現状の把握

あなたの経営成績がわかる3つの指標(上)

       

この記事の公開は2020年8月の上旬です。
今年は新型コロナウィルス感染の影響で
夏休みも遠出を控えめにする方も多いでしょう。

 

そんなあなたにあえて、経営のお勉強の時間です。
今回のテーマは数字も絡んでいて難易度がやや高めです。
休みの日の頭の体操のつもりで読んでみてください。

 

こんにちは、株式会社120パーセント代表、
集患、自費率向上、予防歯科の確立をブランディングで実現する、
ブランド歯科医院構築・経営コンサルタント、
歯科医師の 近  義武 です。

 

さて、コロナ禍が収束せず、あまり話題にされなくなっていますが、
歯科医院経営がとてもリスキーで、負け組歯科医師は悲惨な目に遭っていると
世間に流布されていた時期がありました。

 

歯科医師は「億単位の借金があるのに平均年収が約700万円」
「5人に1人が年収300万円以下」などといわれたり、
余計なお世話だという数字が一人歩きしていたものです。。

 

確かに、供給過剰とコロナの影響で歯科医院経営は楽ではありませんし、
自虐的なネタとしては面白いかもしれませんが
懐具合の内実なんて表面上の売上や年収で計り切れるものでもありません。

 

とは言え、これらの数値より自分の歯科医院の経営状況が
多少上回っているから問題ないと安心するのは楽観が過ぎます。

 

この数値はあくまでも平均であって、その集計には
卒後まもない研修医や自宅兼用の診療室で借金も家賃もなく、
趣味で診療をしている老齢のドクターなども含んでいるからです。

 

では実際に我々歯科医院の院長は、何をもって、あるいは
どんな数値をもって歯科医院経営の成績を見極めたら良いのでしょうか。

 

細かくあげていけばきりがない話になってしまうので、
今回は具体的な指標・数値を3つだけ紹介して説明していきます。
あなたの歯科医院の現状を把握する一助として活用してください。

本題の前にもう1つ「経営者」について

 

歯科医師に限らず、弁護士であろうと花屋だろうと
開業して店を構えていれば基本「経営者」です。
「被雇用者」「労働者」「サラリーパーソン」ではなくなります。

 

経営者とサラリーパーソンとでは『収益構造』が全く異なります。
あなたが勤務医だった頃なら、例え歩合制であったとしても
必要経費にはほぼ無関係に給与が貰えましたよね。
それがサラリーパーソンであることによる収益構造の特色だからです。

 

開業して経営者となってからは、
売上から様々な経費の支払いをした残りがあなたの収入になっています。
ですから、売上が多くても経費がさらに多ければ
収入はゼロどころかマイナスになる可能性もあります。

 

医療法人の形態で経営をされている方もおいででしょうが、
節税のための方便と考えれば「経営者」としてさほどの違いはありません。
この「経営者の収益構造」を頭に入れた上で
本題へと話を進めていきましょう。

あなたの歯科医院の現状を知るために

 

「忙しい割に、収入が少ない…」
「患者も売上もあるのに、資金繰りの苦労が絶えない…」
「結構長くやっているのに手元にお金が残らない…」

 

あなたはこんな思いをしていないでしょうか。
実際に歯科医院の収益や仕事の実感が
手元の現金と直感的に結びつきにくいのは事実です。

 

保険診療では窓口負担分は当日入金となりますが
残金の入金は2ヶ月ほど先のことになります。
自由診療では着手金として前払金を受け取る場合もあります。

 

支払いも月払いになっている取引先が多いでしょうし、
クレジットカード払いなどを併用しいていれば
納品と実際の現金支払いの用意にズレがあります。

 

経理処理にしても、減価償却や措置法26条の適用など
わかりづらい項目がたくさんあります。

 

しかし、そういったことを差し引いたとしても、
もしもあなたが、現時点での経営状況を理解しないままなら
放漫経営とほとんど変わらない状態となって
やっぱりこんな思いをしがちになります。

 

「そういうのは税理士に任せているから…」
「決算書を見たってよくわからないし…」
「そんな勉強するよりもっと大切なことがあるから…」

 

