なぜ患者サイトに求人情報を載せると失敗するのか

なぜ多くの歯科医院が人材確保に苦戦するのか

先日、ある大手企業の採用責任者と
話をする機会がありました。

彼は「情報発信の場所と方法が
採用成功率を左右する」と語りました。

これを聞いた瞬間、多くの歯科医院が抱える
人材確保の悩みが頭に浮かびました。

このような悩みは、院長先生の
耳に痛いほど馴染みがあるのではないでしょうか？

歯科衛生士の有効求人倍率は20倍以上と言われる昨今、
理想のスタッフを確保することは
歯科医院経営の最重要課題となっています。

しかし、多くの歯科医院では
採用活動に対する戦略的アプローチが
十分に練られていません。

特に最近増えているのが、患者向けの
公式ホームページに求人情報を
載せるという方法です。

そう考えての判断なのでしょう。

でも、実はこの方法こそが
スタッフ採用の大きな落とし穴なのです。

一見、効率的に思えるこの方法が
なぜ効果を上げられないのか？

その理由と解決策を、200以上の歯科医院の
経営改善を成功させてきた経験から
お伝えしていきます。

患者集患と人材採用は別物

「同じ情報を見せれば効率的」

多くの院長先生がこう考えて、
患者向けホームページに求人情報を掲載しています。

しかし、患者と求職者では
情報の受け取り方が根本的に異なります。

例えば、あなたの歯科医院で導入している
最新のCTスキャナーの情報。

患者にとっては
「精密な検査ができる安心感」を意味しますが、
求職者にとっては
「最新機器を使った技術を習得できるか」
というキャリア視点の関心事です。

同じ情報でも、受け取る側の視点が
まったく違うのです。

さらに言えば、患者が知りたいのは
「私の症状は改善するか」「痛みは少ないか」
という自分自身に関する情報です。

一方、求職者が知りたいのは
「この医院で働くとどんな未来が待っているか」
「院長の人柄や理念は自分に合うか」といった
将来設計やキャリアに関わる情報です。

ある歯科医院では、
患者向けのホームページに
求人情報を掲載していました。

トップページ（ランディングページ）にも
「スタッフ募集中」のバナーを置いて、
閲覧者の導線も確保していましたが、
応募者は年間わずか2名に留まっていました。

別の医院では、求人専用サイトを立ち上げ、
スタッフの声や成長ストーリーを掲載したところ、
質の高い応募者からの問い合わせが
月に3〜4件、コンスタントに集まるようになりました。

この違いは何でしょうか？

それは「求職者の心理に寄り添った情報」を
提供できているかどうかです。

患者向けサイトに求人情報を載せるのは
レストランのメニュー表に求人広告を
載せるようなものです。

来店客は美味しい料理を探しに来ており、
求人に興味はありません。

同様に、あなたの歯科医院のサイトを訪れる患者は
求人情報ではなく治療情報を求めており、
求人情報はノイズにしかならないのです。

「二兎を追うものは一兎をも得ず」という諺があります。

患者集患と人材採用、両方を成功させたいなら
それぞれについて最適化された戦略が必要なのです。

効果的なスタッフ採用戦略

求人専用サイトを作る。

これが、スタッフ採用において
成功する歯科医院が最低限レベルで
取り組んでいる戦略です。

「でも、手間やコストがかかるのでは？」
あなたもそう思われるかもしれません。

しかし、良質なスタッフが一人定着することで
得られる価値を考えてみてください。

優秀な歯科衛生士が定着すれば、
患者満足度の向上、リコール率の改善、
自費診療の提案力アップにつながります。

これは年間数百万円の
収益向上に直結するのです。

そのための投資が月々十万円程度なら、
十分に回収できる投資と言えるでしょう。

では、求人専用のサイトでは
何を伝えるべきでしょうか？

まず、院長先生の人柄や理念。
特に「なぜ歯科医師になったのか」
「どんな医院を作りたいのか」といった
ストーリーが重要です。

次に、現在のスタッフの声や
成長ストーリー。

「この医院に入って何が変わったか」
「どんなスキルが身についたか」
これらは求職者の不安を解消する
強力な情報となります。

さらに、具体的な一日のスケジュール、
教育制度、キャリアパス、
プライベートとの両立事例なども
詳細に伝えましょう。

ある院長先生は、求人専用サイトを作った際、
自分が尊敬する歯科医師の下で学んだ人生訓や
診療・経営へのこだわりを動画で語りました。

また、スタッフの成長を支える勉強会の様子や
院内の雰囲気を写真付きで紹介しました。

その結果、「この医院で成長したい」と共感する
志の高い求職者からの応募が増え、
わずか2ヶ月で理想の歯科衛生士を採用できたのです。

重要なのは
「この医院で働くとどんな未来が待っているか」
をリアルに伝えることです。

また、求人専用サイトなら患者に見せる必要のない情報、
例えば給与体系の詳細や休暇制度、
スタッフ間のコミュニケーション方法など、
求職者だけに伝えたい情報も遠慮なく掲載できます。

求人専用サイトは、あなたの歯科医院の
「働く場所」としての魅力を求職者に
最大限に伝えるためのツールなのです。

明日から実践できる採用改善策

スタッフ採用と患者集患。

どちらも歯科医院経営において
欠かせない要素ですが…

この記事の公開は2026年3月31日まで