えですが、実際には違います。

 

技術は並外れていなくとも、自費診療を希望する患者を
十分に集められている歯科医院はたくさんあります。

 

では、最初から自費診療を希望している患者を
集めることができている歯科医院がしていることで
最も重要なことはどんなことでしょうか。

 

Last Updated on 2024.7.23 by 近 義武

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