確かにその通りです。私も税理士は使っています。
しかし、あなたが歯科医院の院長として、経営の責任者として、
思い通りの診療をしながら十分な収入を得たいのであれば、
経営状況の定点観測とその意味は理解しておかねばなりません。

 

収入に余裕がなければ、歯科治療に関する最新の知識も
その知識を具現化する診療機器も手に入れることはできません。

 

良質な診療の礎や、経営改善の道しるべにするために
あなたの歯科医院の現状をきちんと理解するところから始めましょう。
そのための3つの数値を順を追って解説していきます。

 

ちなみに、具体例があると一層分かりやすくなります。
手元にあなたの歯科医院の直近の決算書を用意すると
その場で経営判断ができますよ。

あなたの経営成績がわかる3つの指標 その1
〜従業員1人あたりの粗利〜

 

まずはこの図を見てください。
これは歯科医院経営の収益構造がどういう内訳になっているかを示した図です。

それぞれの項目について解説していきます。

売上

売上は「総売上」「年間医業収益」などと称されることもあります。
社会保険診療報酬、自由診療報酬、物品その他の販売報酬、
行政・歯科医師会などからの嘱託報酬や各種手当、講演料・講話料、
など、歯科医院に入ってくる収入の総合計です。

 

変動費

売上に比例して増加する経費です。
言い方を変えるなら、診療を行わなければ発生しない経費です。

 

技工料、原材料費(金属代、CRF用ペーストなど)、
販売商品仕入原価(ケアグッズの仕入れ値など)、
診療用消耗品仕入原価(薬品、グローブ、衛生用品など)、
など、患者に診療を行なって初めて発生する費用ともいえます。

 

粗利

売上から変動費を差し引いた額を「粗利」と呼びます。
変動費以外の経費が引かれていない状態での「利益」です。

粗利=売上ー変動費
売上=粗利+変動費

 

この粗利からさらに「固定費」を引くと「利益」になります。
少なくとも固定費よりも多く粗利を上げなければ
歯科医院経営は赤字ということになります。

 

従業員1人あたりの粗利

粗利を従業員数で割ったものが『従業員1人あたりの粗利』です。
従業員数はあなたを含めた正社員の数と考えてください。

従業員1人あたりの粗利=粗利÷従業員数

 

パート従業員やアルバイトは勤務時間・賃金等によって
正社員に換算してください。

 

例1
売上…12,000万円(年間)
変動費…1,800万円
従業員数…10人(院長+勤務医+スタッフ8名相当)

→粗利…12,000万円ー1,800万円=10,200万円
→従業員1人あたりの粗利…10,200万円÷10=1,020万円

 

例2
売上…6,000万円(年間)
変動費…600万円
従業員数…3人(院長・スタッフ2名相当)

→粗利…6,000万円ー600万円=5,400万円
→従業員1人あたりの粗利…5,400万円÷3=1,800万円

 

『従業員1人あたりの粗利』は高ければ高いほど
従業員1人1人が付加価値を生み出していることになります。

 

目標値は「1人あたり2,000万円」です。
変動費をおさえて、かつ適正な人数の従業員で
無駄の少ない診療体制を構築しなければなかなか届きません。

 

『従業員1人あたりの粗利』は比較的簡単に計算ができる数値です。
現在はほとんどの歯科医院でレセコンを導入していますから
毎月の売上や変動費の把握は難しくないからです。

 

3ヶ月に1度、可能なら毎月、『従業員1人あたりの粗利』を
過去1年間の数値をもとに計算をしてみると
数値の推移とともに見えてくるものがどんどん増えていきます。

 

例えば、『従業員1人あたりの粗利』の増大を目指すことで
「粗利率」の高さと過剰な人員の配置に留意することになります。
「粗利率」は、粗利を売上で割ると算出されます。

粗利率(%)=粗利÷売上×100

 

この「粗利率」の大きい財務体制を構築することで
あなたには「働きに見合う分の利益」が手に入ることになります。

 

一般的な歯科医院の平均粗利率は75〜85%です。
これは小売店の30〜40%を大きく上回っています。

 

粗利率が高いということは「原価率」が低いということ、
つまりビジネスとしては有利ということになります。

 

