こんにちは、株式会社120パーセント代表、
ニッチな自由診療でも「先生のその治療が受けたい!」患者が集まる歯科医院構築、
クリニックの経営アドバイザーで歯科医師の 近 義武 です。
「ホームページからの患者を増やしたいのですが…」
「広告宣伝費をかけてHPにアクセスを集めれば、患者は来ますよね?」
「良いホームページなのにどうして…」
こんな相談というか、嘆きの言葉を聞かされることが最近増えています。
「診療に誠心誠意、取り組んでいるのに患者が来ない…」
という悩みよりはレベルが高い「お悩み」なのは確かですが、
昨今の院長先生が結構ハマりやすい”落とし穴”の1つです。
「良く見せる」ことの落とし穴
先日、ある歯科医院の院長先生からこんな相談を受けました。
「HPをリニューアルしてバエる症例写真をたくさん掲載したら、
新患は増えたのですが、その再来院率や通院継続率が低くて…」
これは意外と多くの院長先生が陥る典型的な事例です。
広告効果を高めるために、HP上で最高の症例写真や
理想的な治療結果を見せることは、決して悪くはありません。
しかし、そこには見過ごせない”落とし穴”が存在します。
患者の期待値を過度に高めてしまうと、
実際の治療結果との間にギャップが生じ、
「思っていたのと違う」という失望感を生み出してしまうのです。
あなたのクリニックのホームページは、
患者を引き寄せる「入口」であると同時に、
その後の長期的な関係構築の「土台」にもなっています。
この両者のバランスをどう取るかが、
持続的な医院経営の鍵になっていることを認識する必要があるのです。
患者の期待値と現実のギャップがもたらす影響
私が実際にコンサルティングをした歯科医院や
相談を受けた千名以上の院長先生の事例から
見えてきた共通課題…
それは「期待値と現実のギャップ」です。
ある先生は、最新のCAD/CAMシステムを導入し、
HPでは「たった1日で…」と謳っていました。
確かに新患は増加しましたが、
実際の治療では調整に時間がかかったり、
症例によっては複数回の来院が必要だったりと、
患者の期待との間にズレが生じていたのです。
患者の期待値が過度に高まると、
以下のような悪循環が発生します。
まず「思っていたのと違う」という失望感から
不満が生まれ、それが口コミとなって拡散します。
次に、治療の質自体は高くても満足度が下がり、
信頼関係の構築が難しくなります。
さらに、主訴の治療が終わった後の関係性も希薄になり、
予防歯科やメンテナンスへの移行がスムーズに進まなくなるのです。
ホームページで「良く見せる」ことと
「誠実に伝える」ことのバランスが、
患者との長期的な関係構築には不可欠なのです。
初期治療終了後のラポール構築が難しくなる理由
なぜ期待値と現実のギャップが、
継続的な患者との信頼関係構築に悪影響を及ぼすのでしょうか?
歯科医療の本質は、主訴の解決だけでなく、
その後の口腔健康維持、患者の豊かな人生のアシストにあります。
しかし、理想化された広告表現に引き寄せられた患者は、
主訴解決を「ゴール」と捉える傾向が強いのです。
審美治療の美しい「アフター写真」だけを見て来院した患者は、
治療完了後のメンテナンスの重要性を理解せず、
「もう完璧の治療が終了したのだから来院不要」と考えてしまいがち。
また、過度な期待を抱いた患者は、
治療結果に少しでも不満があると、
そのまま他院へ流れやすくなります。
期待値が高すぎた患者の再来院率は、
適切な期待値を持った患者と比較して
約40%も低いという調査結果もあります。
患者の期待をコントロールすることは、
単なるマーケティング戦略であるだけではなく、
真の医療提供のための重要な医院経営戦略なのです。
適切な期待値コントロールの方法
患者の期待と現実のバランスをどう取るべきか?
まず最も重要なのは、ホームページや広告で
「理想の結果」だけでなく「治療プロセス」も伝えることです。
ある歯科医院では、
セラミック治療の美しい症例写真と併せて
「通常2〜3回の調整が必要です」と明記したところ、
患者満足度が32%向上しました。
また、初診カウンセリングでも「期待値調整」が鍵となります。
「治療で可能なこと」と「限界があること」を丁寧に説明し、
視覚資料も十分に活用しましょう。
ある歯科医院では、タブレットを使った治療説明に
「リスクと限界」の項目を追加した結果、
治療後のクレームが半減しました。
さらに、診療開始前の段階からメリットだけでなく
「治療後のメンテナンスの重要性」を伝えることで、
患者の意識を「問題の解消=完結」から
「継続的な口腔管理=エンドレス」へと変化させ始めます。
初診時にメンテナンス計画まで説明する歯科医院では、
予防歯科への移行率が47%から76%に向上した例もあります。
「良く見せる」ことと「正直に伝える」ことは、
決して相反するものではないのです。
長期的な信頼関係を築くコミュニケーション戦略
信頼関係構築の核心は「期待を超える」ではなく
「約束を守る」ことにあります。
過度な期待を抱かせず、「約束したことを確実に実現する」
このプロセスこそが患者の信頼を獲得するのです。
具体的には、次の三つの「信頼構築サイクル」を実践してください。
まず「小さな約束を確実に守る」ことから始めましょう。
例えば、説明した治療時間を厳守する、
痛みについての説明を正確にするなど、
小さな約束の積み重ねが大きな信頼につながります。
次に「予測可能性を高める」ことです。
治療の各ステップで「次回はこうなります」と伝え、
その通りになることで安心感が生まれます。
最後に「患者教育の継続」です。
定期的なニュースレターやメール配信、SNSなどを使って
口腔健康の重要性を繰り返し伝えることで、
患者の健康意識と来院意欲を高められます。
これらのコミュニケーション戦略は、
単なる患者満足だけでなく、
あなたの歯科医院の収益安定化にも直結するのです。
まとめ – 患者の期待と信頼のバランス
歯科医院経営において「HPの集患力」と
「長期的な患者関係構築」は、決して二律背反ではありません。
重要なのは、魅力的な広告と誠実な情報提供のバランスです。
今日からできる具体的行動として、
①HPに「治療プロセスと限界」の情報を追加する
②初診カウンセリングで「可能なことと不可能なこと」を明確に伝える
③治療開始時から「メンテナンスの重要性」を説明する
この3つを実践してください。
患者さんの適切な期待値形成と信頼構築こそが、
安定した歯科医院経営の基盤となります。
明日からの診療に、
ぜひこの「期待値マネジメント」を取り入れてみてください。