なぜ勉強熱心な先生ほど、集患で苦戦するのか
先日、ある院長先生とお話しする機会がありました。
年間100万円以上をセミナーや研修会に
投じている勉強熱心な方です。
「この技術を身につければ、患者の満足度が上がる」
「最新の知識を学べば、より良い治療が提供できる」
そう考えて、高額な受講料も迷わず支払っています。
これは紛れもなく「投資」の発想です。
将来のリターンを見込んで、今お金を使う。
開業そのものも同じ発想ですよね。
数千万円の借入をしてでも、将来の利益を見越して
クリニックを構えたはずです。
ところが不思議なことに、
集患となると途端に「投資」の発想が消えてしまう。
「できるだけお金をかけずに患者を増やしたい」
「無料でできる方法から試してみよう」
こう考える先生が実に多いのです。
技術習得には惜しみなく投資するのに、
なぜ集患には投資できないのか。
ここに、多くの歯科医院が集患で
苦戦し続ける根本的な原因が潜んでいます。
“無料で集患”という幻想
「真面目にやっていれば、
いずれ口コミで患者は増える」
あなたも一度は
こんな話を聞いたことがあるでしょう。
たしかに30〜40年前なら、
それが通用した時代もありました。
歯科医院の数も少なく、
競合がいなければ黙っていても患者は来ました。
しかし今は違います。
コンビニより多いと言われる歯科医院。
患者はスマホで簡単に比較検討できます…
「真面目にやれば報われる」は、
もはや宝くじを当てにするようなものです。
それでもこの神話が
語り継がれているのはなぜか?
理由は単純です。
「無料」という言葉があまりにも魅力的だから。
費用ゼロで新患が来るなら、確かに理想的です。
無から有を生み出せるなら、誰だってそうしたい。
だから、集患施策を検討する際に
院長先生方の関心が向くのは
無料か低コストの方法ばかりになりがちです。
SNS運用、ブログ更新、
Googleビジネスプロフィールの最適化…
「お金がかからないなら、まずはそこから」
この発想自体は間違いではありません。
問題は、
本当に「費用がかかっていない」のかどうか。
ここを正しく見極めないと、無料のつもりが
実は高くついていた、という事態に陥ります。
見えないコストが経営を蝕む
時間と労力という”隠れた支出”
無料の集患施策には、
目に見えないコストが潜んでいます。
具体的には次の4つです。
① 手間ひまがかかる
SNSの投稿、ブログ記事の作成、
口コミ返信、写真撮影…
これらを継続するには
膨大な作業量が発生します。
診療の合間に対応するか、スタッフに任せるか…
どちらにしても誰かの労働力を消費しています。
② 成果まで時間がかかる
無料施策の多くは
効果が出るまでに時間を要します。
SEO対策なら半年から1年。
口コミの蓄積には数年単位。
その間、資金繰りは
どんどん厳しくなっていくわけです。
③ 失敗のリカバリーが難しい
時間をかけた施策が不発に終わったとき、
失った時間は戻ってきません。
有料広告なら反応を見て
すぐに軌道修正できますが、
無料施策はそうもいかないということです。
④ 患者の質が下がるリスク
本来、集患の精度を上げるには
資金が必要です。
どんな患者に来てほしいのか、
その属性を明確に絞り込む…
ターゲットに届く媒体を選び、
響くメッセージを練り上げる…
この精度を高めるための
リサーチや専門家への依頼、
広告のテスト運用には費用がかかります。
無料にこだわると、
ここに資金を投じられない。
結果として来てほしい患者ではなく、
たまたま目にした人が来院する。
自由診療の成約に苦戦し、
ドタキャンに振り回される…
そんな状況を招きやすいのです。
あなたの時間単価を考えたことはありますか?
月商300万円で
診療時間が月160時間なら、
1時間あたり約2万円の価値がある。
無料施策に毎月10時間費やせば、
それは20万円のコストと同じです。
投資と浪費を見分ける視点
倹約は大切です。
無駄な出費を抑えることは、
日本人の美徳とも言えるでしょう。
ただし、歯科医院経営においては
倹約すべき部分を選ぶ必要があります。
すべての支出を一律に削ろうとすると、
成長のチャンスまで潰してしまいかねません。
ここで考えるべきは、
「投資」と「浪費」の違いです。
では、集患に関する費用は
どちらに該当するでしょうか。
たとえばホームページ制作費。
ただ見栄えの良いサイトを作るだけなら、
それは浪費かもしれません。
しかし、ターゲット患者を明確にし、
その患者に響くコンテンツを設計し、
問い合わせ導線を最適化する。
そこまで考え抜いたホームページなら、
それは間違いなく投資です。
広告費も同様です。
何となく出稿して反応を待つだけなら、
お金をドブに捨てているようなもの。
一方で、効果測定をしながら
改善を重ねていく広告運用は、
確実にリターンを生み出します。
重要なのは、金額の大小ではありません。
その支出が将来の利益につながるかどうかです。
無料の施策であっても、
隠れたコストを把握できているのか、否か。
この視点で、あなたの歯科医院の
支出を見直してみてください。
“投資思考”への第一歩
ここまでの内容を整理しましょう。
① 集患にも「投資」の発想が必要
セミナー受講や開業には迷わず投資できるのに、
集患には投資を渋る先生が多い。
これが集患に苦戦する根本的な原因です。
② 無料施策には隠れたコストがある
手間ひま、時間、失敗リスク、そして患者の質の低下。
目に見えないだけで、確実にあなたのリソースを
消費しています。
③ 投資と浪費を見分ける
支出の大小ではなく、
将来のリターンにつながるかどうか。
この視点で判断することが、
経営を安定させる鍵です。
今日から何を始める?
まずは、現在の集患施策にどれだけの
「隠れたコスト」がかかっているかを
書き出してください。
・ブログ更新は誰が担当しているか?
・その時間を時給換算するといくらか?
紙に書き出すだけで構いません。
「無料」だと思っていたものに
実はいくら支払っていたのか。
それが見えた瞬間、
あなたの集患に対する考え方は
大きく変わるはずです。
投資すべきところに投資する。
その判断ができる院長だけが、
持続的な成長を手にできるのです。