ただし、歯科医院経営は初期投資が大きいなど
他の業種よりも不利な点もありますから
手放しで喜べないことはあなたもご存知の通りです。

あなたの経営成績がわかる3つの指標 その2
〜粗利に対する人件費の割合〜

 

先ほど見てもらった歯科医院経営の収益構造を示す図です。

「粗利」をさらに分解していきます。

粗利=固定費+利益
固定費=人件費+その他の経費

それぞれの項目の意味は以下の通りです。

 

固定費(固定経費)

変動費が売上に応じて増減するのに対して、
固定費は売上がなくても発生する経費という意味です。
人件費や家賃などが代表的なものです。

 

注意点が1つあります。
俯瞰的に経営を見るために、変動費以外の経費は
固定的に発生する、発生しないに関わらず
すべて「固定費」に分類することにしてください。

 

利益

粗利から固定費を差し引いたものが利益となります。

利益=粗利ー固定費

 

粗利が存在しているので難しそうに見えますが、
「変動費」と「固定費」の合計が「総経費」です。

総経費=変動費+固定費

 

「売上」から「経費」を引いた残りが「利益」という
当たり前のことを言っているに過ぎません。

利益=売上ー経費

 

人件費

歯科医院における経費のうち
かなり多くの割合を占めるのがこの「人件費」です。

 

なおかつ、院長であるあなたが
ある程度コントロールができる数値でもあります。

 

一般的な歯科医院の人件費は売上の20〜25%程度です。
医療法人の場合は少し増えて25〜30%のところが多くなります。

 

その他の経費

固定費のうちの人件費以外の経費のすべてがここに入ります。
テナント賃貸料、諸会費、光熱費、講習会費等、
多くの経費がここに分類されることになります。

 

粗利に対する人件費の割合

「労働分配率」という言い方をする場合もあります。
粗利に対する人件費の割合は人件費を粗利で割って求めます。

粗利に対する人件費の割合(%)=人件費÷粗利×100

 

「人件費の水準はどれくらいが良いか?」という質問を良く受けます。
多くの院長先生が売上に対する人件費の割合を気にされますが的を外しています。

 

人件費は基本的には固定費なので「売上」に連動して上下しません。
賞与等で多少は変動しますがわずかなものです。
売上が下がっても人件費はすぐに下げられないのです。

 

ですから「人件費」は「粗利」の1部であり、
粗利に対する割合として捉えるべきものなのです。

 

この『粗利に対する人件費の割合』は人件費の額が同額のままでも
『粗利率』が上昇するだけで小さくなります。

 

歯科医院経営においては、売上が上がると人員を増やしてしまい
人件費を上げすぎるというミスを犯しがちです。

 

売上を上げることは重要ですが、
変動費率の低い診療メニューを採用したり、
人件費を含めた固定費が大幅に増大しないよう
現在持っているリソースを効率よく活用しつつ
施策を打つことが重要になります。

 

固定費に大きな割合を占める人件費を
チェックすることができる指標の1つが
この『粗利に対する人件費の割合』なのです。

続きは次回にお話ししましょう。

…………………………………………………………………………

考えてみましょう

さて、それでは恒例のシンキングタイムです。

 

本文中に出てきた「措置法26条」は正式には
「租税特別措置法26条による所得計算」といわれるものです。

 

簡単にいうと、歯科医院の事業所得を計算する場合、
年間の社会保険診療報酬の額が5,000万円以下の場合には
特例計算により概算経費により所得を計算できるというものです。

 

詳細の説明は今回の本筋ではないので控えますが、
要するに、「税金が安くなる制度がある」ということです。

 

ところが、「税」の専門家である税理士や会計士の中には
この「措置法26条」の存在を失念している方がいます。

 

さらには、知っていてもその処理をしなかったり、
有利な特例の存在を調べもしない方が珍しくありません。
専門家なのに、なぜこんな行動をするのでしょうか?

 

念のため言及しておきますが、税理士や会計士が
全員こうだというつもりはありません。

 

優秀で良い方も確実に存在しています。
大部分のそうでない方の
このような「わけがわからない行動」の
理由を考えてみてください。

 

 

せっかくここまで読んだあなたなら
ぜひとも、考えてみてください!
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(ここは考える時間です)
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それでは答えです。

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