娘のピアノ練習が教えてくれたこと
私の知人に、娘にピアノを習わせ始めた母親がいます。
最初の数日は嬉しそうに鍵盤を叩いていた娘も、
一週間もすれば飽きてしまい、
ピアノの前に座ることすらしなくなりました。
典型的な三日坊主です。
母親は焦りました。月謝も払っているし、
せっかく買ったピアノも埃をかぶっている…
「もう辞めさせようか」と悩んだそうです。
しかし彼女は、ある日こう考え方を変えました。
「毎日続けなくてもいいじゃないの!
3日弾いて、2日休んで、また1日弾く。
それでもゼロよりはマシだわ…」
そして娘に言いました。
「今日はピアノやる?やらない?やらなくてもいいよ。
でも明日また弾きたくなったら弾いてね」
すると不思議なことに、
娘は気が向いたときにピアノの前に座るようになり、
半年後にはちゃんと一曲弾けるようになっていたのです。
母親はこう言いました。
「継続って、途切れないことじゃないんですね。
再開し続けることなんだって気づきました」
この逸話を聞いて、先生もきっと、
新しい取り組みを始めては三日坊主になり、
自分を責めた経験を思い出したりしませんでしたか?
「朝礼をやろう」と決めたのに一週間で途絶えた…
「カウンセリングを強化しよう」と決めたのに、
忙しさに追われて元に戻った…
SNSで発信しようと思ったのに、3回の投稿で止まった…
そしてこう思ったのではないでしょうか?
「だから経営がうまくいかないんだ」
違います。
継続できないのは、
先生の能力や根性の問題ではありません。
継続の”技術”と”コツ”を知らないだけなのです。
私は長年、歯科医院の経営改善に携わってきましたが、
成果を出しやすい院長に共通しているのは
「完璧に続ける力」ではなく、
「不完全でも再開し続ける力」でした。
今日はその技術を、
あなたにお伝えします。
「三日坊主の連続」が成果を生む
多くの院長が陥る罠があります。それは
「続けられないなら、やらないほうがマシだ」
という完璧主義です。
たとえば、ある院長は
患者への治療説明を丁寧にしようと決意しました。
最初の一週間は毎回15分かけて説明していましたが、
予約が詰まった日に5分で済ませてしまい、
「ああ、もうダメだ。中途半端になるくらいなら意味がない」
と、そこで辞めてしまったのです。
これは非常にもったいない。
なぜなら、一週間でも丁寧に説明した患者は
確実に満足度が上がっており、
その中から自費診療を選んだ患者もいたからです。
つまり、「完璧に続けること」よりも、
「不完全でも行動した回数」のほうが、
実は成果に直結するのです。
ではどうすればいいのか。
答えは実にシンプルです。
私が指導したある院長に、
「カウンセリング実施記録ノート」を
つけてもらいました。内容は一行で良いと伝えました。
「◯月◯日、忙しくて3分だけ」
これだけです。
するとその院長は、一ヶ月後に
自分のノートを見返して驚いたと
興奮気味に私に話してくれました。
全然ダメだと思ってたけど、
月に18回もカウンセリングしてました!」
そして、この「やった記録」を見ることで、
自己肯定感が生まれ、
自然と継続する意欲が湧いてきたのです。
もうひとつ重要なのが、
一年後の目標は遠すぎて実感が湧きません。
「3ヶ月で新患を月5名増やす」
「2ヶ月でスタッフ全員に感謝を10回伝える」
こうした小さなゴールなら、
達成可能性が見えるため、挫折しにくくなります。
そして、もし途中で途絶えても、
また再開すればいいだけです。
3日坊主を5回繰り返せば、15日分の行動になります。
完璧に30日続けられなくても、15日行動した人は、
0日の人より圧倒的に前進しているのです。
自分を褒める技術が経営者の推進力に
もうひとつ、
継続において決定的に重要なことがあります。
それは「自分を褒める」ことです。
院長という立場は孤独です。
スタッフは先生を褒めてくれません。
患者も、よほどのことがなければ感謝を口にしません。
家族も、経営の苦労を理解してくれるとは限りません。
だからこそ、
自分で自分を褒める仕組みを
設計する必要があるのです。
私が最も効果的だと確信しているのは、
「最初の数回の行動で、盛大な褒美を自分に与える」
ことです。
たとえば、ある院長は
「週に一度、スタッフと15分の面談をする」
という目標を立てました。
そして私はこう提案しました。
「3回の面談を終えたら、その日の夜に
大好きな店で一人祝杯をあげてください。
さらに5回やったら、
ずっと欲しかった時計を買ってください」
院長は笑いながらも、実行しました。
すると不思議なことに、
面談が「苦行」ではなく「ご褒美への道」に変わり、
自然と続けられるようになったのです。
重要なのは、
ゴール達成時ではなく、
行動開始後の早い時点で褒美を設定すること。
なぜなら、
最初のハードルを越えることが最も難しいからです。
2回目、3回目と続ければ、
褒美は少しずつもったいぶってもいい。
習慣化してしまえば、
褒美がなくても続けられるようになります。
そしてもうひとつ。
鏡の前で自分を褒めてください。
「今日もよくやった」
「3日も続けた自分、すごいじゃないか」
声に出して、自分に言ってあげるのです。
最初は照れくさいかもしれません。
しかし、これは冗談ではなく、脳科学的にも
自己肯定感を高める効果が実証されています。
他人が褒めてくれないなら、
自分が自分の最高の応援者になればいい。
最後に、こうも言えます。
「努力は金になる」と信じられることに努力しましょう。
どんなに継続しても、
成果に結びつかないことに時間を費やせば、
心は折れます。
だからこそ、
「この行動は患者を増やす」
「この習慣は自費率を上げる」
と確信できることに、エネルギーを注ぐべきなのです。
完璧でなくていい。再開し続ける
ここまでの話をまとめましょう。
継続とは、途切れないことではありません。
再開し続けることです。
三日坊主でも構いません。
一週間空いても構いません。
大切なのは、「もうダメだ」と諦めずに、
もう一度始めることです。
そして、そのために必要なのは次の3つです。
・2〜3ヶ月の小さなゴールを設定すること
・最初の行動に盛大なご褒美を用意すること
今日、先生にやってほしいことはひとつだけです。
ノートを一冊用意してください。
そこに「行動記録」とタイトルをつけて、
今日やった小さな行動を一行書いてください。
「スタッフに『ありがとう』と言った」
「患者に3分多く説明した」
それだけでいいのです。
明日書けなくても、構いません。
明後日、また一行書けばいいだけです。
完璧を目指さなくていい。
不完全でも、再開し続ける院長が、
最終的に成果を手にします。
私はそれを、
何十というクリニックで見てきました。
あなたもきっと、できます。
今日から、始めましょう。









