患者はあなたの技術ではなく○○に対価を払っている

 

先生は昨日の診療で、どんな患者に出会いましたか？

痛みに耐えかねて飛び込んできた患者、
定期検診に訪れた患者、
インプラント相談に来た患者…

彼らは表面上は様々な目的で来院していますが、
その奥に共通する本質をご存知でしょうか？

痛みから解放されたい患者、
美しい笑顔を取り戻したい患者、
食事を楽しみたい患者…

彼らの来院理由はまちまちでも、全ては
「今よりも良い未来」への切実な願望なのです。

しかし、ここで一つの真実があります。

あなたの歯科医院に喜んで来ている患者など
ほとんどいないのです。

この真実は耳が痛い話かもしれませんが、
患者にとって歯科治療は「目的」ではなく
あくまで「手段」でしかありません。

最新の設備を導入した、ある院長は私にこう言いました。
「これで、患者数が増えない理由が分からない」と。

しかし考えてみてください。

患者は最新の歯科用CTや
精密なCAD/CAMシステムに興味があるのではなく、
実現する「未来の自分」にしか興味はないのです。

患者が支払う「対価」の本質

あなたは、患者が診療費を支払う時の
表情をじっくり観察したことがありますか？

多くの患者は「やむを得ず」という表情を浮かべています。
なぜでしょうか。

それは、患者が本当に欲しいのは
歯科治療そのものではないからです。

例えば、ある50代の患者は痛みで来院し、
根管治療を提案されると渋い顔をしました。

しかし「この治療で痛みから解放され、
好きな食事を楽しめるようになりますよ」と伝えると、
すぐに納得したのです。

患者はあなたの治療技術や設備に
お金を払っているのではありません。

彼らは「患者自身が得たい未来」に対して
お金を払っているのです。

極端な話、歯科医師の技術や
歯科医院の設備がどんなものであれ、
患者が求める「未来」さえ手に入れば満足なのです。

これは決して治療の質が
重要ではないという意味ではありません。

むしろ、優れた技術や最新設備は
患者の「未来」を確実に実現するための必要条件です。
しかし、それだけでは十分ではないのです。

ある院長は「セラミック修復の技術には自信があるのに、
自由診療の提案がなかなか通らない」と相談に来ましたが、
「より良い材料」「長持ちする治療」中心の説明をしていました。

患者が聞きたいのは材料でも、長持ちかどうかでもなく
「この治療で私の何が変わるのか」
「この対価で手に入る未来は何か」なのです。

先生方の中には、臨床技術を磨くことだけに
注力している方が少なくありません。

もちろん技術は大切です。
しかし、それと同じくらい重要なのは、
患者が求める「未来」を明確に示し、
その実現を約束することです。

なぜ患者は「院長の人間性」で選ぶのか

私の知人が、2軒の歯科医院のどちらを受診しようか、
ホームページを比較しながら意見を求めてきたことがありました。

驚いたことに、彼女の比較基準は
歯科医師の臨床経験や設備の充実度では
まったくありませんでした。

これは特殊な例ではありません。
ほとんどの患者には、歯科医師の技術的優劣を
見極める知識も眼力もないのです。

ここで少し冷静に考えてみてください。

患者は歯学部で6年間学んだわけでも、
数千時間の臨床経験があるわけでもありません。

彼らにとって「適切な窩洞形成」と
「過剰形成」の違いを判断することは不可能なのです。

当然患者は“技術力の優劣”や“設備の最新性”を比較できません。
レントゲンやチェアの仕様なんて気にできないのです。

では、患者は何を基準に
歯科医院を選んでいるのでしょうか？

患者は院長の…

この記事の公開は2026年1月31日まで